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透目町の日常  作者: 四十九院紙縞
『名無しの名無花さん』(突如現れた正体不明の女性と同居することになった「私」の話)
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『名無しの名無花さん』4

 結局、スキメ様は夕方まで私と一緒にお喋りにつき合ってくれた。

 このひとにもやらなきゃいけないことのひとつやふたつ、あるのではないかとも思ったけれど。スキメ様がこの町を見守ってくれているのは、役目や義務ではなく、彼女の興味関心からくるものだ。今日の関心が私に向いていたから、私とお喋りをした。たぶん、それだけだ。それに、長い年月を生きているスキメ様の話は徹頭徹尾面白く、ときに為になる話もあり、本当に楽しかった。

 たった一週間、されど一週間。家族とろくに話をしない時間が、私にとってどれだけストレスになっていたのかを、改めて認識したような気がする。

「さて、御主はそろそろ家に帰れ」

 綺麗な夕焼け空を見上げながら、スキメ様は言った。

 家に、帰らなくてはならない。

 大好きな家族と、知らない人が居る、今は不気味なあの家に。

 ごねたところで意味がないことはわかっている。それに、帰宅時間が遅くなれば両親は心配してくれるだろうけれど、決してそういうことがしたいのではない。

「……そう、ですね」

 覚悟を決め、私はベンチから立ち上がった。

 そうしてスキメ様に軽く頭を下げる。

「スキメ様、今日はありがとうございました。ばいばい、またね」

 今日一日でたくさんお喋りをしたからだろう、別れの挨拶は友達にするような、気さくなものが口から飛び出した。

 スキメ様はそれを無礼だ不敬だと言うこともなく、柔らかく微笑んで、

「ああ、気をつけて帰れよ」

と言って、手を振ってくれた。

 ――せいぜいあと数日の辛抱だ。

 スキメ様が言ってくれた言葉を頭の中で反芻しながら、歩みを進める。

 名無花さんが居る生活に終わりがあると知れて、本当に良かった。終わりがあるなら、まだ頑張れる。

 名無花さんが『次元の旅人』と呼ばれる存在であることがわかったところで、彼女に同情はしない。この一週間、ずっと怖い思いをさせられたのに、そんなことを思えるほど、私は善人ではない。

 私は、ただ願うばかりだった。

 どうか、私の気が狂ってしまう前に居なくなって、と意地の悪いことを。

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