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レイゴ・サイド


初めて会った時、あまりの美しさに心奪われ、放心していた俺に、ユーティリア嬢は戸惑っていた。


戸惑った姿にも心奪われた俺は、兄上の婚約者だという事を忘れ、告白していた。


「好きです、愛してます!」


いきなり手を握られたユーティリア嬢は、驚きながらも微笑み、やんわりと手を離した。


周囲に控えている使用人は、慌てた様子でオロオロしている。


「嫌いだと言われなくて良かったです。私はライド殿下の婚約者ですから、いずれ家族になります。仲良くしてくださると嬉しいです。」


俺の隣にいた、ユーティリア嬢と同い年の妹、ミュウがにっこりと微笑む。


「私もユーティリア様のこと好きですわ」


「ありがとうございます、光栄です。」


まだ7歳の少女達の微笑ましいやり取りに、周囲の使用人はホッとした様子になる。


あの時は驚きましたわ、ライド兄様の婚約者に告白なさるなんて、気でもおかしくなったのかと思いました。ユーティリア様が上手く躱してくださらなかったら、レイゴ兄様はどうにかなっていましたわ。


後に、ミュウが思い出したように言ってきたのは、反論のしようがなかった。


ユーティリアと出会ってから、俺は偶然を装ってユーティリアに接触した。


教師達が天才だと褒めるユーティリアは、厳しい指導にも耐え、寝る間も惜しんで勉強していた。


次期王妃としての教育で、感情を表に出すことが少なくなったユーティリアだが、感情が無くなった訳では無い。


よく観察していたら、ユーティリアの考えていることが何となく分かるようになってきた。


「レイゴ殿下…何をなさっているのです?」


そろそろユーティリアが通ると思って、廊下で待ち伏せしていたら、ユーティリアが疑惑の目を向けてくる。


偶然を装って接触していると気づき始めたかな。


「これは、これは、兄上の婚約者殿ではありませんか」


「わざとらしいです」


わざとらしく、大げさな身振り手振りで言えば、直ぐにユーティリアが止めるように静止してくる。


ユーティリアの後ろに仕えている侍女達はクスクス笑っている。


侍女達は、兄上より俺がユーティリアの婚約者であったら良かったと思っている。


いや、ほとんどの貴族が思っているな。


兄上は、少し頭が足りない。


生まれ順で王位継承順位が決まる我が国にとって、第一王子である兄上の教育は何よりも優先すべきものだった。


だから、あらゆる教師を雇い、兄上をどうにかしようとしたが、どうにもならなかった。


父は頭を抱え、母は俺に期待した。


「ライドの事は見限りました。レイゴ、次期王としての教育を受けなさい。」


そう言った母は、兄上がやらかすことを悟っていたのかもしれない。


俺は、勉強の覚えも良く、素行も良かった。


レイゴ殿下が先に生まれてさえいれば…


そう言う者達は少なくなかった。


「ユーティリア嬢、息抜きは大事ですよ」


「突然なんです?」


「多少、分からない事があっても大丈夫です。王妃は国王と支え合っていくのですから」


久しぶりに会ったユーティリア嬢の顔色は良くなかった。


兄上がおバカな分、ユーティリア嬢に厳しい教育が行われているのだろう。


国王をサポートし導いていけるように。


いくら天才だと言われようと、ユーティリアは人間だ。


全てを完璧にこなす事は不可能だ。


なのに、俺の言葉に固まっていたユーティリア嬢は、瞳を伏せ弱々しく呟く。


「私がライド殿下を支えなくては、国民に影響が出てしまいます」


そういって、去っていくユーティリア嬢。


数日後にユーティリア嬢は体調不良で寝込んだ。


なのに、兄上は見舞う事すらしない。


権力者に媚びへつらう連中を従えて、ユーティリア嬢を貶める発言ばかりし、勉強もそこそこに、娯楽付けの日々。


このままではユーティリア嬢が儚くなってしまうと危惧した俺は、兄上を第一王子の立場から引きずり落とそうと行動し始めたとき、ミュウが忠告しに来た。


「レイゴ兄様、焦ってはいけませんわ。しくじりますわよ。」


言い争った結果、しばらく大人しくすることにした俺が、ユーティリア嬢を手に入れるのは数年後。


なんの落ち度もないユーティリア嬢に、一方的に婚約破棄を突きつけた兄上には殺意を覚えた。


しかし、誤魔化せない事をしでかしてくれた兄上のお陰で、俺はユーティリア嬢の婚約者になった。


ようやく、ユーティリア嬢を手に入れる事ができて俺は幸せです。

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