表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

消える金

作者: kuou0057

5分くらいで読み終える事ができます。

しかし、読み終えた後の考察は中々なものとなると思います。

 ※個人差はあります。

とある田舎町に独自の技術で繁盛している町工場があった。

その工場を経営している若社長には最近悩み事があった。


「金額が合わない....」

(盗みに入られたのか?)

金庫を確認して、若社長が独り言を呟く。


金庫からは100万消えていた。


(警察に通報しよう。)

若社長は警察に通報したが、彼らは軽く話を聞いて何やらメモをするのみ。

真剣さが感じられない。

片方の耳から聞いて、もう片方の耳から話を受け流すような感じである。


まあ、金庫から金が消えたという証拠が何も無かったのだからしょうがないが。

それに最初から金庫には現在の金額分しか入っていなかったという可能性もある。つまり若社長が嘘をついているという可能性だ。


「本当に、確かに消えているんだ!」

若社長がいくら抗議しても警察は


「証拠がない、また何かあったら連絡下さい。」

の一点張りで結局いくら盗まれたか金額も聞かずに帰ってしまった。


若社長は半ば諦め、町工場のセキュリティーを強化した。


(金庫を開けるには静脈認証が必要だ。これで私以外金庫を開けられる人物はいない。)

若社長はこれで大丈夫だ。と思っていた。


それから、一か月後。


「まただ、また金額が合わない....」


若社長にはどういうことか、一向に理解できなかった。

一応警察にも通報したが、まともに取り合ってくれなかった。

以前と同じ理由にプラスして、もし犯人がいるのなら静脈認証をクリアして金を盗んだ事になるからだ。

プロの仕業である。


(一体何者なんだ?)

若社長はさらにセキュリティーを強化した。

今度は、静脈認証に加えて網膜スキャンをクリアしなければ金庫を開けることができない。


「完璧だ、今度こそな。」

若社長は今度こそ盗みに入られる事は無いと思っていた。


しかし、それでも一か月後には金は盗まれていった。


もう、警察には通報しなかった。

そのかわり若社長には一つの目的ができていた。


(絶対犯人の正体を暴く!)


若社長は工場の出入り口、その他いたるところににカメラを設置して誰が出入りしてもわかるようにした。


そして一か月後。


「嘘、だろ....」

またまた、金庫から金が消えていた。

若社長はもう警察に通報するという概念はなかった。


若社長はカメラを確認した。

一か月分の録画データーを見たが、出入りしていたのは若所長と数人の社員だけだった。


(一体どういうだ? 社員の中に犯人がいるのか?)


今度は金庫室の前にカメラを仕掛けてみた。


そして、一か月後。


「....。」

金庫からちゃんとしっかり、金が消えていた。


若社長は一か月分の録画データーを確認した。

そこに写っていたのは....なにもなかった。

何も、写って、いなかった。


(い、い、ったい。どうなって、る、んだ?!)

若社長は意味が分からなくなった。

現状が理解できなかった。

気が動転してしまいそうだった。


「毎月、金庫から100万消える。金庫は静脈認証と網膜スキャンをクリアしなければ開けることができない。それでも毎月100万消える。金庫室の前にはカメラを設置したが、一か月間誰も金庫室には出入りしていない....。」

若社長は混乱しはじめる。


(ーーー謎だ。金庫を開ける事ができる人物は私だけ。つまり犯人は私?!カメラのデーターも無意識下に私が書き換えている?!うん、可能性はある。)


若社長は自身を一か月間拘束することにした。

社員や妻からは大反対されたが、若社長の強い要望には逆らえなかった。

それだけではなく、社員全員にGPSを持たせ、一か月間の活動をベットから監視できるシステムを作った。


若社長が自身を拘束してから一か月たった。

拘束は解かれ、若社長はおぼつかない足取りで金庫を確認しにいく。


そして、


「なんだよ、なんでだよ....」


「い、や、だ、いやだ、嫌だいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやがぁっ。いっつ。」

『いやだ』を連呼してる途中で若社長は舌をかんだ。

若社長の顔が激痛に歪んだ。

まあ、激痛に歪む以前に若社長の顔は歪んでいた。

金庫中からしっかりと今回も100万円消えていたからだ。


若社長は警察に通報した。

警察は一か月おきに6回連続で律儀に100万ずつ盗み続けている犯人なんて聞いた事が無いと言い最終的には若社長に精神病院を進めてきた。

若社長は警察の無能さに絶望し、

社員に相談した。

社員達は一か月に100万ずつ盗む犯人がどんなリッチな生活をしているのだろうと討論になり、

最終的には給料の上方修正を要求してきた。若社長は落胆し、

妻に相談した。

妻は静脈認証と網膜スキャンがあるのにあなた以外に金庫を開けられる人物はいないと言い。

最終的には盗まれるはずはない、あなたの勘違いでは?と信じてくれなかった。


最後に若社長は古い親友で現在探偵をしているA君に、今までの全てを打ち明け、警察が酷い事や、社員が給料の値上げをせびってきたこと、妻に信じてもらえなかった事などを相談した。


しばらくしてA君はセキュリティーに費やした金額を聞いてきた。

若社長は答えた。

「えっと500万だけど?」

(ん? そうか! 500万!!!)


若社長はそこで閃いたそして急に恥ずかしくなってきた。

最初の盗みが始まってからちょうど6か月。

100万ずつセキュリティーに費やしてきた。


(一か月に100万ずつ金庫からなくなったのは当然か!)

若社長は今までの事が恥ずかしくなり顔を真っ赤にした。

それと同時にA君は現実が怖くなり顔を真っ青にした。


A君は緊張した面持ちで若社長に尋ねる。

「知って不幸になるか?それとも知らずに幸せでいるか?」


若社長は前者を選んだ。選んでしまった。

「既に不幸だ。それにそんな事を聴くって事は何か分かったのか?!」


A君は、小さくうなずき、小声で話始める。

「君は警察や社員に盗まれた金額を毎月伝えてたのかい?

 君は妻にセキュリティー内容を伝えたのかい?

 伝えてないだろうなぜ彼らは知らないはずの情報を知っているんだい?

 そもそも君は最初の100万もセキュリティー代に使ったわけじゃないだろう?」


「ーーーあ。」

若社長は一つ結び目が解けたら次々と解けていく絡まった紐みたいに、現実の惨状を理解

し始める。

しかし、すべて理解する前に、若社長の思考は途切れてしまう。


 デュグッ!

 ッドッバァーー!


次の瞬間、真っ赤になっていた若社長の顔は真っ青になって

真っ青だったA君の顔は真っ赤に染められた。


「ーーーっひ、やめっ」


 ジュグッ!

 ッドバッーー!


A君に続き、若社長の顔も真っ赤に染まった。

動かなくなった二つの肉体の背後には、三者三様の笑みがあった。

貴重なお時間を割いていただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ