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透目町の日常  作者: 四十九院紙縞
『ゴースト・バイアス・エクソシスム』(投稿動画に幽霊が映っていたのでお祓いしてもらいに来た「私」の話)
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『ゴースト・バイアス・エクソシスム』5

 それからの後日談は、もはや蛇足かもしれないが。

 私の記憶の整理も兼ねて、まとめておきたい。

 私が大学のテストやレポートに追われつつ動画編集をしている間に、動画に映っていた生霊が日に日に薄くなり、とうとう居なくなったことは、そこそこ話題になっていた。そんな中で私が投稿した動画は、『透目町へお祓いに行ってきました』というタイトルでこそあるが、お祓いメインの構成にしなかったこともあり、ほとんどタイトル詐欺である。

 動画の構成は、こうだ。

 バス停を降りてから、神社を目指して歩く途中、白猫に威嚇され。その後、私がぶつぶつとなにかを呟きながら、不安定な足取りで廃屋に向かう。そこに、怒鳴り声と共に志塚さんが登場し、笹森さんが合流し、便利屋さんの事務所前に移動する。そして暗転した画面に『寺生まれのTさん登場』、『予定を変更し、別のところでお祓いしてもらいました』、『寺生まれってすごい』のテロップが入り、次に映ったのは、笹森さんが作ってくれたお守りだ。

 その後、動画の三分の二を占めたるは、『ひととせ』の紹介だ。あの日、とにかくお腹が空いていた私は、カツカレーとプリンアラモードを注文した。味については、それはもう絶品で、しかしどこか懐かしさの温もりを感じるものだった。店主さんも顔出しNGだったが、店内とお庭については撮影の許可が下りた。店内もお庭も、全てが計算し尽くされて作られているのか、無加工で十二分に素敵な画が撮れた。

 ……とまあ、そんな感じの構成となった動画の再生数は、生霊で画面がいっぱいになった動画の次にまで伸びた。恐らくは視聴者の望む展開とは違うそれに、誹謗中傷とも取れるコメントも散見されたけれど、人の噂も七十五日とはよく言ったもので、粘着するような人は居らず、あっという間に収束していったし、志塚さんの指示でブロックした人たちから嫌がらせに遭うこともなかった。

 そうして本日、八月十日。

 私は再び、透目町を訪れていた。

 前回はとにかくお祓いをしてもらうことが第一目標だったこともあり、いつも行っていたその土地の歴史や特産物の紹介をすることができなかったからだ。調べだしてみると、この町は、実に興味深い歴史に溢れていた。これこそ、私の動画で取り上げさせてもらいたいものだ。再生数は関係ない。私は私のやりたいことをやるまでだ。

 それに、志塚さんたちに改めてお礼も言いたい。今日は、この町での予定がみっちり詰まっている。例によって五時起きでやってきた私は、いつも通りスマホを取り出し、撮影を開始する。

「おはようございまーす。私は今日、再び透目町へやってきています。前回の動画では紹介できなかった、この町の歴史などなどを紹介していこうと思います。まず『透目町』という町名ですが、これは『スキメ』という神様が由来になっていると言われているそうです。神様の世界で居場所を失ったスキメ様がこの土地に現れ、あらゆる人の居場所となるよう、豊かな自然を造ったと言われていて――」




 終

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