3-2.
練習により、なんとか聴かせられるレベルになっただろうか。
よし、リネットに聴いてもらおう。
「リネット、ずいぶん待たせてしまったけれど準備ができたわ。聴いてくれる?」
「はい。楽しみに待っていましたよ」
目の前には椅子に座ったリネット一人。お父様とお母様にはまだ聴かせられない。まずはリネットの反応を知りたい。
リネットはにこやかな表情だけどどう思うかしら。緊張する……。
わたしはピアノを弾き始めた。
思うように指が動く。前奏部分は問題なし。良い感じに歌えそうだ。
わたしは曲に合わせて歌い始める。何度も歌った歌。レティシアの声はまだ少し幼いので変な感じがする。それでもレティシアは高くてきれいな声だ。歌にも合う。
わたしは気持ちを込めて丁寧に歌っていく。サビに入り、さらに盛り上がるところだ。ピアノにもさらに気持ちが入る。
あぁ、やっぱりわたし歌が好きだ。アイドルになりたい。
演奏を終えたわたしはリネットの反応を伺う。
どう思ったかな。歌はそんなに下手じゃないと思うんだけど……。
「リネット、どうだった?」
「なんというか、聞き慣れない曲ですね。でも、自然と耳に残るメロディです。レティシア様は歌もお上手だったのですね。ピアノも知らない間にずいぶん上達されていて驚きました」
「変じゃなかった? いろんな人に受け入れてもらえるかな?」
わたしはつい前のめりになってしまう。
「そ、それはわかりませんが……。でも、つい聴きたくなってしまうような、口ずさみたくなるような……そのような感じです。これは夢の世界の中でのものですか?」
「そう! 夢の中でアイドルとしてデビューしたときの曲なの。カラオケでもたくさん歌われたんだから」
「からおけ?」
「歌が入ってない曲が流れて、それに合わせて歌うの」
「それにはどんな意味があるんでしょうか?」
「声を思いっきり出すと気持ちいいじゃない? 歌を歌うとすっきりするのよ」
「はぁ、そういうものなのですね」
「カラオケのことは今はいいわ。ねぇ、お父様たちに聴いてもらっても大丈夫だと思う?」
当たり前だけど、この世界にはカラオケもなさそうだ。アイドルとして成功するためにはカラオケも必要かもしれない。
でも、それは後回し。まずはお父様たちに認めてもらわないと。
「旦那様も奥様もレティシア様を否定することはないと思いますよ」
「そうよね。でも、アイドルになることは賛成してくれるかしら?」
「それはわかりません。アイドルがまだどのようなものかわかりませんし……。ピアノを弾きながら歌うのですか?」
「ううん。生で演奏することもあるけど、基本は録音したものを流してそれに合わせて歌うかな。そうだ、録音したり、録画したりするものってある? 音や映像を記録するものね」
リネットは少し考え込んだ。
「……短時間で良ければあるかもしれません」
「本当に? それって簡単に手に入る?」
「侯爵家の力があればなんとかなるかもしれませんが、旦那様次第です」
「そうよね……」
「お二人にも聴いていただいてはいかがですか?」
「わかったわ。ここで悩んでいても仕方ないわよね。お父様とお母様に聴いてもらう! 聴いてくれてありがとう。リネット、二人の予定を押さえてくれる?」
「かしこまりました」
お父様たちにアイドルを認めてもらおう。
そのためには歌とピアノの練習をもっとしなきゃ。
せっかくだから別の曲も用意したいしね。




