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2-2.

 わたしは意を決してメイクをしたい理由を話すことにした。どんな反応が返ってくるのかちょっと不安だ。

 駄目って言われたらどうしよう……。リネットは基本的にわたしの意思を尊重してくれるけれど、駄目なことやおかしなことははっきり言う。


「リネットが相手だから正直に言うとね、わたしぶさいくになりたいの」

「……えぇっ?! なんてことを仰るのですか!」

「わたしの顔、ロベルト殿下の好みで殿下の婚約者に選ばれるんじゃないかって声があるそうなの……」

「えぇ、存じていますよ。わたしたちのレティシア様は国で一番可愛いと言っても過言ではありません」

「それはさすがに過言だと思うけど……。でも、わたしは婚約者に選ばれたくないの」

「どうしてですか? 以前は殿下に憧れていらっしゃたじゃないですか」

「顔だけで選ばれるなんて嫌じゃない?」

「レティシア様は中身も可愛いですけど……」


 これ、リネットは本気で言っているの? かなり恥ずかしいんだけど……。自分で言っておいてなんだけど、我ながらかなり自意識過剰だと思うよ? わたしは顔で婚約者に選ばれた実績を知っているから言えるけどさ。


「ありがとう。でも、殿下はわたしの中身なんて知らないでしょう? こんなに早く婚約者を決めてしまえば後からもっと気に入る人間がでてくるかもしれない」

「レティシア様以上のご令嬢はそうそういないと思いますが……」


 あぁ、なんか本気っぽい。リネットの目は完全に曇っている……。


「でも人間同士、相性があるでしょう? わたしも殿下のことは知らないし、後になってやっぱり要らないと言われても困るわ。それに、わたしはこの家から出たくないの。お父様とお母様のように恋愛結婚に憧れるし、仮に王族と結婚したら家族と離ればなれで簡単には会えなくなっちゃう」

「レティシア様……」

「それに、結婚まで至らなくても婚約してしまえば婚約者としていろいろと不自由になるでしょう? わたしは大事な家族やこの屋敷の人たちとできるだけ一緒にいたい。せっかく目が覚めたんだもの……。今回のことでいつ大切な人たちとお別れになってしまうかわからないって実感したわ」


 これはわたしの本音。婚約破棄される、されない以前にわたしはやっぱり家族と一緒にいたい。いまのわたしは『橘 枝織』の意識が強くあるけど、レティシアなのだ。わたしは家族が大好きだし、『橘 枝織』でできなかった親孝行をしたい。わたしが悪役令嬢にならずに婚約者になっても王子様には運命の相手が現れてわたしは婚約破棄されると思う。悪役令嬢でなければ国外追放はないかもしれない。でも、婚約破棄になればきっと家族は悲しむと思う。

 わたしの話を聞いたリネットは涙ぐんでいた。リネットはわたしが頭を打って長い間、意識を失っていたことに責任を感じている。事故はレティシアの不注意で、リネットには責任はなかったのに……。『橘 枝織』としての思いを重ねたわたしの発言で余計な罪悪感を与えてしまったかもしれない。悪いことしちゃった。どうやって気を取り直してもらおうかと考えていると……。


「……レティシア様。そういうことでしたらこのリネット、全力でお手伝いいたします!」


 あれ? 何か変なスイッチ入っちゃった? リネットがなんだかものすごく燃えている。「少々お待ちください。準備してまいります」と言葉を残し颯爽と消えていった。


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