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2-10.

 どうやってこの場を切り抜けよう。


「どういうことなの? レティシア」

「申し訳ありません、奥様。先にレティシア様のお召し替えをしてもよろしいでしょうか? このままでは風邪をひいてしまいます」

「それもそうね。風邪をひいてはいけないから体を温めてきなさい」

「では、わたしたちはお先に失礼いたします」


 どうしよう。顔を作っていたことがあっさりばれてしまった。


「ごめんなさい。リネット。顔をつくっていたことがばれてしまったわ」

「いいえ。わたしの方こそ申し訳ありません。わたしがタオルでこすらなければ……」

「湖に落ちたわたしが悪いのよ。濡れた時点でお化粧は崩れたと思う。リネットは塗れたわたしを拭こうとしてくれただけだわ」

「レティシア様……。とにかくまずは濡れた服を脱ぎましょう。お湯は先に準備してもらっているのですぐに温まれるようになります」

「ありがとう」

「まずは体を温めましょう。旦那様たちへの説明を考えるのは後回しです」


 リネットはそういってわたしをお風呂に連れて行ってくれる。わたしは冷えた体を温めることができたが、これからのことで頭がいっぱいだった。

 どうやって説明すれば良いのか……。


 ***


 テーブルの上にはお茶が並び、目の前にはちょっと怖い顔をしたお父様とお母様。リネットの顔も暗い。

 これはお説教かな……。

 どう切り出そうか考えていると、お父様の方からわたしに理由を尋ねてきた。


「さぁ、レティシア。どういうことなのか説明してくれるかな。先ほどまでの顔とずいぶん違う理由を」

「えっと……。なんと説明すれば良いのか……。化粧で顔を変えていました」

「そのようだね。私たちはどうしてそんな馬鹿げたことをしていたのかを聞いているんだ」

「…………」

「言えないのかい? わざわざ可愛い顔を隠す必要なんてないだろう? レティシアが言わないならリネットから聞くことになるよ。リネットは今回のことを知っているようだからね」


 黙っていればリネットが怒られてしまう。正直に話すしかない。


「……隠す必要があったのです。リネットはわたしに言われて協力してくれていただけです。責めないでください」

「レティシアに言われればリネットも拒否できないだろう。理由によっては責めるつもりはないよ。どうして隠す必要があったんだい?」

「殿下の……ロベルト殿下の婚約者になりたくなかったのです」

「どうしてだい? 前は婚約者になりたがっていただろう?」

「気がついたんです。顔で選ばれても良いことなんてないって」

「レティシアは顔だけではないだろうに……」


 お父様もリネットと同じことを言う。


「お互いのこともろくに知らずに、顔が好みという理由で選ばれてしまえば性格があわないこともあります。数年後にもっといい人が現れたからと婚約破棄されるかもしれません」

「レティシア以上の令嬢などそうそう現れないだろう?」


 またリネットと同じ反応……。親の欲目ってすごい。


「それはお父様の目でみた令嬢でしょう? 殿下にとってよりよい令嬢が現れるかもしれません……」

「……それだけかい?」

「……一番の理由は、この家から出たくなかったからです」

「家から出たくない?」

「王族と結婚すればお父様やお母様と気軽に会うことはできなくなってしまいます。わたしはお父様やお母様、屋敷の人たちと離れたくありません。婚約者になるだけでもいろいろと不自由があると思います」

「レティシア……」

「わたし、目が覚めるかわからなかったんですよね? 目が覚めて思いました。家族と離れたくないって。またいつ離れてもおかしくないかもしれない。だったら、ずっと一緒にいられるようにしたいって」


 お母様は涙ぐんでいる。お父様も心なしか目が潤んでいるようにみえる。

 わたしはダメ押しする。


「もし、わたしが王妃になり子供ができてもお父様やお母様は自分の孫として気軽に会えなくなってしまいます。だったらわたしが婿をとって、この家で皆で暮らせば良いと思いませんか?」


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