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(超)番外編 あかね太郎

こちらの「(超)番外編」は本編とは一切関係がありません。本編には何の影響も及ぼしません。「話がおかしくなる(?)」「何で今これ?」「やる意味あるの?」 等思われる方はスッ飛ばしてください…………。

昔々あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでおりました。

おじいさんは少し……とても変なおじいさんで、おばあさんはなぜかお年を召しているというのに茶髪を貫いていました。


「よっしゃ! そんじゃいっちょ山へ芝刈りにでも行ってくるか! ……い、いってらっしゃいのキッスは?」


「え~ヤダ。野代にキスとか有り得ないから」


「口にとは言ってないから! ほ、ほっぺでいいから!」


「だからヤダってば」


「……何だよ何だよ! 高瀬は俺の奥さんだろ! 台本通りにやってくれよ!」


「ヤダ」


悲しみに包まれた一郎おじいさんは涙をグッと堪えると鎌を持って立ち上がりました。というか、台本通りとか言わないでください。


「芝なんて刈ってどうすんだよ」


元も子もないことを言いながらおじいさんはいつまでもいつまでもグジグジしつつ山へ消えて行きました。おばあさんはというと、


「あれ? ピアスどこやったっけ?」


お願いだから川へ洗濯をしに行ってください。誰も見てないんだから格好なんて気にしなくてもいいです。


「ダメだよ。ちゃんとした服装で行かないと」


ナレーションに返事をしないでください。


「手が荒れたらどうしてくれるのさー」


ブツクサ言いながらもおばあさんが川で洗濯をしてい……洗濯物を全て川に流していると、どこからともなく大きな桃もがどんぶらこ、どんぶらこと流れてきました。


「重そう」


そこで桃を手にしてもらわないと話が進まないので絶対に取ってください。


「え~絶対に無理無理」


………な、なぜか桃が自分の意志でおばあさんの元へと流れ着きました。それに驚いたおばあさんでしたが、美味しそうな桃だと思いそれを家まで持って帰ることに決めました。


「これ重っ! あとで野代に運んでもらおっと」


ダラダラ長くなりそうなので部分的に話を省略し、桃は無事におばあさんが家まで持って帰りました。




「こ、これ切っていいのか?」


大きな桃を目の前におじいさんは包丁を握り締め生唾を飲み込みました。その横でおばあさんがルンルン気分で今か今かと切るのを待っています。


「真っ二つにしないと話進まないよ?」


「だ、だってよ。中に人が入ってんだぞ? ぎゃあ! みたいなことになんねぇか?」


生々しいことは言わないでさっさと切ってください。なんとか避けてもらえるよう中の人物には言っておきます。


「い、行くぜぇぇぇえ!」


自分に括を入れたおじいさんは大きな包丁をものすごい速さで桃に振り下ろしました。速すぎて中に入っている人物がちゃんと避けられたのかとても不安になります。


「お……おぎゃあ……おぎゃあ…………恥ずかしい!」


桃の中からそれは玉のような赤子が出てきました。が、恥ずかしがって顔を見せようとしません。


「何で桃から出てきたのに服着てんだよ! 普通は真っ裸だろ! もう一回やり直しだ!」


「そんなこと出来るか!」


「ぐぇっ!」


おじいさんの要求を飲めない赤子は彼の顔面に重い拳を喰らわせてしまい……お願いだから普通にやってください。


「だ、だって一郎のヤツ裸になれとか言ってんだよ!? って桃太郎なのに何であたし? 女なのに!」


この物語は桃太郎ではないらしいです。タイトルは『あかね太郎』です。


「何それ意味不明! ってかそれなら何で桃から生まれたわけ!?」


「あかね太郎? アッハハハハ! 最高だねっ!」


おばあさんは堪えることもなく大声を出して笑い始めました。

頬を抑えてうずくまるおじいさんと大笑いを続けるおばあさんを見たあかね太郎は一言、


「……桃の中に戻りたい」


と、願うのでした。





桃た……あかね太郎がおじいさんとおばあさんの子どもとしてすくすく育ち、気がつけば17年の月日が流れていました。

そんな頃、柿の種ヶ島という島からやってきた鬼が村の人々から色々な物を奪ったり……逆にあげたりしては好き放題やっているとの噂が流れた為、腕っ節の強いあかね太郎がその鬼達を退治することになったのです。


「桃太郎ってそんな話だっけ?」


あかね太郎です。


「……わかったわかったよ! 行ってくるよ! 恭子、きび団子ちょうだい!」


「え~? 急に言われても作れないよ。昨日の晩ご飯の残りあるからそれ持って行って」


「八宝菜なんて持って行けるわけないでしょ!?」


「大丈夫だって。卵とか白菜とかキクラゲとか適当にあげれば猿も犬もキジもついてくるから」


「そんな投げやりな……」


大丈夫大丈夫と何の不安も持たないおばあさんは残った八宝菜をタッパーに詰めるとそれをあかね太郎に渡しました。とても美味しそうなのですが、果たして仲間が出来るかどうか微妙なところです。


「い、いってらっしゃいのキッスは?」


もうおじいさんは出てこなくていいです。桃を切った時点であなたの役目は終わりました。


「そ、そんな悲しいこと言うな! それよりもいってらっしゃいのキッスだよ! さっきも言ったけどほっぺたでいいから!」


17年の月日が流れたって言ってるんだからさっきとか言わないでください。時間軸をはっきりさせておきたいのでいらない一言は飲み込んでください。


「それじゃあいってらっしゃ~い」


「わっ! ちょっ、恭子!? いきなり何すんの!?」


「野代がやれって言ったんだもん」


「おいぃ! あかねじゃなくて俺にだよ! 何であかねは良くて俺じゃダメなんだ!?」


「だって行くのはあかね太郎でしょー? ならあかね太郎にいらっしゃいのキスしなきゃ」


「ば、バカ高瀬ーー!」


そのままおじいさんは家を出て丸3日帰って来なかったらしいです。


「あたしはされても困るんだけど……」


「え? もう片方のほっぺにもキスしろって?」


「い、言ってないから! あぁもう行ってきます!」


「いってらっしゃ~い。お土産楽しみにしてるから~」


「旅行じゃないんだって!」





「あかね太郎! あかね太郎! その手に持っている八宝菜を俺に恵んでおくれ!」


「い、犬って宮田だったんだ……」


旅に出てすぐ、あかね太郎は何とも元気の良い宮田犬に出会いました。しかし家を出てから3分で会うとは、宮田犬は出番を心待ちにしていたかのようです。


「本当は萌ちゃんのお供が良かったんだが仕方がない。一緒に行ってやるから八宝菜をよこすんだ!」


「それで何でコイツはこんなに上から目線なんだ」


早くくれ! という命令を受けたあかね太郎はしぶしぶタッパーから卵を取り出し、宮田犬に渡そうと近寄りました。


「ちょぉ待てぇぇいい! その卵は俺のだ! 俺にくれ! 俺にくれぇえ!」


まだ出番ではないのにキジ太郎が我慢できずに登場してしまいました。

さすが鳥……とは言ってもなぜか飛べないキジ太郎なのですが、素早い身のこなしであかね太郎が持っていた卵を奪い取ると有無を言わさずに食べてしまいました。


「あかねが持ってたからあかねの味がするぅ! 美味いぃ!」


「変態か!」


「ギョヒィッ!」


バカみたいに動き回るキジ太郎にあかね太郎がタッパーのフタを投げつけました。そして命中、キジ太郎は地面に突っ伏しました。


「いづづ……ってか何で俺がキジなの!? 太郎って言ってんだから俺でしょ? 俺以外に誰がやるんだよ!」


決まったことをウジウジ言わないでください。細かい男は見ていて痛いです。


「ひでぇ!」


「俺を無視するな! 卵でも何でもいいからくれ!」


キジ太郎がワーワーと喚いているその隣りで宮田犬がタッパーを持つあかね太郎に突進を始めました。


「わ、わかったから! ちょっ、落とすって!」


「あ」


宮田犬のいらない行動のせいで八宝菜が入ったタッパーは無惨にも地面に落ちてしまいました。これではもう食べられません。猿も寄って来そうにありません。


そんな中、八宝菜の卵しか食べられなかったキジ太郎は落ちたにも関わらず拾って食べようかどうか一瞬だけ迷い、3秒経ってしまったからもうダメだと諦めました。そしてどうすることも出来ない怒りを宮田犬にぶつけることにしました。


「てめっ、バカ犬晃ぁ! 何やってんだよ!」


「俺のせいじゃない! 元はと言えばキジ太郎が勝手に出てくるからだろ! 俺の卵だったんだぞ!」


「卵くらいでガタガタ言うな!」


「お前に言われたくない!」


これでは埒が明きません。あかね太郎、お願いします。


「ちょっと黙れっての!」


「うおぁっ! 危ねぇっ!」


あかね太郎は鞘から刀を抜くとそれを宮田犬とキジ太郎に向かって振り回し始めました。なんだか胸がスッとする場面です。


「仲間に刀向けるのヤメてよあかね太郎!」


「そうだぞ津田太郎!」


「仲間になる前に仲間割れしてるあんた達に言われたくない! ってか宮田! 津田太郎とか言うな!」


「あ、あの……」


1人と1匹と1羽がモメているその背後から恐縮を絵に描いたような声が聞こえてきました。その可愛らしい声に全員が一斉に振り返ると、


「さ、猿って早希だったの?」


「……私にも八宝菜をください」


元気のないその声にあかね太郎は深い溜め息を、宮田犬はタッパーのフタを手に取り「これを舐めたらいいのか?」と迷い、キジ太郎は誰も見てないスキに乗じて落ちている八宝菜を食べ始めました。


「ご、ごめん。あげたいのは山々なんだけど落ちちゃって」


「え? あ、ううんいいの。食べても食べなくてもお供するから」


「ありがと。そう言ってもらえると助かる」


どうやらまともなのはあかね太郎と猿早希だけのようです。キジ太郎なんてまだ拾い食いをしています。見ていて何だかイライラが募ります。


「勿体なくてそのままに出来ないでしょうが! それにコレ高瀬の手料理なんだよ!? 今食わないと次いつ食えるかわかんねぇでしょう!?」


誰もそんなことを聞いていません。それに恭子の手料理なんてあなたは知らないはずです。どうでもいいからさっさと柿の種ヶ島に行ってください。何ならキジ太郎だけを残して行くことも出来ますけど。


「……ひでぇ」





あかね太郎一行はやっとのことで柿の種ヶ島に到着をしました。しかし油断は禁物です。なんと言っても柿の種ヶ島は鬼の巣窟。無事に帰ることが出来るか誰にもわかりません。


「ってかさぁ、あかね太郎だけで充分だったんじゃねぇの? 俺達がついて行く必要あった?」


「それは言えるな。何と言っても津田は空手家だし、俺達の出る幕はあるようでないだろ」


「じゃあ何であんた達は付いて来たのさ?」


「えっとぉ、あかねのそばにいたかったから? ごめんなさい刀を抜かないでください!」


「ったく。早希からも何か言ってやってよ」


「え? あ、えっと……あかね太郎は強いから大丈夫だよね!」


「……ありがと」


そんな緊張感のまったくない会話を続けている内に、なんと鬼の方からやってきたではありませんか。

鬼はズンズン……パタパタと小走りで駆け寄って来ると、低い……結構高い声でこう言いました。


「あ、あの……な、何をしにやってきた……の?」


その言葉を聞いたあかね太郎達は思わず笑みがこぼれてしまいます。というか、苦笑いを浮かべました。


「ゆ、勇樹が鬼って配役間違え過ぎだろ。鬼って言ったら萌でしょうよ。萌以外にその役を出来るヤツなんていねぇよ」


……今しゃべったヤツ、前に出ろ。


「え? え、俺?」


いいからちょっと前に出ろ。


「いや、前って言われても……」


何でもいいから早く前に出てこい。


「な、何だよ。俺は何も間違ったこと言ってねぇ……と思いたいんですけど」


調子に乗って前に出てきたキジ太郎でしたが、地面が突然裂け始めそのまま奈落の底へと落ちて

「ちょっ、ちょっと待て待て! 突然裂けるとか奈落の底とかおかしいでしょ?! ってかナレーションしてたの萌かよ! 早く言ってよそういうことは!」


……調子に乗って前に出てきたキジ太郎でしたが、地面が突然裂け始めそのまま奈落の底へと

「人の、ってか鳥の話聞いてる!? どうして同じこと2回言うの? ちょっと変えてくれてもいいんじゃないの!?」


……前に出てきたキジ太郎が突然裂け始め奈落の底へと

「待って待って! もう言わない! 鬼は萌の方が似合ってるとか言わないから! ってか俺が突然裂けることになってる!」


……鬼は持っていたこん棒を振り回し、大勢の仲間を連れてあかね太郎に向かって攻撃を仕掛けました。


「ぼ、僕がそれをするの?」


お願いします鬼勇樹。今は我慢して突撃をしてください。


「ご、ごめんね津田さん太郎! うわぁああああ!」


目をつぶってあかね太郎に突進をした鬼勇樹ですが、簡単に避けられると首筋に手刀を決められ気絶してしまいました。その姿はどう見ても鬼の大将には見えません。


「ご、ごめん勇樹!」


一発で倒れてしまった鬼勇樹に慌てたあかね太郎は……あ、あかね! 介抱してあげなくていいんだってば! 鬼を助けたらダメなんだって!


「あ、そ、そっか……よ、よっし! 鬼を退治したぞ~!」


「「おぉぉおおお!」」


「お~!」


あかね太郎のヤケクソに近い雄叫びを聞き、宮田犬とキジ太郎と猿早希は同時に拳を天高く突き上げました。


「萌……じゃなくてナレーターさん。鬼を倒した後ってどうなるんだっけ? あたし最後どうなったかよく覚えてないんだけど」


鬼の財宝を手に村に帰ったあかね太郎は鬼退治を終了したことをおじいさんとおばあさんに報告します。


「あ、そっかそっか……って財宝を横取りするってこと? あ、でも元々は村の人達の物で……あ~でも横取りって……」


「まぁまぁあかね太郎。鬼は気絶しちゃってんだからここは有り難くもらっていこうよ。あ、そうだ萌……ナレーターさん、俺達はどうなんの? まさかここでバイバイってわけじゃないでしょ?」


……宮田犬はあかね太郎の家の番犬になります。


「へー晃は番犬になんのかぁ」


「違う! 俺は萌ちゃんの犬になるんだ!」


「他の人が聞いたら勘違いするような言い方すんな! お前は黙ってジャーキー喰ってろ! ……ところで、さ……猿三井はどうなんの?」


猿早希は……猿の大将として山に帰ります。


「私、山に帰るんだ……」


「な、何か悲しい方向に話が進んでません? もっとこう、『みんな幸せに暮らしましたとさ』的な感じじゃダメなの?」


キジ太郎はおじいさんとおばあさん、そしてあかね太郎が美味しく頂き

「ちょっ、食ってんじゃねぇぇええ!」







前書きではあんな風に書いてしまいましたが、読んでくださり本当にありがとうございました! 

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