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2-23.

 というわけで、わたしは噴水前に連れてこられてしまった。あまり水場には近づきたくなかったんだけど……。

 けれど、弱みを見せるわけにはいかないので黙っている。


「ねぇ、さきほどの殿下に対するあなたの態度」

「何か問題がありましたか?」

「いかにも自分は興味がありません。ほかの人間とは違いますアピール?」

「はぁ……」


 えぇ、興味がないそぶりも駄目なの? 難しすぎるんだけど。


「いくら自分の容姿が劣っているからって『自分はほかとは違います』アピールしても意味はないと思うのだけど」

「わたしもそう思います」

「え?」


 同意されるとは思っていなかったのだろう。ちょっと間抜けな顔をしている。


「いや、わたし、本当に興味ないので……。わたしは一人娘なので婿を取りたいですし、殿下の婚約者なんて狙っていません。見ての通り、このような容姿ですし」

「はぁ? 白々しいわね。殿下の婚約者になりたくないなんてありえないでしょう? 本当のことをおっしゃっい。わざわざ殿下好みの美人だなんて噂まで流して……」

「いえ、そんな噂は流していません」

「あなたの家は親戚から養子を取って跡継ぎにするのでしょう? 殿下の婚約者を狙っている証拠よ!」


 やけに事情通ね。たしかに、わたしが残念王子の婚約者になりたくないと言うまでは養子を取ることになっていた。でも今は違う。わたしが跡取りだ。


「いえ、わたしが跡取りの予定です。お父様もお母様もそのおつもりですから。直接聞いていただいても構いません」

「…………あぁ、わかったわ。あまりにぶさいくに育ってしまったので、殿下の婚約者は諦めて婿を取ることにしたのね。まぁ、その容姿じゃ婿を取るのも大変そうだけど。お金目当ての人なら来てくれるかしら」


 わたしのことを上から下までまじまじと見てくる。嫌な視線だ。

 なにこの人? めちゃくちゃ感じ悪いんだけど。取り巻きもクスクス笑っているし。典型的な悪役とその取り巻きだよ。むしろこの子たちが悪役令嬢だよ。


「派閥的にも問題がなくて、年齢的にも家格的にも殿下に釣り合うって夢を見てしまったのかしら。でも残念だったわね。殿下にはっきりとブスと言われちゃうなんて。せっかく服だけはきれいに着飾ってきたのに……」


 ドレスくらい好きなものを着させてほしい。顔はぶさいくになっているので、おかしなことにならないようにあまり派手にはしていない。けれど、殿下の目に留まってもらう必要はあるし、侯爵令嬢にふさわしい格好は必要だ。ドレスは良い物を選んでいる。

 ……ん? もしかして、殿下の婚約者候補になったのって見た目以外にもあるの? 派閥とか力関係とか大事だって言うものね。それでこの子は徹底的に潰してやろうと?


「最近のあなたの家、新しい化粧品を作っているんですって? 化粧品を開発しているのにその容姿……。効果は全然ないみたいね。たいしたものでもないのによく自慢できるわ。残念な容姿の娘のために化粧品を開発しているのかもしれないけれど、無駄な努力でおかわいそうだこと。お化粧をしてもそれなんて、わたしだったら外に出られないわ」


 そう言って悪役令嬢たちは笑っている。立派な高笑いだ。

 前言撤回。ただ単に性格が悪いだけだ。性格の悪さが顔に出てしまっている。この歳にして悪役令嬢としての語彙力も素晴らしいわ。悪役令嬢にレベルがあるなら、すでにかなりのレベルだと思う。

 それにしてもこの子、本当に詳しい。マスカラとアイラッシュカーラーはお母様がお友達にちょっと紹介しているくらいで、まだ大々的には販売していない。

 わたし、特に自慢とかしてませんから。あなたには買ってもらわなくても困りませんし。

 わたしにいちゃもんをつけるためにわざわざ情報を仕入れてきているの? なんかすごいんですけど。そのエネルギー、別のところにぶつけた方が良いと思う。

 わたしは心の中で悪役令嬢Aに言い返していた。


「あら。黙っちゃって……。本当のことを言われちゃうと仕方ないわよね。お化粧くらいじゃあなたの顔はどうにもならないんだもの。でもまぁ、これに懲りたら二度と殿下には近づかないことね」


 そう言って悪役令嬢Aはわたしにぶつかってきた。


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