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『プロローグ』
この世界には理がある。人の決めた不文律。
魔女に逆らってはいけない。なぜならば、なぜならば、逆らえば皆等しく屍となるからだ。この焼き払われた村も用済みとなった。いるのは男衆ばかりで女は老婆や子どもすらいない始末だ。時を遡れば一日前までは皆生きていた。動いていた。笑っていた。
それが今となってはこの有り様だ。家屋は未だに火の粉を吐いて悲鳴を上げ、村人たちは失意の底に無力さを呪い、悲痛な叫びで喚き散らしていた。
その中の一人──ジンはその手からこぼれ落ちていく妹だった灰を握りしめると、殺意をその目に歯の根を鳴らした。
「殺してやる……『魔女』を、お前たちを、この手で。必ず斃してやる……」
復讐を誓った少年もまだ若かった。この悲劇がジン七歳の出来事だった。