2-16.
完全に二人の世界を作っている。正直、困るんだけど……。
コホン。わたしは軽く咳払いをした。
お父様はハッとした表情になる。お父様たちはこちらの世界に戻ってきたようだ。
「あぁ、すまない。相変わらずリーシアが魅力的でね」
「まぁ……」
まだ戻ってきてなかったみたい。
前世が日本人のわたしからすると二人のやりとりはちょっと気恥ずかしいけど、二人って本当に仲が良いと思う。わたしも結婚するならお父様とお母様のような関係になりたい。
冷えた関係は嫌だ。貴族は政略結婚が当たり前で侯爵令嬢なら受け入れるのが普通かもしれないけれど、もう一人の私が拒否をする。政略結婚から逃げ切った二人ならきっと嫌な結婚は無理強いしないだろうけど……。
先ほどまでデレデレしていたお父様は真面目な顔になる。
今度こそ戻ってきたかしら。
「レティシアは化粧品の開発がしたいんだろう? それはきれいになるためのもので良いのかな」
「そのつもりです」
「では、不美人になるための化粧品も一緒に開発しよう」
「それは良い考えですね。やるなら徹底的にやりましょう」
お父様の言葉にお母様も同意する。こんなに協力的で良いのかな。
「良いんですか? そんなものは商品にはならないんじゃ……」
「別に売らないものを作っちゃいけないわけじゃない。殿下の目に留まらないようにするためと考えれば安いものじゃないか」
「えぇ、大事なことです。我が家で一番価値のあるものはレティシアですからね」
もう親馬鹿はスルーしよう……。
それでも殿下との婚約回避に協力してくれるのは心強い。
「レティシアは毎日の化粧でどれくらい時間がかかっていたんだい?」
「最近はほぼ完成形に近づいていたので一時間くらい?」
「いいえ、レティシア様。一時間半です。二時間かかることもあります」
すかさずリネットが訂正してきた。お父様もお母様も驚いている。
あれ? メイクってそれなりに時間をかけるものじゃないの?
「そんなにかかっているのか?」
「毎朝? ちゃんと眠れているの?」
「お化粧しているように見えないように細心の注意を払っていましたから……」
「わたしは特に睡眠不足は感じていないので大丈夫ですよ?」
お父様もお母様も驚いているが、わたしは元々睡眠時間が少なくても平気なのだ。アイドル業と学業で忙しかったし……。むしろ、今はゆったりしすぎて睡眠時間は多いし時間に余裕があって不安になるくらい。成長には悪いかもしれないけど。
今のわたしには学校も仕事も無いので拘束時間がない。病み上がりだからと勉強の量も減らされていたし、今もそんなに多いとは思わない。大丈夫だとアピールをしたのだけど……。
「何を言っているの。気持ちは十八歳になっているかもしれないけれど貴女はまだ七歳なのよ。成長に影響があっては大変だわ」
駄目だったらしい。しっかり寝ているつもりなんだけどなぁ。
けれど、余計なことを言い返す必要はない。お母様を怒らせると大変なことになる。
「睡眠時間はしっかり取るようにします……」
「まぁ、睡眠時間を取るためにも化粧の時間短縮は必要だろう? どういったところに時間がかかっているんだ?」
お父様がさりげなくお母様の意識をそらしてくれた。お父様さすがです。
「そうですねぇ。シミの大きさや色にかなり気を遣っていました。前より小さくなってはいけませんし、大きくなりすぎてもいけません。毎日同じ色になるようにしないといけないので大変です」
普段、わたしのメイクや世話をしてくれているリネットが代わりに答えてくれる。
「シミか……。シミを再現したシートを顔に貼るのはどうだ?」
「そんな便利なものがあるんですか?」
さすがWeb小説の世界。便利なものがあるのね。そんなに便利なものがあるなら最初から使いたかった。
まぁ、お父様たちに内緒で入手するのは難しかったかもしれないけど……。




