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2-14.

 わたしはお父様とお母様に向かって前世のことを話し始めた。リネットに話したように夢の中の話として……。

 前世といっても受け入れにくいかもしれない。Web小説の世界に飛んでいたなんてなおさら理解されないだろうから。本当はこちらの方が夢の中の世界のだと思う。


「……変な話だと思ったら笑ってね」

「笑わないから安心して話してごらん」

「わたし、一ヶ月眠っている間に長い夢を見ていたの。こことは全く別の世界で、別の人の人生を生きていたわ。マスカラやお化粧の技術はそこの世界での知識なの」

「どんな人生だったんだい?」

「小さい頃は割と裕福な家だった。小学生……十歳の時に家が傾いてしまったけれど家族仲は良かった。あちらの世界でも学校があってね。わたしは結構成績も優秀だったのよ。そして、十四歳の時にスカウトされてアイドルになったの」

「アイドル?」

「アイドルは舞台の上で歌ったり踊ったりしてお客様に夢を与える仕事なの。わたしはこのアイドルに誇りを持っていたわ。人気アイドルだったのよ。十八歳で学校を卒業してさらに上の学校に行くことが決まっていたの。勉強もすごく頑張った。アイドル業の方は学校を卒業する記念に大きな会場でコンサートをすることが決まっていたの」

「それはすごいわね」

「そうなの。アイドルの中でも限られた人しかできないのよ。その会場でコンサートするのはアイドルを始めた時からのわたしの目標だった。目標が叶うと思っていたんだけど、コンサートの準備中に頭を強く打って眠ってしまって……多分、死んでしまったんだと思う……」


 わたしは思わず言葉に詰まってしまった。お父様もお母様も気遣わしげな顔をしている。


「夢の中でも頭を打ってしまうなんて……。十八歳なんて若すぎるわ……」

「夢の中で意識が途切れて、気がついたら目が覚めていたの。すごく長い夢だった。すごく長い夢だったけれど、目標を達成できなかった……。コンサートにはわたしのやりたいことをいっぱい詰め込んだの。衣装だってすごくこだわったし、作曲や作詞にもチャレンジしたわ。もちろんプロの手は借りたけど……。曲順や演出もたくさん皆で話し合った。それなのに……」


 お父様もお母様もわたしの話を静かに聞いてくれている。気がつけばアイドルのことまで話してしまっていた。それなのにわたしを見つめるお父様とお母様の目は変わらない。


「目が覚めた時、夢の世界でのことも鮮明に覚えていて、とても混乱してしまったの。わたし、変だったよね。今もだと思うけど……。七歳の自分と十八歳の自分がいるの」

「貴重な経験をしたんだな」

「そうね。夢で別の世界での知識や経験を授かれるなんてすごいわ」

「気味が悪くない? おかしいと思わない?」

「どうしてそんな風に思うの? レティシアはわたくしたちの大切な娘よ。眠ってしまう前と確かに少し変わったかもしれないけれど、新しい知識や経験があるのなら当然だわ。成長したんだもの。十八歳になったあなたもきっと素敵だったのね。寝ている間にも成長するんなんてさすがわたくしたちの娘」

「レティシアが思うほどそんなに変わっていないよ。可愛くて賢くて、頑張り屋の娘だ。夢の中のレティシアもきっと可愛かったんだろう」

「お父様……お母様……」


 お母様はわたしを優しく抱きしめてくれる。温かい。


「目が覚めてくれて本当に良かった……」

「十八歳までの夢を見ていたのならなかなか起きないのも納得だな。夢と言えど向こうのご両親のことを思うと複雑だが、帰ってきてくれて良かった」

「夢の中でやり残したことはあるかもしれない。けれど、せっかく目が覚めたのだから貴女のやりたいことに挑戦すればいいわ。アイドルがどういったものなのかはよくわからないけれど、お化粧品の開発、やりたいんでしょう? 全力で応援するわ」

「もちろんわたしも応援するぞ。これからは遠慮しないで相談しなさい」


 わたしは夢の話として話したのにお父様は前世のわたしの両親のことも気遣ってくれる。お父様もお母様もわたしのやりたいことを応援してくれる。

 わたし、この二人の娘で本当に良かった。


「わたし、お父様とお母様の娘で良かったです。ずっとわたしのお父様とお母様でいてください」

「もちろんよ。ずっとこの家にいてね。お嫁になんてださないわ」

「あぁ。相手が殿下であろとなかろうと嫁にはださん」


 わたしたちは三人で抱き合った。


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