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救出された子供たちのこれから

 こうして、よくわからないまま賊どもの手から解放されたフロレンティーナは、敵を一網打尽にした男たちに連れられ、外に出た。


 そこにはかなりの数の荒くれ者どもが集結していた。


 男も女もみんな鎧を着用していて、手には雑多な武器を握りしめている。

 彼らは皆、レンジャーギルドに所属する冒険者と呼ばれる者たちだった。


 どうやら、盗賊団を壊滅させるべく、大人数での殲滅作戦が実行に移されたようで、頭目は牢獄で切り刻まれて死亡。それ以外にも大勢の賊どもが始末されていた。


 中には降伏して生きている者たちもいたが、彼らはおそらく、持っている情報すべて引き出されたあと、処刑されるだろう。


「さてっと、それじゃぁいくか」


 救出された子供たちを全員馬車へと乗せた男たちが、馬を走らせていく。

 その荷台の中にはフロレンティーナもいた。

 このあと、自分たちがどこへ連れていかれるのかまったく知らされてはいないものの、彼らが悪い人たちでないことだけは聞かされていたので、少しは安心している。


(パパ……ママ……みんな……。どうか私のことを、天国から見守っていてください)


 恐ろしく疲れ果ててしまった彼女は、心の中でそう呟き、幌の隙間から空を見上げた。

 まばらに流れる雲と、透き通るような青空がそこにはあった。

 ひたすら地平線まで続く凸凹した丘陵と平原に囲まれた大地。

 その中を走る街道を、まっすぐに馬車は駆け抜けていった。





 その後、一昼夜かけてフロレンティーナたちが連れてこられた場所は、ルドナーという港町だった。サン・ラティノ聖王国南西に位置する比較的大きな港湾都市だ。


 彼女の生まれ故郷であるアーガストルテ男爵領からは西南西の大陸最果てに位置する場所で、聖都プラハトリアからは南南西に位置する場所でもある。


 つまり、盗賊どもに捕まってから今に至るまで、ずっと生まれ故郷から外へは連れ出されていなかったということだ。


 冒険者たちに捕まった賊どもが拷問の末に白状した情報によると、一週間後に密輸船がこの港に到着する予定で、それに合わせてルドナーの東にあった彼らのアジトから子供たちを連れ出し、国外に運び出すつもりだったらしい。


 取引先は海を渡った先の巨大な大陸を領土に持つ共和国の公認奴隷商という話だった。

 共和国の一部地域では普通に奴隷が認められているため、合法的に売買が行われる予定だったとか。


 まぁ、賊どもは非合法な方法で商品となる子供たちを仕入れていたわけだから、全面的に法に則ったやり方をしていたわけでないのは言うまでもない。


 ともあれ、あと少し遅かったらフロレンティーナ含む子供たちのすべてが二度と故郷の大地を踏めなくなるところだったので、本当に間一髪のタイミングだったらしい。


 それから、フロレンティーナは一応冒険者たちから一通り事情を教えてもらっていたので、彼らについても、この世界についてもある程度の情報は掴んでいる。


 彼らはこの街にあるレンジャーギルドに所属する冒険者の一団で、貴族の子息の誘拐事件を追っていたらしく、その果てに辿り着いたのが例の盗賊団だったらしい。


 そこで、殲滅作戦が実行に移され、子息含めた子供たちすべてが救出されたというのが事件のあらましだった。


 幸いにして、貴族の子息は奴隷としてではなく、身代金目当てに誘拐されたということもあり、別口で捕まっていたお陰でそちらも無傷で救出されたとのことだった。


 フロレンティーナ含む他の子供たちは、賊どもを壊滅するついでにまとめて救助されただけというのが、本当のところらしい。


 助けてもらった子供たちも身元が確かな者たちは全員、親元に帰されたらしく、冒険者たちの元に最後まで残っていたのはフロレンティーナ含めて四人だけだった。

 そのうちの二人は、牢屋の中で彼女が慰めていた幼子で、もう一人はよく知らない子。


 一応、彼女は自分の身元と捕まった経緯すべてを話したが、得られた情報は、故郷の城塞都市ヴィストルジェが謎の襲撃を受けて壊滅してしまったということだけだった。


 焼け出されて生き延びている者たちもいるらしいが、領主含めてすべての良民の生存は絶望的と言われた。


 改めて両親の死亡が事実として突きつけられ、フロレンティーナは放心状態となってしまった。ギルド前の石畳の上に尻もちをつき、声も上げずに泣いた。


 そして、彼女も完全に身寄りがなくなってしまったため、他の三人の子供たち同様、とりあえず孤児院に預けられることが決定した。

【次回予告】明るい未来を手に入れるために

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