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2-28.

 わたしたちは足早に馬車の乗り場に向かった。


 誰にも会わなくて良かった。

 ほっと胸をなで下ろしていると、リネットが少し離れたところから声をかけられた。

 やっぱり、そう簡単には上手くいかないよね……。なるべく顔を見られないようにしないと。


「すみません。そちらにいるのはリネット殿でしょうか?」

「はい、そうですが……」


 リネットは声をかけてきた騎士がわたしに近づかないように移動する。

 わたしの髪の色が違うことを疑問に思いませんように……。


「間に合ってよかったです。レティシア様に失礼があったとのことでお詫びの品をお渡しするように言われています。部屋に行ったらすでにいなかったので探しておりました」

「それはお手間をおかけして申し訳ありません」

「いえ。こちらの不手際ですから……。それでお渡しするものなのですが、今別室にありまして……」

「お気遣いいただかなくても大丈夫です。わたしたちはもう帰るところですので……」

「いえ、そういうわけには。受け取っていただかないと隊長に怒られてしまいます」


 お詫びの品とか良いから早く帰りたいけど、ここで断るとこの人が怒られてしまうのだろう。

 リネットは私の方をチラリと見た。わたしは軽くうなずき返す。

 この人が怒られるのは申し訳ない。

 

「それは困りましたね。……では、お言葉に甘えていただくことにします。一緒に行けばよろしいでしょうか?」

「こちらでお待ちいただいて構いません」

「いえ、何度も往復させてしまうのも申し訳ないので、一緒に伺います。特にこの場に危険がないことが大前提ですけど」

「もちろん、城内で危険なことはありません」


 ついさっき悪役令嬢Aに噴水に突き落とされたけどね……。

 わたしの気持ちが通じたようで、リネットは渋々ながらも一緒に行くことを選んだようだ。

 リネットと一緒に待っていても良いけれど、なるべくわたしの顔を見られたくないから仕方ないよね。

 一人で居る分にはレティシアじゃないとごまかせるはずだ。

 

「お嬢様、こちらで動かずにお待ちくださいね。知らない人についていっては駄目ですよ」

「ついていかないから安心して。読書でもして待っているわ」

「ではこちらを。すぐに戻ります」


 さっと、本を出してくれる。わたしが馬車で読みたいと言うかもしれないので、すぐ出せるようにしておいてくれたのだろう。

 ここは屋根も椅子もあるから待つのに問題はない。わたしは読書をして時間を潰すことにした。

 ここまでくればお茶会の関係者に会うこともないはずだ。こんなに早く帰るのはわたしたちくらいだろうから。



 わたしは本に没頭してしまっていたらしい。人が近づいてくる気配に気がつかなかった。


「おい、おまえ。こんなところで何をしている」


 声をかけられわたしは顔を上げる。一瞬、何が起こっているか理解出来ずに固まってしまう。


 声をかけてきたのはここにいるはずのない残念王子だった。

 え? 残念王子がどうしてここにいるの? お茶会は? なんとかこの場を切り抜けないと……。

 残念王子もわたしの顔を見て一瞬固まる。

 何? なにかいちゃもんをつけられるの? それとも正体がばれた?

 わたしは平静を装って返答する。


「ここで帰りの馬車を待っています」

「おまえ、見ない顔だな。僕のお茶会の招待客じゃないのか?」

「いえ、わたしは招待客ではありません」

「なら、招待してやる。今から来い」

「いえ、そういうわけには……。勝手なことをしては家族に怒られてしまいます。殿下お一人でお戻りください」

「お茶会に飽きたんだ。おまえがくれば少しは楽しくなりそうだ。だから来い」


 ど、どうしよう。

 なんとか受け答えはしているものの、わたしは内心かなり焦っていた。

 まだばれていないようだけれど、あまり会話を続けていると正体がばれてしまうかもしれない。

 お茶会会場に行くなんてもってのほかだ。


 あっ、向こうにリネットの姿が……。戻ってきたのに残念王子が隣にいるのを見てリネットも驚いている。近づきたいけど近づけないようだ。オロオロしている。

 


 わたしもどうすれば良いの?


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