第1節:――失われし時代の記録――
遥か昔、創造主ヌンが世界を創造し、時が未だ幼き頃――天地が分かれ、光と闇が定まり、万物に名が与えられた黄金の創世時代。
だが、その平穏は永遠には続かなかった。
三つの強大な存在――後にゼウス、オーディン、アトゥムと名乗る者たちが、創造主ヌンに反旗を翻したのである。彼らはヌンを冥界に封印し、自らが神を名乗って世界を支配下に置いた。
ヌンの封印により、冥界は真の神の負の意思で満たされ、悪魔と魔物の巣窟となった。そして偽りの三大神は、天界を三つに分割して統治を始める。
天界では「神力」――影響できる空間の広さによって階級が定められた。上位神は精霊十人分の力を持ち、ヌンによる直接創造か上位神同士の子のみが到達できる。中位神=精霊は下位神十人分の力を持つ。下位神は下位魔術師十人分の力を有し、神と人間、または神同士から生まれた存在。
人間界は魔力の有無で分類される。魔力なしの普通の人間、そして魔力を持つ魔術師たち。上位魔術師でさえ精霊五人分の力に過ぎない、脆弱な存在。
そして巨人界――人間界内に潜む最大の脅威。通常の巨人でも精霊級の力を持ち、その王ロキに至っては三大神に匹敵する力を誇っていた。元は内戦状態だった巨人族を、ロキが鉄拳で統一したのである。
三つの世界は微妙な均衡を保っていた。天界は三陣営に分かれ、人間界は六つの勢力が覇を競い、巨人界は統一されたロキの下で力を蓄える。だが、ある日その均衡を破る者が現れた。