2-27.
リネットの提案にわたしは面食らってしまう。これまでぶさいくでとおしてきたのにそれをやめてしまっては意味が無い。
「?」
「きれいになるメイクをするんです。今日のレティシア様の顔は不美人で認識されていますよね。ドレスも着替えましたし、髪を変えれば同一人物だとは思わないのではないでしょうか? 変装ですね」
「それは良い考えかもしれないわ。でも髪型を変えてもこの銀色の髪は目立ってしまうんじゃない?」
「髪の色を変えましょう」
「そんなことができるの?」
「お忍び用の変装道具があります。これは一回しか使えませんが髪を茶色に変えてくれます。念のために持ってきました」
そんな便利なものが……。
これ、ファンタジーで片付けて良いのかな。でも、髪の色を変えてお忍びとかWeb小説にはよくあるよね。
今はあまり気にしても仕方がない。とにかく無事にこの城を脱出しなければいけない。考えるのは後だ。
顔だけでなく、髪の色まで変わるなら同一人物と思われないだろう。リネットの提案はとても良い物に思えた。
リネット、準備良すぎだよ。
「良い考えね。それでいきましょう」
「ではレティシア様、手分けをしましょう。わたしは髪をやります」
「お願いするわ。わたしはお化粧するね」
わたしはきれいになるためのメイクに取りかかった。早さにはそれなりに自信がある。短時間でもそこそこきれいになれるはずだ。
別人に思わせるならなるべく大人っぽくなるようにした方が良いかしら。
リネットはわたしの髪の色を変えようとしている。小さな小瓶を取り出すと中身の液体をわたしの髪にかけていく。
すると、わたしの銀色の髪がすっかり焦げ茶色に変わっていった。
「不思議なものがあるのね……」
わたしは思わず感想を口にした。
「レティシア様はまだ使ったことがありませんでしたね。旦那様も奥様も昔からよくこういったものでお忍びデートをしていたそうですよ。お二人の髪の毛もきれいな銀色で目立ちますから。これは使い捨てですが、何度も繰り返し使えるものもあります。そのうちレティシア様も必要になるかもしれませんね」
「お父様もお母様も髪の色を変えても目立つ容姿だと思うのだけれど……」
「まぁ、目立ちはしてもお二人だとばれなければ良かったのです。お二人は家が決めた婚約者候補がいましたから……」
「そういうものなのね。お化粧はなるべく大人っぽくなるようにするわ」
「髪型は先ほどと印象を変えるためにアップにしますね。お化粧にも合うと思います」
リネットはわたしと会話しながらも作業を続けている。お茶会ではわたしの髪を目立たせるために緩く巻いたハーフアップだった。今度はフルアップにしてくれるらしい。
あっという間に結婚式にお呼ばれされた時のような髪型ができあがっている。
リネットって何でも出来るなぁとしみじみ思う。
リネットの手が止まったところでわたしは最後の仕上げをしていく。細かいところは人の手があるとやりにくい。リネットが仕上げてくれた髪型にも大人っぽいメイクは合いそうだ。
……よし、良い感じ。
「どうかしら?」
「ぐっと大人っぽくなりました。とてもおきれいです。まさかレティシア様だと誰も思わないでしょう」
「じゃあ、早くこの部屋を出て帰りましょう。部屋の外に誰かいないか確認してきてくれる?」
「かしこまりました」
そう言ってリネットは部屋の外の様子を確認しに行ってくれた。
「大丈夫そうです」
わたしが最後の仕上げをしている間にリネットは荷物をまとめていてくれたので、すぐに部屋をでることが出来そうだ。
「忘れ物はないわよね……」
「大丈夫です。マントはこちらにたたんでおきました」
「ありがとう。なら、早く部屋を出ましょう」
わたしたちは周囲を気にしながら部屋を後にした。
誰にも会いませんように……。




