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2-25.

 わたしはマントをかぶせてもらった状態だ。移動するにしても服がかなり水分を吸ってしまっている。このままでは重いし、垂れてくるしずくで周囲を汚してしまう。


「はしたないと思われるかもしれませんが、少しドレスを絞らせてください。このままではお城を汚してしまいます」

「こちらで掃除するのでお気になさらないでください。とはいえ、歩きにくいでしょうから少し絞った方が良いかもしれませんね」

「では、お言葉に甘えて失礼します」


 わたしはマントをかぶった状態でドレスを絞ろうとする。ちょっとやりにくいかも……。


「マントはわたしが持ちますよ。ご安心ください。見ないようにしますし、周囲に人が来たらお教えしますので」

「ありがとうございます」


 さっと手助けしてくれる。

 わたしはできるだけ地面にしずくがたれないように頑張って絞る。だが、わたしの手では完全に絞りきるのは難しい。お言葉に甘えて多少のしずくは許してもらおう。とにかく早くこの服を脱ぎたい。


 お城の騎士に案内されて移動し始める。

 転ばずにちゃんと歩けるかしら。

 そんなことを考えていると、マントを被った状態でも歩けるようにエスコートしてくれる。話しかけていいものか悩んでいたら向こうから話しかけてくれた。


「それにしてもいろいろと災難でしたね。女性は何歳でも女性ということでしょうか」


 ちょっと困ったような顔をしてわたしを慰めてくれる。これって、わたしのこの惨状が悪役令嬢の仕業だってわかっているってことかしら。


「まぁ。騎士様にはいろいろとお見通しということでしょうか?」

「そうですね。ああいった方はちゃんと減点されているのですよ。いろいろと思うところはあると思いますがご安心ください。怪しい動きがあったにも関わらず駆けつけるのが遅くなってすみませんでした」


 茶目っ気のある笑顔を見せたと思ったら、わたしみたいな子供に真摯に謝ってくれる。顔はよく見えないけど声はそんな感じだ。なんていい人なの……。


「いえ、すぐに来ていただいて助かりました。どうやって助けを呼べば良いのか途方にくれていたのです」

「そう言っていただけるとこちらとしても助かります。……ロベルト殿下ももう少し女性の扱い方がスマートであれば良かったんですけどね。発言にも気をつけていただきたいですし、もっと賢い女性を選んでいただかないと……」


 困った顔をしている。そんなことを言っても良いんだろうか。


「そんなことを言ってもよろしいのですか?」

「良くはないかもしれませんが、事実ですし、これを聞いているのはレティシア様だけですから。内緒ですよ?」


 きっと気を遣って場を和ませようとしてくれているのね。この人のおかげで気が晴れてきたかもしれない。



 楽しい時間だったようであっという間に部屋についてしまった。


「着きましたよ。こちらのお部屋をお使いください。この後はどうされますか? お茶会の会場に戻られても構いませんが……」


 騎士様はわたしが冷えないように暖房器具を用意してくれる。

 温かい。外の気温は低くないとはいえ、濡れたままだとさすがに寒い。暖房器具はありがたかった。


「いいえ。着替え終わりましたらお暇いたします。わたしが戻っては場がしらけてしまうでしょうし……。それにわたしもあの場はこりごりですから。いろいろとお気遣いありがとうございました」


 わたしは笑顔で答えた。マントで顔はよく見えないと思うので努めて明るい声を出す。騎士様も笑顔で返してくれた。


「本当にしっかりしたお嬢様ですね」

「いえ、そんなことはありません。褒めても何もでませんよ?」

「いやいや。本当にしっかりしていらっしゃる。この部屋にあるものはご自由にお使いください。足りないものがあれば遠慮なく人をお呼びください。そろそろリネット殿もいらっしゃると思います」

「どうやって連絡を? そういえばこの部屋もしっかり準備されていましたし……」

「お城には秘密の通信手段があるのですよ」


 ニコリと答えてくれた。

 さすがファンタジーの世界。通信手段まであるなんて……。トランシーバーみたいなものなのかしら。


「まぁ。秘密でしたら聞くわけにはいけませんね」

「えぇ、秘密ですから」


 わたしたちは笑い合った。なんて話しやすい方なのかしら。



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