2-15.
お父様もお母様もわたしのことを受け入れてくれた。リネットも側で涙ぐんでいる。リネットも喜んでくれているようだ。感謝しかない。
「さて、落ち着いたところで今後のことを話し合おう」
「??」
「殿下との婚約を回避するんだろう? 殿下の目に留まらないようにするために不美人になるという手は悪くないと思う。殿下はかなりの面食いだからね」
殿下とわたしは同い年。つまり七歳だ。七歳にしてすでに面食いと言われている王子様ってどうなんだろう……。普通は顔だけで選ぶと後悔すると思うし、この国の行く末が心配になる。
Web小説ではロベルト殿下とレティシアは八歳で婚約している。本当なら七歳のお茶会で見初められて、八歳のお茶会で心を決めるらしい。七歳のお茶会はパスしたけれど、婚約が決まるのが八歳ならまだ回避できたとは言えない。
レティシアと殿下が婚約後どういった交流をしていたのかはWeb小説ではレティシアの視点が無かったからわからない。
婚約破棄したくてわざとヒロインに嫌がらせしていた可能性も無いわけではないけど……。可能性は低いかなぁ。
このWeb小説はヒロインは転生者ではないけれど、乙女ゲームがモチーフなので攻略対象のルートの話があって、最後に大団円になるらしい。好きなキャラの話だけを読むのもよし、皆で幸せになるルートまで見届けてもよし、といったWeb小説だった。
大団円の完結まで見届けられなかったので結末はわからない。けれど、どのルートの話もレティシアは婚約破棄されるし、破滅する。
そもそも、乙女ゲームがモチーフなのにヒーローに婚約者がいるのがね……。
基本的に乙女ゲームに出てくる攻略対象には彼女や元カノ、婚約者などはあまり出てこない。たとえ、過去の女であってもその存在は大きな地雷だ。
だけど、Web小説の世界にでてくる乙女ゲームには婚約者がいて、だいたいが悪役令嬢だ。幼い頃からの婚約者なのに、ポッと出のヒロインに奪われそうになればそりゃあ妨害工作の一つもするでしょうよ。
まぁ、悪役令嬢がいないと物語が進まないものね……。わたしはWeb小説も好きだからそれでも良かったんだけど、実際に自分が悪役令嬢の役を当てられると困ってしまう。
Web小説によくある、「悪役令嬢に転生しちゃったら……」って話は破滅フラグを全力で回避するものになるのもわかる。わたしも回避したい。
皆で仲良くやるなら悪役令嬢役も混ぜて欲しいと思うことは悪いことかな。友達になるルートがあっても良いと思うんだよね。
「レティシア? どうしたんだい? 体調が悪いのか?」
いけない。すっかり自分の世界に入ってしまっていた。
「ごめんなさい。大丈夫です。ちょっと殿下のことを考えていて……」
「殿下のことを? まさか、やっぱり殿下の婚約者になりたいと……」
「違います。それは断固お断りです。ただ、この歳で臣下の者に面食いって言われているのってどうなんだろうと思って……。この国の行く末が心配です」
わたしがお父様の発言を否定して本音をポロリと言うと、お父様は吹き出してしまった。お母様も笑いをこらえている。
「……レティシア。それは言っちゃ駄目だろう。七歳に国の行く末を心配される殿下……。いや、笑ってはいけないのだが、全くその通りで……」
お父様はぷるぷるしている。
お父様、普通に笑いをこらえられてませんよ。普通に笑っちゃってますから。
「わたしは七歳ですけど、夢の中では十八歳まで生きていましたよ? 夢の中の世界では人の容姿で憧れの対象を作ることはあっても、顔だけで結婚相手を選ぶような人はいませんでした。ごくまれにいるかもしれませんが結婚は生活ですし、責任が生じますからね。国のトップになる人であれば、なおさらお相手は慎重に選ぶべきです。離婚なんて簡単なことではないでしょう?」
「すっかり大人な発言だな。だが、レティシアの言うとおりだ。結婚相手は顔で選ぶものではない。リーシアは顔も素晴らしいがな」
「まぁ、あなたったら……」
二人は自分たちの世界を作り始めた。
お父様、唐突にいちゃつき始めるのはやめてください……。




