状況整理
「着いて行くって…どこに…?」
「まぁまぁ良いから良いから!」
見知らぬ人について行くな。小学生ならば誰もが知っているであろう知識だ。一瞬迷ったが、状況が状況だ。俺はついて行く事にした。
「歩きながら話そうか。君が信じるかどうかは置いといてさ
さっきも言った通りあれは妖怪。詳しく言うと、鬼の妖怪でね?人に危害を及ぼすんだよ」
「お前も…白狐も妖怪じゃないの?悪いことはしないのか?」
「人と同じだよ。泥棒とか殺人とか、悪事を働く人もいれば、警察や消防士とか、人を助ける人もいる。私は後者だよ」
白狐は常に笑顔である
「なんでここに妖怪なんているんだ??皆は見えてるのか?」
白狐はまたフッと笑った
「妖怪が見えないなんておとぎ話の世界だけだよ、みんな見えてる
ここにいる理由はね、魔界の門が開いちゃったから」
「魔界…?って?」
「魔界はかつて、妖怪が人間に世界から追い出された時に作られた世界。この世の裏みたいな…?その辺はややこしいからおいおい話してくよ
さっき言った通り、妖怪ってのはかつて人間に迫害されててさ…魔界と人間界が繋がった今、復讐を誓って人間を襲いに行く妖怪がいるんだよ」
「なんでそんな危ない門が空いたんだよ。誰かのイタズラか?」
「一先ずはそういう認識でいいかな。ここら辺は複雑でさぁ…私も言葉が上手い方じゃないから、詳しい話はまた別の人にしてもらうよ」
一先ず大体の状況整理は出来た。家をめちゃくちゃにした巨体の正体と出自。じゃあ………
「俺…これからどうしたら良いんだろ…」
10歳という若さにして、日常を失ってしまったのだ。いやまだ決めつけるには早い
「もしかしてまだ皆生きて―――」
「いや、君を助ける前に確認してきたけど皆亡くなってたよ」
白狐は割り込むようにそう言った。先程までは笑顔だったが、陽菜を憐れむような、同情するような悲しい目で見ている。そうだろうとは思っていたが、ほんの少しだけあった陽菜の希望は完全に消えてしまった。
「わたしんとこに来なよ」
「私のとこ?いや、今いっしょにいるじゃんか」
「そうじゃないよ!私の家!新しい家!」
「でもお前ん家、魔界にあるんじゃないのか?魔界にはああやって人の命を狙う奴が山ほどいるんだろ…?」
「君の命を狙う人が居ることは否定しないけど…さっきも言った通り人と一緒だよ。殺人犯に狙われて死ぬ心配なんてしてる人少ないでしょ??それとおんなじ
あ因みに魔界にも人間はいるよ!魔界が出来た当時、妖怪賛成派の一部の人間達も妖怪と一緒に迫害されててね、その人達も一緒に魔界に来てるんだよ。入った瞬間命を狙われることなんて無い!……と思うから安心して」
―――こいつ今誤魔化したな…
「ん?ここは…」
先程まで白狐と見慣れた自分の街で会話をしていたはずだ。しかし辺りを見渡すと今いる場所は1面が木、木、木である。木は俺の身長より遥かに高い、10m、20mはあるだろうか?ワープでもしたのだろうか、全く違和感が無かったが
「びっくりしたでしょ!?
この森が人間界と魔界を繋げる門がある場所、妖夢の森だよ」
「俺、さっきまで街にいたよな??何で?急に?どつやって?」
「妖怪は妖術くらい使えて当然でしょ?世界の法則くらい無視できるよ」
信じ難い話であるが、実際に目の前で起きている。判断材料において、自分自身の経験というのは1番信頼できるものだ。
しばらく森の中を歩いていると、石で出来たボロボロの鳥居のような物を発見した。
「いくよ!」
そういうと白狐は陽菜の手をひっぱり、走って鳥居をくぐった
「あ、え、?おわぁぉぉうおぉぉ」
陽菜の視界が1面真っ白になる。景色は変わらないが、とてつもない勢いでどこかに吸い込まれているのが分かった。
「いった…次から次へと何なんだよ…」
「ほら、目開けて」
白狐の声がした。俺は立ち上がりながら目を開ける。
「え…」
そこは先程までと何も変わらない。ただ四方八方が巨木で覆われている森であった。失敗したのか?
「さっきいた場所と何が変わったんだ?」
「よく見てよ!あそこの木さっきまで無かったじゃん!」
「そういうの良いからさ」
「つれないなぁ…じゃ、行きますか
しっかり捕まっててね!」
行くって、どこにだ?ここはまだ魔界じゃないのか?
白狐は俺のお腹辺りを抱きしめた。
おいおい、そんないきなり抱きしめられると反応に困るじゃな―――
―――ドオォォォっっ
凄まじい音だ。白狐が地面を足で蹴った音。目を開けると白狐は俺を抱えて凄まじいスピードで飛んでいた。周りの地面が抉れ、巨木がなぎ倒される。いったい時速何キロ出ているんだ。それよりも、俺はなぜこのスピードで飛んでいるのに何故無事に原型を保っているんだ。そんな事を考えている暇もなく、どうやら目的地に着いたようだ。白狐は止まった。
俺は目を見開いた。そこには一帯が和で包まれた、大きな街があった。端が見えない。例えるなら平安京のような。本のイラストでしか見たことが無いが、そこにはそれを彷彿とさせる景色が広がっていった。
「ようこそ、私の国へ」
白狐は笑顔でそう言った




