2-17.
お父様の言葉にわたしは思わず期待してしまう。すでにそういった製品があるのならメイクの負担はぐっと減る。最初は面白く思ったりもしたけど、可愛くなれないメイクはテンションが上がらない。
どうせなら別のことに時間を使いたかった。リネットにも悪いし。
わたしが早起きになればリネットはさらに早起きになる。睡眠時間を気にしてあげるべきなのはリネットの方だ。
本人は元々早起きだから問題ないって言うけど、このぶさいくになるためのメイクに使う時間はもっと別のことに使えた方が良い。こんなスキルほかではきっと役に立たないだろうし……。
「レティシアには無縁だが、大けがをして傷が残った人が隠すためのシートはある。元の肌に合わせるためにオーダーメイドで恐ろしく高価だが」
「それは現実的ではないのでは……」
「だから開発するんだよ。高価なのには理由がある」
「どんな理由が……」
とんでもなく高度な技術がいるの? それとも、希少だったり貴重だったりする材料が必要なの?
「単純に市場に出ていないし、売れていない」
「え?」
「レティシアも知ってのとおり、貴族にとって容姿は重要だ。大きな傷はマイナスになる。傷を隠したといっても消える訳ではない。マイナスの要素は残ったままだ。傷の存在自体を他人に知られないように完璧に隠そうとすれば足もとを見られてさらに価格をつり上げられる高くて売れないから買おうとする人にさらにふっかける。悪循環だな」
「なるほど……。欲しい人はお金を積むしかないと」
「売り買いせずにこっそりと自分たちで使うために作っている家はあると思うよ」
「では、それを我が家で作れば良いということですね」
「あぁ。今後、レティシアが外に出ていろんな人と会うことを考えると、同じクオリティで不美人にならないといけないだろう。シートを使えば時間の節約だけでなく、クオリティも一定を保てるはずだ」
「そんなに簡単にできるのでしょうか」
「技術や職人は囲い込むものだからなぁ。まぁなんとかなるだろう。実際にやっている家があるなら我が家でもできるはずだ」
「家で作るといってもどれくらいのお金がかかるのか……。全く利益にならないのに……」
売り物にならないものを作るなんて本当に良いのだろうか。話を聞いているととんでもない金額のお金が動きそうだ。
「内製化すればコストは抑えられるでしょうし、それくらいでこの家は傾いたりしません。出来なくても時間をかけてお化粧を頑張ればいいのですから失敗は気にしなくても大丈夫です。完成したシートが売り物にはならなくても、レティシアが開発するお化粧品はきっと大ヒットするわ。そちらの利益があれば問題ないでしょう」
「リーシアが言うなら間違いないだろう。我が家の財力と人財を投入して開発しよう。きっと上手くいくはずだ」
「お母様。そう言ってくれるのは嬉しいけど、まだマスカラしか……」
お父様もお母様も楽観的すぎませんか?
「いいえ。貴女はお化粧するときにわたしたちが普段使わないような使い方もしていたわ。夢の中ではそういったものがあるのでしょう? それ用に作ればきっと需要があるはずです。それにほかにもアイディアがあるのでしょう? たしかアイラッシュカーラーというものがアイメイクの必需品と言っていたわよね」
「はい……」
「夢の中での話、改めてしっかりお話を聞かせてね。聞きたいことがたくさんあるの」
「はい」
お母様はニコリと微笑んでいるが何か怖い。妙な圧を感じる……。
「一緒に革命をおこしましょう!」
「はい。……革命?」
お母様は化粧品開発に前のめりのようだ。というか何かスイッチが入っている。革命ってなに?
わたしは「はい」と言うことしかできなかった……。




