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ミツコ  作者: ラフテム
2/4

朗読

2.朗読


父親が帰宅すると、ミツコの声が聞こえた。

「ねぇ、次はこの本ね。」

どうやらミツコは祖母の部屋に居るらしい。


父親が「ただいま」と言いながら祖母の部屋をのぞくと、新聞を読んでいる祖母の脇に


絵本を持ってミツコが座っている。


「むかしむかし…お父さんお帰りなさい。」

「お帰り」

「ただいま、ミツコはもう字が読めるんだ。」

「うん、日本語だけね。」と言いながら絵本を持って、立ち上がる。

「駄目よ、ミツコ。お父さんも早く手を洗ってうがいをして。」


ミツコは、父親に抱き上げられるのが大好きなのだが、このところ風邪が流行りはじめたので、神経質になっている祖母がミツコを制止する。

ミツコは座り直しながら「お父さん、早く手を洗ってきてね。それで顔も洗うんだよ。」

「おう、すぐに洗ってくるよ。」

「ちゃんとガラガラが聞こえないとダメなんだよ。私いつもお祖母ちゃんに言われるの。それでね。終わったらすぐに来てね。」


父親は大急ぎで洗面所に行き、うがいをして顔を洗う。

タオルで顔を拭いているところに、絵本を片付けたミツコが近づいて両手を差し出す。


ミツコを抱き上げながら「あれ、絵本はもういいの?」

「うん」


「あなた、お帰りなさい。」

対面式のキッチンで夕食の準備をしている母親は、一瞬顔をあげただけですぐに手元に視線をもどす。

父親は、兄が国語の教科書を朗読をしている食卓に近づきミツコを下すが、ミツコは当然のように椅子に座った父親の膝に乗ってくる。

祖母は「あらためて、お帰り。」と言いながら父親と自分にお茶を淹れ、湯呑を差し出す。


「ミツコがもう本を読めるとは知らなかったよ。」

「うん、そうだよ。」と自慢げに言うミツコに、祖母も「今日はだいぶ絵本を読んでくれたよ。」とニコニコしながらお茶を飲む。

ちょうど朗読が終わった兄が「じゃあ、これよんでみて」と教科書の文を指し示すが、ミツコはそれを一瞥して「私は日本語しか読めない」と言う。

兄は「これも日本語だよ。」と自慢げに言うので、手元を覗き込むとカタカナが書いてある。

「私の知っている日本語じゃない。お兄ちゃんの意地悪!」と言いながら、父親の膝から身を乗り出して兄を叩くと、兄は「参った、参った、降参」と言いながら教科書を仕舞いに行く。


「そういえば、今日ミツコと散歩をしていたら佐藤さんにお会いしてね。少し話し込んでいた時にちょうどお兄ちゃんが帰ってきてね。」

「それで?」

「ミツコが小母ちゃんにクイズを出したの。」

「私ね『問題! 私とお兄ちゃんと どっちが強い?』って訊いたの。お父さんどっちが強いか分かる。」

「それはお兄ちゃんだろ。」

「違うもん。強いのは私だもん。いつだってお兄ちゃんは『降参』って言って逃げていくでしょ。」

「そうだね。」

「でしょ、強いのは私だよね。そしたら小母さんは『優しいお兄ちゃんだね』って言ったんだよ。いつも意地悪するのに。」



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