王の五 金策
きらびやかな装飾で腕や指を飾り、上等な毛皮を最後に羽織る。
それから満足した顔で立ち上がり、ウォルゼーはセライヴァへと向き直った。
「金のなる木の話だが、納税額が一定を超えたら免税してやるとさっき決めたな」
「ああ」
「そのついでに、そいつが育て主と認めた奴も免税してやることにする。人数と年数に制限はつけるがな」
「それは、育て親にも金をやると言う事か?」
「ああ。いっぱしに金のなる木を育てた褒美だ。育てるかどうかも知れん奴に金を撒くより、育てた奴に褒美をくれてやった方が、まだ褒美の意味がある」
「では子を産まぬ者は如何する。殺すか」
「いいや、必要ない」
「子を産まぬのならば、金のなる木にまで育てる事もできまいよ」
「人が捨てた子を育てれば良い。報酬はあくまでも育てた者に対してだ。誰に育てられたかは、子の言い分に任せるさ」
「はっ、子供ごときに判断をゆだねると?」
「そうだ。まあ、適当に育った後だがな」
一夫一妻を推奨し、不埒を罪とする現宗教とは真逆を行く法――
それは血縁を重視していた今までからすると、もはや異端とも取れる暴言だった。
「将来の楽を望んで、子を盗む者が出るやも知れぬぞ」
「盗難は死刑だ。出生届けはもちろんだが、『親』の届けも義務とする」
「労働に適した形に育てようと、躾のあまり殺す親も出るやも知れぬ」
「殺人で死刑だ。確固たる証拠があればな。もしそれらが見つからなかった場合、罪には問わんが『親』になる権利を永久剥奪する。不慮の事故だろうが何だろうが、せっかくの苗を風に折られるまで眺めているような馬鹿に、金銭の素を預ける必要性なんぞなかろうよ」
「外で不慮の事故に合った場合もか?」
「ああ。危険から逃れる手段を教えるのも親の役目だ。そもそも免税を期待しねえなら、届出なしで育てる事もできる。免税を少しでも期待する時点で、そいつは博打に乗ったって事なんだよ。時間と精神力を賭け、金銭を狙う大博打だ」
「子を騙して自分のために働かせた場合は? 子がその目的を知らなかった場合は」
「それは法に書き加えてある。子が免税を受ける際、この法を知っている事が最低条件となる。なぜ労働者として育てるかを隠し、利だけかすめ取る事は許さねえよ。育った子にはそれから先、新しい労働者を育ててもらわねえと困るしな」
つまり、必要なのは三つの条件。
親としての届出がある事。
さらに、納税者から親として正式に認められる事。
最後に、納税者がその仕組みについて理解している事。
その全ての条件を満たして初めて、育て親が国から礼を受け取れる形にするのだと語り、ふと、ウォルゼーは考慮の間を空けた。
「二代続いたら、好きなだけ楽させてやるか」
労働者を育てたら若干の還付。その労働者がさらに労働者を育てたら、最初の「親」には一切税金がかからなくなる――
「その頃にゃ、どうせ結構な年だろうしな」
神童のよう、十代から次々と優秀な労働者を育て上げでもしない限り、免税対象になる頃には寿命も間近。
どのみち条件に当てはまるのは一握りだろう。だからこそ大きく出られる。
くじの当選金を巨額にできるのにも似たカラクリだ。
「ま、こんなもんかね」
親は複数でも構わない。成人まで面倒を見なくてもいい。
何歳までこの親に育てられた、何歳からはこの親に育てられたと納税者が認め、それが過去の親の届けと一致すればそれで良いのだ。
最も自我が芽生えるまでの間は原則、出産者が育児を行わなければならず、それを放棄した者は以降、いかなる年代の「親」にもなれない。
反抗期などの難しい年代をこなした場合の配当は高く、そうでなければ安い。
その一連の規則を紙にしたためて、ウォルゼーはようやく書く手を休めた。
「後は、立証のしづらい物を罪から外すことだな」
男女、友人間の言った言わないの裁定や、冤罪の判断ほど面倒なものはないから外す。
よって家庭の敷地内の備品は全て共有、嫌なら家の所有者が相手を追い出せば良い。
決定権は、その家の所有者に託される。
国から家の持ち主として認められた者だけが、そこの所持品のルールとなる方式だ。
「で、他に質問は?」
ないなら寝る、とウォルゼーが大きく伸びをする。
それを睨み、セライヴァが苦虫を噛み潰したような表情で低くうなった。
「貴様は、姫様よりも残酷だな」
「そりゃあ何より。さあて、重税で得た金で何が欲しいか、姫さんに聞いといてくれよ。おれからの初めてのプレゼントだ」