婚約者は蛇の貴公子
蛇注意。嫌手な方、すみません。
「君は何を考えている! ふざけるな!」
全身で私を拒否しているのは幼い頃に定められた婚約者。年まわりも良く、家同士の格が釣り合い、かつ両家に益があると選ばれた相手。見た目だって悪くはない。身長ともども平均的だが嫌悪を催すほど酷くはないのだから、政略結婚の相手としては十分だろう。
女学院を卒業したら嫁ぐことが決まっていた。卒業まであと二年半。その前に王都にて行われた顔合わせの場。互いの領地が離れていたために顔を見るのは初めてだ。
私は現在十五歳になる子爵家の長女、エリカ・フォーレ。ストロベリーブロンドの少しクセのある髪と赤紫の瞳を持つ女の子である。顔立ちは、そこそこ可愛い系、だと思う。至って健康。跡取りの兄がいるので嫁に出される予定で婚約が決まった。山と農地の広がる田舎に所領のある家で、中央での役職などは負っていない。ただ、うちで取れる小麦や野菜は質の良いことで有名で、そのことから先方と縁を結ぼうという話になっていたのだけれど。
こんな反応をされるなどとは思ってもみなかった。
私はただ、小さなおねだりをしただけ。
飼っているペットを嫁いでからも飼い続けさせてほしい、と。
「冗談ではない! すぐさま捨てて来るんだ!」
そう叫ぶ彼の顔色は、会食の始まった頃から比べると血の気がひいている。顔面蒼白というのは比喩ではないのだと、頭の一部で考えていた私は、
(黙って連れ込んで事後承諾にしなかったんだから、誉められてもいいくらいでしょ)
怒鳴られてもまったく反省する気がなかった。
そんな私を心配するようにすり寄る小さな生き物に、そっと頬ずりする。白くて細くてひんやりツヤツヤの、私の可愛い子。
室内に悲鳴が響いた。
そんなに蛇が苦手だったのか。
婚約は破談になった。
生理的にどうしても無理だと言われて。
顔合わせになるはずだった会食も中断し、両家の両親による話し合いが行われた。当事者である私は女学院に返される。
王都の外れにある女学院の寮まで結果を教えに来てくれた両親によると、双方の主張を聞いて婚約は解消でなく白紙になったそうだ。それなら双方に傷もないね。
「あなたは昔から領地で野山を駆け回っては、蛇だの蛙だの蜥蜴だの連れ帰ってましたからねえ。わたくしも慣れてしまっていましたけれど」
「せめて犬猫であれば先方も受け入れてくれたかもしれんが、今更捨てるわけにもいかんだろう。最後まで責任は持つように」
私の両親も田舎領地暮らしの上、幼い頃から私がやらかしてきたので、今更蛇の一匹や二匹で悲鳴もあげずに受け入れてくれる。でもそれだけでは終わらなかった。
「エリカ、こうなっては仕方がない。先方との縁はなくなったのだから、卒業までに自力で相手を見つけなさい」
「できれば貴族の令息にしてね。あなただって子爵令嬢なのだから、家に益のある方が望ましいわ」
「平民でも裕福な商家の息子くらいなら許そう」
それだけ一方的に告げると両親は宿へと帰ってしまった。婚約関係の処理などで後数日は王都の宿に滞在するから何かあったら訪ねてくるようにとだけ告げて。
え、娘に丸投げってありなの? 一応、まだ見捨てられてはいないよね?
うちは田舎暮らしではあるけれど貧乏ではない。教育も衣食住もそれなりに良いものを与えられてきた。貴族に拘りはないけれど、生活の質は落としたくないのが本音。だから元婚約者との縁談もさして不満はなかったし、ないように育てられてはきたのだが。卒業までに相手を見つけられなかったら平民落ちということだろう。
寮の談話室から戻った自室で、私は腕に巻き付く子蛇に話しかける。
「シャンテリー、どうしましょう。結婚しなくてはならないのは分かっているけれど、当てがまったくないわ」
何せ幼い頃から婚約者がいたから、婚活などまったく他人ごとであった。
「とりあえずお隣のオリーブに相談してみましょうか」
隣室のオリーブは男爵令嬢。やはり農地を持った田舎貴族で領地育ち。女学院で出会ってすぐに仲良くなった。彼女はシャンテリーを連れた私を自室に招いて話を聞いてくれた。
「それは災難だったわね、お相手が」
「ひどいわ。被害者はこちらよ」
「生理的にダメなものはどうしようもないもの。慣れることもできないでしょうね」
オリーブは、なんというか現実的なのだ。彼女には婚約者がいないが、それで焦る様子もない。多産な家の末の子供なので、平民になることにも抵抗はないそう。
「こんなに可愛いのに」
「私やあなたは領地が田舎だから、見慣れているもの。先方が街育ちなら苦手意識があっても無理もないわ」
私が相手に求めるものはシャンテリーを受け入れてくれることが第一。年齢も見た目も性格も身分も、二の次になる。
「街育ちの方はお相手には厳しいかしら?」
「人によるとは思うけれど。ああ、敬虔な方ならいいんじゃないかしら」
我が国の建国記は神話でもある。
他国の王族だったが荒野に追いやられた初代王は、そこで四柱の土地神と出会い、助力を得て新たにその地に王国を作ったという。
あまり力を持たず、その形状から人には忌避されるばかりだった神々は、礼を尽くす王に感銘して加護を与えた。そんなわけで、わが国の信仰対象はその四柱である。そのうちの一柱が蛇神であった。ちなみに、他の三柱は烏と蜘蛛と蚯蚓である。
信仰する者が増えると神の力も増大するらしく、領土を増やした我が国を今も守ってくださっている。四神殿にはその四柱が人型となって生された子孫の方が神公家の地位を与えられて、代々神殿長としても務めておられるのだ。
そんな経緯があるので、我が国では神と同じ種族の生き物を虐げないようにという慣習がある。元婚約者様はあまり信仰心がなかったのね。他の三柱の信者であった可能性もあるけれど。
「となると、神殿で網を張るのがいいかしら」
「言い方! でも神殿で敬虔な方と交流したいと相談するぐらいはいいんじゃない?」
「うん、それが良さそう! ありがとうオリーブ。希望が出て来てすっきりしたから散歩に行って来るわ」
「はい、いってらっしゃい。夕食の時間に遅れないようにね」
「遅れたら夕食抜きになるもの。絶対遅れないわ」
でも私は夕食までに戻ることはできなかった。
シャンテリーと共に向かったのは寮の裏手から続く雑木林。
この女学院は貴族令嬢たちに結婚後に役立つ領地経営の補佐や家の差配、社交上の振舞いなどを教えるために作られた。また令嬢たち同士の交流も目的とされている。設立されてから百年ほど経つけど、教えられたことがすぐ役立つと評判。全寮制。通常は十五歳から三年間の在籍。入学は貴族の娘は強制。
婚姻は十五歳から認められているが、身体の出来上がっていない状態での危険性についても貴族となれば学ぶので、多くは卒業後に婚姻するのが一般的となって久しい。もちろん、政略により途中退学して嫁ぐ生徒も一定数はいる。だが余程のことがないと世間的には白い目で見られるため、少数に留まっている。女学院は貴族の令嬢の心身を守り、自ら立てるだけの知識を与えてくれる場所なのだ。
寮は二つあり、高位貴族用と下位貴族用に別れている。伯爵家以上の高位貴族令嬢たちの寮には、彼女たちの連れてきた侍女も一緒だ。こちらには表にも裏にも優美な庭園が配されていて、建物も美しい。
私がいるのは勿論、下位貴族用。何せ高位貴族と違って数が多いから、侍女を連れてくることは不可。将来的に王宮や高位貴族家に女官や侍女として勤める者も多いので、身の回りのことくらい自分でしろと言うことらしい。勿論、貴族令嬢には違いがないので料理人はいるし、洗濯や寮全体の清掃をしてくれる下女もいる。個室が確保されているだけ悪くない。
寮の部屋では私以外にもペットを飼っている人もいる。自分で世話をする条件で認められているので、それなりの人が飼い主をしている。親元から引き離されて寂しい令嬢たちの慰めであるし、生き物と触れ合うことで他者にも優しくなれると推奨されているのだ。ただし、蛇を飼っているのは私だけだ。飼い始めはよく悲鳴を上げられたりしたけれど、今はそれなりに受け入れられている。
下位貴族用の寮は建物はそれなり。下位貴族のタウンハウスに似た雰囲気がある。前庭はちゃんと手入れされているが裏はあまり整っていない。洗濯場を離れるとすぐに雑木林になっている。
女学院の敷地内に雑木林が残されているのは教育上の方針による。実際に生えている樹木を見ることで、領地の植生などを知ってもらおうということらしい。
私がシャンテリーと出会ったのもこの雑木林。
それまで領地を走り回っていた私には、女学院での生活は窮屈で仕方がなかった。オリーブをはじめ、友人はできたし、それは楽しかったけれど息苦しくて。寮から逃げ出すように辿り着いたのがこの雑木林。
自然に囲まれることで落ち着いた私は、それからも散歩と称して雑木林に通った。別に食べられる木の実とか茸とか採取なんてしてないし、木登りだってしていないんだからね! 本当だからね! 領地にいた頃、領民から「野生児お嬢」なんて呼ばれていた過去だって、ないんだから!
と、まあ入寮して一月くらいたった頃。
雑木林の奥には小川が流れている。この川は女学院の敷地をぐるりと囲い込む頑丈かつ聳え立つと言っていいほど高い塀の外から続いている。どうやら塀の下、地面を潜って流れているよう。
この塀の辺りを散歩していると、何かが川に流れて来ていた。何か白くて細いもの。
「あ、蛇だ」
と思った途端、近くに落ちていた枝を使って掬い上げていた。
その頃のシャンテリーは今より細くて短かったから、泳いでいたんだろうけれど、流されているようにしか見えなかった。
「白い鱗に赤い目、アルビノの子ね、可愛い!」
びっくりして、こちらを威嚇するけれど、迫力がなくて可愛いばっかりだった。
「そうだわ! あなた、うちの子にならない?」
一目見て気に入ってしまい、飼いたいと思った。顔を見れば毒蛇でないと分かったし。掌の上に乗せると、諦めたのか大人しくトグロを巻いたので、それを了承と受け取って連れ帰ったわけ。
領地では何度も蛇を飼ったから、要領は分かっている。まあ、よく逃げられちゃってたから今度は注意しないと、と思ったんだけど。
白いボディが特徴だから、淡雪の意味のシャンテリーと名付けて一緒に暮らし始めた。
そうしてすぐに、シャンテリーが普通の蛇とは違うことに気が付いた。
蛇って、飼ってても犬や猫みたいに人に懐かない。餌係くらいには認識してるみたいだけど、それ以上の関係にはなれない。でも一緒の空間にいてくれるだけでもいいと思って飼い始めた。きっと寂しかったんだと思う。家族や郷里と離れるのは初めてだったから。
でも、シャンテリーは懐いた。
あと、飼育容器の蓋を閉め忘れても逃げない。外に連れ出しても私の腕に巻き付いたまま、逃げない。
そしてなんとなくこちらの言葉を理解してるっぽい。
これは絶対に普通の蛇じゃないと確信したけど、同時に可愛いからいいやって思った。
出会って半年。で、今に至る。
そんなシャンテリーのお散歩スタイルは。私の手首にぐるりとブレスレットのように巻き付いて、袖に隠れている。蛇って隠れる場所がないと落ち着かないらしくて。だからまあ、よそから見れば私ひとりの散歩にしか見えないと思う。でも行きたい方向とかあると、袖から顔を出して、くいくいと示す。可愛い。
本日のシャンテリーのお望みは小川であるようだ。それも出会った上流。つまりは塀の傍である。
蛇はかなりの水を必要とする生き物のせいか、シャンテリーも川が好きだ。だから、はいはいと従ってここまで来たわけだけれど、どうも今日は塀―――というか塀の向こうを気にしているようだ。
「向こうに何かあるの?」
いつものようにそう問いかけるとまさかの返答があった。
「そこに誰かいるのか?」
もちろん、塀の向こうからである。一瞬、シャンテリーがしゃべったのかと思ったのは内緒。
声は若い男性のもののように聞こえた。
「あ、女学院の生徒です」
「ああ、これは女学院の塀か。まさかこんなところに……。すまない、少し聞きたいことがあるのだが」
相手の姿は見えないものの、品が感じられた。発声と発音が庶民とは違う。怪しい人ではないっぽい? 女学院の塀に近づく男なぞ警戒の対象のはずなのだが。
「ええと、なんでしょうか?」
「実は探し物をしているのだが。この辺りで蛇を見なかっただろうか?」
「蛇なら、この雑木林にもいますが」
何より、私の腕に巻き付いてるのも一匹いる。
「少し特殊な蛇なのだ。まず全身が白い」
「えっ!?」
私は慌てて袖口を見るが、シャンテリーの頭はひっこんでいる。
「まだ子供で小さい。毒はないし性質は穏やか」
「それは、その子は昨日今日に逃げたとかですか?」
もしそうなら蛇違いだから安心だ。そう思ったのだが。
「いや、逃げ出したのは生まれて間もなくで、そう、もう半年ほど前だな」
「そ、そんな前に生まれたばかりなら、もう何かに襲われているんじゃ……」
「特有の波動を発する種族だ。幼すぎると分かりにくいが、最近ようやく把握できるようになった。実をいうと、この辺りから波動を感じるので、確実に生きている」
波動ってなに? そりゃシャンテリーは賢くて可愛くて普通の蛇とは違うけど、でもでも半年も一緒に暮らしてきた私の大事な家族だ。初対面(対面はしてないけど)の相手に、はいどうぞと渡せるわけもない。
「み、見つけたらどうするんですか?」
「もちろん連れて帰る。稀少な種族なので悪用されぬよう保護せねばならん」
「か、飼われていたらどうするんですか?」
「そうならば交渉だな。……ところでお嬢さん、あなたの口ぶりだと心あたりがあるようだな?」
さっきから冷や汗が流れている。どうしよう、どうしよう。連れていかれちゃう。どうしよう。いやだ。連れていかないで。
「お嬢さん?」
返事もできなくなったこちらを訝しんだ声がする。でもそれどころではない。逃げ出せばいいのだ。女学院の敷地は関係者以外を受け入れない。用のある者は正門でまず身分を証明し、それから手続きが必要だ。蛇を探していますで入場が許可されるかどうか。でも許可されて聞き取りされたら。うちの寮では私が白蛇を飼っていることは全員が知っている。元々の飼い主が引き取りに来たとなったら、すぐに呼ばれるだろう。そこまで考えてしまうと走って逃げることもできなかった。何より、縫いつけられたように足が動かない。
「様子がおかしいな。……非常事態ということにしてもらおう」
ざんっ、と土を蹴る音がしたと思ったら、塀を越えて飛び降りて来る人物がいた。塀は二階建ての館と同じくらいに高い上、手掛かり足掛かりにならないようにつるつるしたものだ。未婚の貴族令嬢を預かっている場所なのだから、当然侵入対策は取られている。高さの他にもたしかこの塀には……。
「良い結界が敷かれているな。これならば余程のことがなければ安心というもの。私には無効だが」
塀と結界を人間離れした跳躍で越えてきたらしい男性が振り返った。
着地した後、ゆっくりと靡いていた髪とマントが収まっていく。長い髪は深い緑。ゆるく肩のあたりでひとつにむすばれていて、羨ましくなるほどのサラサラストレート。瞳は、シャンテリーのものに似た濃い赤。歳の頃はおそらく二十歳前後だと思う。端正でやや中性的な印象の顔立ちは、間違っても庶民のものではない。マントの下のサーコートは白。縁取りは赤。腰に剣の代わりに長杖を携えたその姿は、神に仕える神官騎士のものだった。
(そりゃ結界も超えられるか)
神官は守りの魔術を得意とする。そして守れるならば破れもするのだ。仕組みを知っているから。
神官騎士は通常の騎士と違い剣は持たないが、身体能力にも補強があると聞いている。それならば先ほどの跳躍も当然なのかもしれない。背は高いが身体が細いのでさして圧迫感はない。
「無作法を謝ろう。私は神官騎士のユーゴ。第二神殿に仕えている」
初代王に力を貸した順に第一第二……と呼ばれているが格は同じ。第二神殿は蛇神を祀っている。私が婚活に向かおうと思っていた神殿だ。そして神官は姓を名乗らないのが通常。そして身分に問われない存在だ。
名乗られたら名乗り返さないと無礼になると気付いて慌てて一礼する。
「エリカ・フォーレです。女学院の一年です」
鷹揚に頷くユーゴ様の動作ひとつひとつに品がある。私に足りないと普段から言われているものだ。
「フォーレ嬢、無作法続きで申し訳ないが、あなたの方から探し物の波動がするのだ。―――ああ、そこにいたのか」
いつのまにかシャンテリーが顔を出し、ユーゴ様を見つめていた。
「探したぞ。お前には役割があるのだから戻ってもらわねばならない」
ユーゴ様がゆっくりと手を伸ばすが、シャンテリーに動く気はないようで、むしろ近づいてくる手に向かって威嚇をする。
「生まれながらに自らの役目は知っているはずだ。戻りなさい」
それでもシャンテリーは私から離れようとしなかった。そのことが私に勇気を与えた。シャンテリーも私と離れたくないと思ってくれている!
「あのっ! お願いですから連れていかないでください! ずっと一緒だったんです。シャンテリーはもう、私の大事な家族なんです!」
ユーゴ様はシャンテリーから目を離し、私を見つめて眉を寄せ何か呟いた。
「名前が刻まれている、か。契約状態だというのか? これは私ひとりの判断では……」
そうしてひとつ頷くと、彼は私の目を真っすぐに見つめた。シャンテリーによく似た色で。よく似た瞳孔で……え。瞳孔が縦?
「フォーレ嬢、この蛇は第二神殿でも重要な存在なので在野におくわけにはいかない。しかしあなたから引きはがすわけにもいかないようだ。色々説明したいこともあるので、申し訳ないがこのまま神殿まで同行願おう」
返事をする前に私の身体はふわりと浮き、ユーゴ様の腕に抱きあげられていた。
「手を首にまわして。あと口は閉じていた方がいい」
そのまま、一旦沈んだユーゴ様は私を抱えたまま飛び上がった。軽く塀より高くまで上がる。雑木林から続くように広がる森も、森の左手から徐々に増えていく人家も、ひいては王都の街並みすら見えた気がしたがそれは一瞬のこと。落ちるように浮くように地面に向かっていくお腹がひやりとする感覚に襲われる。子供の頃、木から飛び降りた時に感じたのと同じ。あれよりも高い場所から。
地面に降りてもさすがに硬直したままの私は、近づいてきた馬に乗せられ、いずこかへと運ばれていった。
もしかしてこれは、誘拐と言うのでは……!
疾走する馬の上で会話は困難だ。下手をすれば舌を噛む。沸きでる疑問と今更ながら自分がどうなるかという恐怖がまず第一。けれどそれと同じくらい、ぴったりと背中に感じる異性の身体の熱と硬さに、私の思考もままならない。野生児と呼ばれても男性に関しては箱入りだ。この間まで婚約者がいた貴族の娘としては当然のこと。父や兄とでさえ、こんな風に馬に同乗したりはしない。
ユーゴ様も何も告げずに先を急ぐようで、少しずつ色を変えて赤く染まっていく空が夕暮れを知らせる。夜が近い。
(夕食抜き、決定?)
そんなつまらないことが浮かぶが、馬は王都中心部への道を駆けていく。そうして、荘厳な神殿の前でようやく足を止めた。
王都中央、王宮前の広場に四つ並び立つ白亜の神殿。それが我が国の四柱の神々を祀る神殿だ。あくまでも荘厳、かつ誰にでも開かれた場所。
「ユーゴ様!? どうなさいました?」
神殿の入り口を守る騎士(こちらは帯剣している)に問われて、馬から私共々降りたユーゴ様は馬を預けて指示を出す。
「神殿長に先ぶれを。客人をお連れする」
騎士のひとりがすぐさま走り去っていくのを眺めたまま、ぼんやり見送る。急展開に頭が付いて行っていない。
「フォーレ嬢、手を」
エスコートしようとしてくださっているのは分かるのだが、どうにも混乱したままの私の手足は動かない。それを見て取ったのだろう。
「失礼。このままお連れする」
そう言って再び抱えられる。もう声も出ない。
硬直した私を抱えたまま、ユーゴ様は足早に進み、気が付けば神殿の最奥に着いていた。いわゆる拝殿の裏にある場所で、控室とか休憩所といった感じがする。居心地の良さそうな椅子がいくつも置かれ、机の上には茶道具と軽食があったせいかもしれない。
窓際の椅子に腰を下ろしていた壮年の男性が、ゆったりとした動きで振り返る。衣装もゆったりとしており、額を飾るサークレットと合わせて、その人物が誰かを教えてくれた。間違いなく神殿長様だ。
「ユーゴ、随分と慌ただしいな」
「申し訳ありません。焦っていたようです。神殿長、いえ父上、至急相談にのっていただきたいのですが」
ちょっと待って。神殿長様が父親って、ユーゴ様って神公家の人!?
ちなみに神公家って他の国にはないそうだ。地位としては一応王族より下になり大公家とほぼ同格。神と王と民を仲介する役目を負っている。神官には望めば誰でもなれるけれど、神殿の中枢は神公家の血筋で固められている。何と言っても神様の末裔だから特別らしい。神殿長は神公家の当主が兼任する。王国の政治とは切り離されているけれど神殿長ともなれば国王の相談役を兼ねているそう。地位は下でも王族すら敬意を示すとか。このあたり、女学院で習った。
「それはお前が抱えている令嬢が関係しているのか? 見れば女学院の生徒のようだが、お前、未婚の令嬢にその扱いはどうかと思うぞ。とりあえずソファーにおろしてあげなさい」
女学院には制服があるからね。一目で分かるようになっている。シンプルな紺の脛丈のドレスにレースで飾られた白い衿とリボン。足元はヒールのある編上げの短靴。そして既婚者はいないので、未婚であることも明白という。
神殿長に向かい合うソファーに、ようやく座らされた。
「お嬢さん、私は第二神殿の長を務めるノア・セルパンという。お名前をお聞きしても?」
染み入るような声とはこういうものだと実感する。警戒心を抱かせない声。
「は、はい。エリカ・フォーレです」
本来ならば立ってカーテシーをするべきなのだが、正直立てる気がしないので頭だけ下げる。自分の声がかすれて、裏返っているのも含めて許してもらいたい。
そんな私の隣に平然と座るユーゴ様。……隣!? 馬に同乗して抱えられていたとはいえ、この距離感は何!? ゆったりと座っているだけなのに高貴な人特有の雰囲気があって、横眼でつい見とれてしまったが、そんな私を置き去りに、隣と前で会話が始まる。
「父上、彼女はどうも私の『証の半身』と契約状態のようなのです」
「それはめでたいことだ。しかしお嬢さんには説明が必要だな。この様子ではお前、何も説明していないのだろう?」
「はい。波動を辿って女学院内の雑木林にて半身と共にいる彼女を見つけました。契約状態と判断し、放置もできないため同行してもらいました」
「ユーゴ。お前、女学院から攫ってきたのか。気持ちは分からぬでもないが筋は通しなさい」
神殿長様は休憩室内にいた神官に女学院に私を神殿で預かっていると連絡するようにと命じてくださった。無断外出は懲罰室行きだから、正直助かったと思う。
手配を済まされた神殿長様は、改めて私に視線を定めて穏やかな調子で話しかけられた。
「フォーレ嬢、神公家の由来はご存じかな?」
「はい、四神様のお血筋だと聞いています」
「そう。四神様に繋がる者でないと神公家を継げない。神と人を繋ぐという役目が果たせないからな。しかし、かつて血筋を偽ってその地位を狙った者が現れた。すぐに偽りであることは判明したが、目に見える証が必要ということになって四神様よりそれぞれ『証しの半身』が与えられることになった。この私のネージュのように」
にょろり、と大人の腕の太さを持つ白蛇が神殿長さまの肩から顔を出した。迫力はあるがそれよりも。
「わあ、きれいな子!」
ついそう口に出してしまえば、神殿長様も、横に座るユーゴ様も顔を綻ばされた。気のせいかネージュと呼ばれた白蛇も雰囲気が柔らかくなった。シャンテリーが大きくなったらきっとあんな風だ。なんとも優雅ではないか。
ネージュの頭を軽く撫でながら神殿長様から優しい視線が向けられる。
「あなたは蛇に対してまったく忌避感を持っておられぬようだ」
「あ、はい。領地でも何匹か飼っていたくらい好きです」
袖口からシャンテリーも顔を出し、同意するよう頭を縦に振る。可愛い。
その様子を見て、神殿長様はずばりと切り込んで来られた。
「なるほど。ちなみに婚約者はおられるかな?」
「……本日、白紙になりました」
そう。あまりの急展開に忘れそうになっていたけれど、婚約がなくなったのはまだ今日のことなのだ。私の人生を左右するほどの大事なのに、それでいいのか自分、とも思うが、何しろ手紙以外での交流もなく思い入れのない相手だったから仕方ないのかもしれない。それよりも、こうして神殿長様にまで繋がれたならば、縁談について相談にのってくれるかもしれないと、ちょっと打算も働いた。
「理由をお聞きしてもよいかな?」
「この子を結婚しても飼いたいと言ったら、お相手が蛇の苦手な方だったようで……無理だからと」
婚約者の蒼白な顔色が思い出されたが、顔そのものはあまり記憶にない。
そう言うと神殿長様は、なんと声を上げて笑いだされた。
「ユーゴ、そなたの半身は随分と優秀だな。嫁確保と虫除けを同時にしてのけたのだから」
「嫁確保?」
え、嫁って誰が誰の!?
「その、フォーレ嬢と違って、四神様ゆかりのお姿は苦手にされる令嬢が多くて。おかげで私はこの年でまだ婚約者がいなかった」
混乱する私に目を合わせてユーゴ様は言いにくそうにされているが、何故だか耳が赤くないですか? なんかそんな様子、年上の男性でもちょっと可愛いんですが? つまり、ユーゴ様は神公家という高貴なお血筋なのに婚約者がいらしゃらないと? まさか。信じられない。
「神公家の嫁探しは代々難航するのだ。元々四神様方は人より忌避されることの多いお姿であり、殊、女性には受け入れがたいとされる。私の時も中々決まらなかったのだよ」
そう続けられる神殿長様は、見る限り女性に好かれそうな方だと思う。今は少しお歳を召されているけれど品のある言動に柔らかな口調、整った容姿に身分に財力と不足もない。その方で縁談が難航? むしろ候補には事欠かなかったのでは。神殿長様のご子息だというユーゴ様についても同じだ。むしろ未婚でお相手がいらっしゃらないとか、令嬢方やそのご家族に狙われる条件しかないと思うのだけれど。
納得していない私に、神殿長様はネージュを撫でながら説明してくださった。
「半身は後継者が後継足りえると神が判断されると下される。十代後半が多いな。そして生涯傍にいて神力を与えてくれるのだ。神公家の者として、何より優先すべき存在なのは当然であろう。故に妻になる者に一番に求められる条件は、四六時中夫の傍にいる半身を受け入れられる者であること。表面上は平気な顔をしていても内心で受け入れられない者は半身から拒否される。半身は後継者の伴侶の選別も行うのだ。故に、神公家の縁談は半身が下されてから進められる」
半身が下されるまで、どれほど後継者候補(この場合はユーゴ様)に好意を持っていたとしても、いざ半身と対面してみれば話は別となることも少なくないのだとか。
貴族は魔力を持っているけれど、神力はそれ以上の奇跡すら起こす神の御業。当然、神力を保有するのは神公家の人間に限られる。国としても神力が背後にあるのとないのでは国民にも他国にも優位を保てるかに差が出るから、縁談相手も用意はしてくれるのだろうけれど、結果として残らないと。主に娘を差し出す大貴族にしても、縁を結べれば利は大きいが、代々苦労しているという程だから選ばれない可能性が高いとなれば、令嬢に傷が付くよりかはと他の貴族との縁を優先するかもしれない。言ってみれば選定者は神の化身。権力の及ばない存在だから、野心ある家ほど辞退するかもしれない。
ううむ、今日一日で、今まで雲の上のことだとさして関心もなかったことを色々知ってしまった気がする。いいの? 私なんかが知っても?
「私たちは生まれながらに神との繋がりを知っている。だが他者には伝わらぬこと。『証しの半身』がくだされるまでは神公家を継ぐ者としては半人前以下。私は半年前、十八歳になったと同時に半身が下されたのだが、孵っていきなり逃げ出されるという目に合った。おかげで私は後継者として認められなかったのだと噂される始末。探そうにも育つまで波動は分かりにくく、今日まで見つけられずにいたのだ」
ユーゴ様は十八歳なのか。そんなお立場ならそりゃ必死に探すよね。でもその間、シャンテリーは私とぬくぬく暮らしてました。なんかひたすら申し訳ない。
「半身が認めた女性は契約を許され、名付けを行う。それまではただ『半身』とだけ呼ばれる。ネージュは妻が名付けたのだよ。神公家の妻になるということは半身の契約が必需。それによって守りを頂ける。外敵から、そして夫となる相手から」
「あの? 神公家の方って危険なのですか?」
「神の末裔たる我々は魂と器がただの人間とは存在としての格が違う。不用意に婚姻すると相手の命に関わってしまう。そのために、半身が契約して伴侶となるものの格を上げて危険性をなくすのだ」
控えていた神官が用意してくれたお茶で乾いた喉を潤してから、私は一番聞きたかったことを口にした。
「あの、私これからどうなるんですか?」
頭では分かっている。けれどそれを認められるかは別だ。だってお相手は神の末裔だ。しがない下級貴族の娘の、自分でも認めたくはないが野生児である。
「名付けが認められた時点で契約は成った。あなたは私の婚約者だ」
間違いだと言って欲しい私の願いを即効でユーゴ様が打ち砕いてきた。さらに神殿長様が追い打ちをかけて来る。
「ユーゴはもうそなた以外と縁を結べぬ。半身は後継者から離れることはまずないはずが、此度のことはまさに異例。嫁探しが難航するとみて、自ら探しに行ったのではないか。そしてそなたを見つけてすぐさま認めて契約をしたのだろう。私もそなたを義娘とできることを嬉しく思う。神公家は喜んでそなたを迎えよう」
以降のことは二人で相談しなさいと神殿長様に示され、私はユーゴ様にエスコートされて移動することになった。ユーゴ様の腕に添えた指先が緊張で冷え切っている。このままどこへ連れて行かれるのかと思ったら、神殿奥の回廊から、いつの間にか神公家の敷地へと入っていたらしい。まだ夕焼けの残滓の見える空の下に広がるよく手入れされた庭園を過ぎ、巨大な邸が目の前に広がっている。女学院の上位貴族用の寮さえ比べ物にならない邸に飲み込まれるような気持ちになりながら導かれる。入り口に並ぶ使用人たちに頭を下げられるが、身分から言ったら私と差はないはずの人たちに傅かれるとひたすら場違いで申し訳なくなった。当然、ユーゴ様はまったく気にも留めずに歩を進める。
「すぐに母にも紹介したいところだが、急なことであなたも受け入れがたいだろう。今日はふたりで夕食を取ろう」
比較的小さ目の部屋へと招き入れられ、気が付けば食前酒のグラスを持っていた。正直、味がしない。今日の昼、顔合わせの会食でさえ豪華だなあと思っていたのに、それを軽く上回る食卓に目が回りそうだ。
ゆったりと構えられたユーゴ様は、向かい合って座る私に対してあくまでも丁寧に接してくださるのだが、こちらは女学院で教えられたマナーの復習でいっぱいで、当たり障りのない会話がせいぜいだった食事のあと、サロンに移動して改めて、と話を切り出された。
「事後承諾になってしまうが、あなたには私の婚約者になってもらう。これは決定だ。それ以外では決して不自由はさせないし、あなたの意思を尊重する。受け入れてくれればシャンテリーとも離れずにすむがどうだろう? 女学院に在籍中はこのまま手元で育ててくれて構わない。婚姻後ももちろん一緒だ。少なくとも、あなたの前の婚約者よりその点で有利ではないかと思うのだが」
「逆に条件が良すぎて引いています。ユーゴ様こそ、私で良いのですか? 田舎の下位貴族で、マナーもそれほど身に付いていない私ですが」
「半身と再会して、あなたがどれほどシャンテリーに良くしてくれたか、愛情を注いでくれていたかが伝わってきたのだ。実に好ましいと思っているよ」
手首に相変わらず巻き付いているシャンテリーに目をやると、曇りなき眼で見つめられる。変なこと、伝えてないよね?
「婚約が先になってしまった形にはなるが、単に条件に合ったからというのではなく、私個人を知って気に入って欲しいと思う。だから色々ふたりで話したり、あちこちに行ったりしよう」
そう私に向けられた笑顔があまりにも眩しくて、顔が赤くなるのが抑えられなくて。この人のことを知りたいと、はじめてそう思った。
「名前で呼ぶことを許してもらえるかな」
「はい、どうぞエリカとお呼びください」
ユーゴ様のテノールの声はとても耳に心地良くて。この声で名前を呼ばれると思うだけで鼓動が早くなる。
「ちなみに聞くが。エリカ嬢は烏、蜘蛛、蚯蚓は平気だろうか?」
「平気です。烏は賢いし、蜘蛛は野山ではよく見るし、土を掘れば蚯蚓はでてきますから」
「ある意味、あなたは四つの神公家のどこにでも嫁げる素養があったわけだ。おそらくシャンテリーが逃げ出してまであなたの元に行ったのは、他の三家に取られる前に行動せねばと焦って行動したせいかもしれない。誉めてやらないといけないな」
そう言って言葉通りにユーゴ様はシャンテリーの頭を撫でていた。シャンテリーも得意そうな顔に見える。シャンテリー、あなた、私の味方のはずよね!?
「田舎育ちなら候補者は多そうですけど?」
と聞くと優雅に肩をすくめられた。気障な仕草のはずなのに、少しも嫌味がない。
「神公家の次代の母になる者には魔力が必要だそうだ。半身からの加護だけでは子を宿せず、産むまでもいかないらしい。末端でも貴族であれば魔力があるから平民は除外される。おかげで選ぶ相手が限られてしまい、どこの神公家も嫁取りに苦労することになる。他の三家の次期たちも歳が近いが、一番若い私が一番先に花嫁を見つけたことになったな」
そう言って笑う顔がいたずらを思いついた子供のようで可愛く見えて、神官騎士という人種はもっと厳格で真面目なのだろうと思っていたのに、この人は他にどんな顔を持っているのだろうと、それをこれからいくつ見つけられるだろうと、期待に胸が高鳴った。
帰りは馬車が用意されて、ユーゴ様がご一緒してくださった。馬車の中、ふたりで話すことに抵抗がなくなったので、こちらの事情なんかも喋ってしまった。
「――両親から、自力でできれば貴族の相手を見つけなさいと言われたばかりなんです」
「ご両親は領地にいらっしゃるのかな?」
「前の婚約者のお家との手続きであと数日は王都の宿に滞在しています」
「では明日にでも予定を窺って挨拶に向かわねば。先ぶれを送っておこう。勿論、同席してくれるね?」
「はい。神公家の方だと知ったら、父は腰を抜かしそうです」
別れ際、女学院の門の前で馬車をおりた後、
「これからよろしく、婚約者殿」
と、手に口づけされた私の方こそ、腰を抜かしそうになった。
翌日、王都にタウンハウスを持たない為に宿に滞在していた両親の元へユーゴ様を案内する。そして父は予想通り腰を抜かした。対して母はクリームを舐める猫のように満足気。
「こんな素敵なご縁をすぐに見つけてくるなんて、エリカは実に親孝行だわ」
その母も、私の実家になるからと陞爵を告げられて絶句していたけれど。
それから女学院在学中という婚約期間、私とユーゴ様、そしてシャンテリーは交流を深めた。
郊外に遠乗りに連れて行って貰ったり、湖で釣りをしたりボートに乗ったり。ユーゴ様は私が自然体でいられるよう、気を配ってくださる。堅苦しいのが苦手なのは速攻で見破られていた。
ユーゴ様をお好きだった高位貴族の女学院の先輩に目をつけられたり、他の三神公家の次期様たちのお相手斡旋したり、長期休暇中に地方の神殿を訪問されるユーゴ様とご一緒したり。私の名前にちなんで神公家の庭にエリカを沢山植えてくださったり。箱入りすぎて蛇のどこが嫌がられるのかも知らずに契約してしまったというユーゴ様のお母様(それも王家のお血筋!)に大喜びで甘やかされたり。
そうやって卒業まで慌ただしくも瞬く間に過ぎ、一緒にいるのが当たり前になって。私はもうすぐ蛇の貴公子にと嫁ぐ。
「エリカ、神公家の人間はね、伴侶に対する執着が深い。だから一度結ばれれば決して離さない。その分愛情も深いから、覚悟していて欲しい」
どうやら私は、ハイスペックかつ独占欲の強い旦那様にがっちりと囲い込まれてしまったようだ。でもそれを嬉しいと思うから、きっと私は幸せになる。
ブレスレットというよりバングルほどの太さに育ったシャンテリーが今日も私の腕に絡む。きっとこの子が私に幸運を運んできた。この先もきっと、二人と一匹の未来は祝福されているはず。何と言っても、神様に遣わされた化身のお導きなのだから。
『婚約者は蛇の貴公子』 完
主人公の名前はエリカ。目の色が似ていると名付けられました。品種としてはジャノメエリカで、ジャノメは蛇の目。ユーゴの家名のセルパンはフランス語で蛇。
冒頭を書いたのが2019年11月でそれ以降放置していました……。
読んでいただいてありがとうございます。