2-11.
わたしは家にいたいと一生懸命プレゼンした。
これで納得してもらえたかしら? わたしは二人の反応を見る。
「……それはそうかもしれない」
「そんなことを考えていたのね……」
うん。わかってもらえたようだ。
「話はわかった。で、どうしてわたしたちを騙すようなことをしたんだ? リネットには協力してもらっていたんだろう?」
あ、やっぱりそこを突っ込まれるか……。そうだよね。
「正直なことを言うと、そこまで深く考えていなかったのです。これ以上、心配をかけたくなかったし、反対されてしまうかもしれないと思って……」
「驚きはしたが、婚約したくないレティシアに無理強いをすることはないよ?」
「でも、王族から言われると断れないでしょう?」
「まぁ、それはそうだが……」
「なので、穏便に婚約回避するために殿下の好みから外れようと考えました」
平和的に解決する方法だよね?
「はぁ……。まさか自分で顔を変えていたとは……。穏便とは何なのだろうな……」
「こんなことを考えるなんて……」
お父様もお母様も納得はしてもいろいろと複雑なようだ。
穏便に婚約を回避する良いアイディアだと思ったのに。
「以前とは微妙に違う顔になっていきているとは思ったが、どんな顔でもレティシアだと思っていたからなぁ」
「えぇ。顔はちょっと違うけれどちゃんとレティシアなの。気がつかなかったわ。お化粧で不美人にしようだなんて思わないもの」
「上手く化けていたものだ」
リネットと研究に費やした努力は無駄じゃなかったみたい。
「リネットと研究しましたから! リネットはすごいでしょう?」
「すごいのはレティシア様ですから」
「でも、リネットがいなければ実現できなかったわ」
わたしは得意げに自慢した。この顔はわたしとリネットの力作なのだ。
「そんなことを威張るんじゃない」
「そうですよ。こんな馬鹿げたことをしたことは怒っていますからね」
「そうだぞ。なんで相談してくれなかったんだ。親としては淋しいぞ」
「それは……」
「ほかに何か言うことがあるなら話してしまいなさい」
アイドルになりたいことを言っちゃう? まだ早いような気もする。まだリネットにも話していないし、反応が怖い。
でも、メイク関係の開発は言った方が良いかもしれない。お父様たちに協力してもらわなければ絶対に実現できないのだから。
「わたし、お化粧品の企画や開発をしたいの」
「化粧品? どうしてまた……」
「リネットとお化粧の研究をしていて思ったの。もっと良い物ができるはずだって。色も種類も少ない。道具だってもっと便利なものが欲しいわ」
「そんなに必要かしら。今のままでもそんなに困ってはいないと思うわ」
「そんなことないわ。マスカラもアイラッシュカーラーもないんだもの。アイメイクの必須アイテムなのに」
「マスカラ? アイラッシュカーラー?」
わたしは興奮してつい、あちらでの世界の単語を使ってしまった。お母様が明らかに戸惑っている。どうしようか悩んでいるわたしにリネットが助け船を出してくれた。
「レティシア様、聞き慣れない単語を出しては奥様たちが戸惑ってしまいます。実際にみていただくのが良いのではないでしょうか?」
リネットはマスカラもどきをお母様たちの前に差し出した。
「こちらをご覧ください。これがレティシア様が作られたマスカラというものです」
お母様は差し出されたマスカラもどきをまじまじと見ている。
「これをレティシアが考えたの?」
「はい。そうです。しかも、レティシア様はお化粧の技術も素晴らしいものをお持ちでした」
あれ、内緒にしようって言ってなかったっけ?
「この黒いクリーム? は何に使うのかしら。全くわからないわ……。リネットはわかるの?」
「わたしもレティシア様に言われるまで知りませんでした。こんなものを顔に使うなんて信じられなかったくらいです。ですから、レティシア様に実際に使う様子を見ていただくのが早いと思いました。レティシア様の変貌に本当に驚きます」
「そんなに変わるの?」
「はい。それは素晴らしいものでした。初めてお化粧するレティシア様の技術に、わたしは自信を失ったほどです。レティシア様。お化粧した姿を旦那様と奥様にお見せになってください」
あぁ、そういうことね。確かに見てもらった方が早い。どうしてわたしがメイク道具を開発したいのかわかってくれるだろう。でもリネット、あまりハードルは上げないでほしいな……。




