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汚染区域  作者: あさぎ
7/8

7話

鹿頭の率いる一団は基本的に野盗のみをターゲットとし集落を襲わない。しかしこれは鹿頭達が義賊であるという意味ではない。

それは野盗達が周辺の集落より略奪によって得た財貨を奪い取り自身のものとしている為である。現在、戦争の惨禍を生き延びた者達の子孫が細々と暮らすこの亜大陸には大小様々な集落が点在している。人の生息圏としては適さなくなった場所も多数あり、大陸中心部より遥か南西部一帯には魔の森と呼ばれる放射能汚染により巨大化、奇形化した動植物により構成された人外魔境が広がっている。北側一帯に目を向ければそこには延々と荒野と砂漠という不毛の大地が広がっている。鹿頭達が以前根城としていた東の辺境のその先にはゴーストタウンと化した戦前の街や廃棄場が広がり、その先にある海への進出を拒むかのように鉄の巨兵の群生地がある。大陸の端から四方をこういった物に囲まれている都合上、自ずと人類の生息圏領域は大陸中心部へと集まってくる。そして多数点在する集落からさらに中心部には5つの要塞都市が都市国家を名乗り互いに牽制し合いながらも緩やかな連携をもって繁栄していた。

この都市国家には常備兵が存在しており、この常備兵達を鹿頭達は略奪の対象として捉えているのである。 






「敵は寡兵だ!!!狼狽えずに周囲の仲間と連携し1人ずつ敵を殺せ!!」

揃いの革鎧に羽のついた兜を被る男が周囲に向かい怒声を轟かせる。総勢80名を率いて行われた遠征から帰る道中突如としてそれは起こった。疲労の蓄積や周辺を脅かしていた比較的大規模な野盗団を戦死者を出さず討伐した事で気の緩みがあった事は否めない。しかし、狭い山間とはいえ隊列を組み前進していたにも関わらず隊列の中心部で指揮を取っていた司令官が射殺ろされる等一介の部隊長に過ぎぬ男には予想がつかなかった。司令官の額に矢が突き刺さり崩れ落ちたと同時に現れた一団に隊列の横腹を食い破られ遠征部隊は大混乱に陥っていた。

敵の数は多く見積もっても30には届かず先に滅した野盗団の半数にも満たない。がしかし完全に虚をつかれた事と1人1人が手練れである事も相まって隊は歯止めの効かない損害を被りだしていた。何とかして被害を最小限に留めるべく目の前の黒いマスクをつけた小男に斬りかかりながらも男は再び部下へと声を張り上げた。





「‥‥マクバの野郎完全に遊んでやがるな」

鹿頭に弓矢にて敵の指揮官と敗走兵を射殺して回るように命じられ、木々を飛び移りながら作戦を遂行していたアキヒトは冷静に戦場を眺めていた。

眼下に広がる戦場にて敵の指揮官の1人と思われる男と一進一退の攻防を広げるマクバを見てアキヒトはため息をつく。

「あの指揮官、頑張っちゃいるが大した相手でもないだろ。やろうと思えば瞬殺できるってのにオッサン久々の戦闘だからって楽しんでやがる。」

どうしたものかと思考を巡らすアキヒトは突如何かを閃いたかのようにニヤリと口の端を歪ませ弓矢をつがえ狙いを定めた。





ようやっと相棒の山刀を思う存分振るう事ができる。その喜びに震えながらマクバは眼前の敵へと斬りかかる。右手にロングソード、左手に中盾とオーソドックスなスタイルの兜頭目掛けマクバは鋭く踏み込み鈍い黒色の山刀を叩きつける。どうにか盾でガードしながらも完全に膂力の差を見せつけられ大きく体勢を崩す兜頭を尻目にまだ混乱から立ち直れず動きの鈍い敵兵3人を瞬く間に切り伏せる。焦った兜頭が繰り出してきた突きを半身を翻し避け、腕の一本でも貰おうかと山刀を構えたその瞬間マクバの背筋に冷たいものが走る。嫌な予感がし瞬間大きく横に飛びのけば、先ほどまで自身が居た場所を通りまるで吸い込まれるかの様に兜頭の額へと弓矢が突き刺さった。倒れ伏す敵を一瞥しマクバはアキヒトが潜んでいた方角を睨みつける。

「あんのガキ、帰ったらぜってぇシメる!」


舐めた悪戯を仕掛けてきた後輩へ怒りを抱きながらマクバは残る敵兵へと踊りかかった。





鹿頭の一団に強襲を受けた遠征隊のうち生きて都市国家まで逃げ帰れたのは80名中たったの6名であった。

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