2-21.
目の前の王子様はとても哀れんだ目でわたしを見ている。とてもイケメンなのに中身はとても残念な人のようだ。周りにいるご令嬢たちはクスクス笑っている。
はぁ……ものすごく感じが悪い。
群がっているご令嬢たちはこんな性格の悪い王子様のどこが良いのかしら? わたしには理解できないよ。
「わたくしはこの通りの容姿でございます。殿下の婚約者など身の程知らずな願いは持っておりませんのでご安心ください……」
こんなことを言われて普通は傷ついたり、悲しんだりしそうなものだけど、わたしは全く気にしない。むしろ、作戦通りだ。さすがにちょっとイラッとするけど……。
「そうか。なら構わない。僕の伴侶は美人が絶対条件だからな」
八歳にしてこの考え。この国は本当に大丈夫なの? 誰か教えてあげてください。このままじゃ残念な王様になりますよー。しばらく王子様のままだからこの人は残念王子だね。
が、もちろんわたしはそんなことは言えないし言わない。
「ぜひ、ほかのきれいなご令嬢とご歓談ください。わたしは賑やかしにもなりませんので、しばらくしましたら帰らせていただきます。会場はきれいな花でいっぱいにした方が良いでしょうから」
「おまえはブスだが、馬鹿ではないようだな」
残念王子はちょっと意外なような不満なような顔をして踵を返していった。
ぶさいくといえども自分をちやほやしなかったからすねているのかしら。見ているだけなら良いんだけどね……。金髪碧眼のまさに王子様って感じの容姿。まだ子供だけど華がある。
そもそも、いくら見た目が良くてもちょっと前まで十八歳だったわたしにとって八歳の子供は恋愛対象外だ。破滅フラグ回避のための婚約回避じゃなかったとしても残念王子に興味はない。
お父様のように格好良くて、頼れる素敵な人が理想だ。
わたしの側を離れるとあっという間に残念王子はご令嬢たちに囲まれた。ご令嬢たちは王子様をちやほやしている。
「殿下、今度我が家の別荘に来ませんか? 近くできれいな石が採れるんです」
「いいえ。ぜひ我が家の別荘にいらしてください。おいしい魚が捕れるんですけど、輸送が難しくて……。ぜひ殿下に食べていただきたいです」
「一度には行けないが、いずれな」
「殿下の今日のお召し物、生地はどこのものでしょうか? 最近、領地で新しい生地ができたんです。素敵な生地なので、ぜひ殿下に……」
いやー、なんかすごいわ。うん、わたしには無理。売り込みがすごい。この子たちは家の人たちに自分と家を売り込んでこいって言われているんだろうなぁ。
残念王子は機嫌が直ったようだった。もしかして、わたしも別荘に誘ったりしなきゃいけなかったのかな。ブスだからと断られそうだけど。
わたしはぼんやりと残念王子とご令嬢の集団を眺める。
この中に本当に王子様本人のことを好きな人ってどれくらいいるのかしら。
外見や身分でしか自分を見てくれないのなら、女性のことを見た目だけ見るようになっちゃうのかな。中身なんて見ても仕方ないって……。
いやいや、そんなこと考えても仕方ない。残念王子との婚約回避が目的だ。感情移入してどうする。
…………。
よし。適当なところで帰ろう。今日のミッションは成功だ。




