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2-9.

 わたしはリネットと二人三脚で顔を変えていった。変化は少しずつ。それでも顔は変わっていく。メイクだとばれないようにナチュラルな仕上がりを心がけているおかげか、誰にも気がつかれていない。少しずつ不美人に近づいている。

 今はそばかすが増えて、鼻も低く見えるようになっている。順調だ。



 そこからさらに時間経過し、わたしの顔はさらに不美人になっていた。目もしょぼくなっている。完成形は近い。


「最近のレティシアお嬢様、顔が変わった気がしない?」

「前はもっと美人だったわよね」

「成長で顔が変わったということ?」

「成長すればもっと美人になると思っていたのだけど……」

「あの事故の影響もあるのかしら」

「頭を打っただけよ?」

「でも、別人のようになられたわ」

「とにかくなんてお可哀想なのかしら」

「えぇ、本当に。でも、無事目覚めてくれたのよ。それだけでも神様に感謝だわ」


 屋敷の中ではそんな声は聞こえてきていた。上手くいっている証拠ね。わたしとリネットは二人で喜んでいた。

 あまりに上手く行き過ぎてわたしたちは油断していたのかもしれない。


「ねぇ、レティシア。今度、家族で旅行に行かない? といっても別荘だけど。お父様にまとまったお休みが取れそうなの。貴女もだいぶ体力が回復したでしょう? 少しくらい遠出してもいいと思うの」

「別荘にですか? 行きたいです」

「ならよかったわ。ではそのつもりで準備をしておいてね」


 別荘かぁ。すごく久しぶり。それにわたしがこの世界にきて初めての外出。

 楽しみだわ。リネットと準備しなくちゃ。



 ***


 そうこうしているうちにわたしたちは別荘にやってきた。空気が良い。お父様とゆっくり過ごせる機会は少ないのですごく嬉しい。

 今日はお父様が湖に連れて行ってくれる。


「レティシア、ボートにでも乗るかい?」

「良いの?」


 前世でも手漕ぎボートには乗ったことがない。興味がある。わたしはお父様の提案に飛びついてしまった。


 湖の上は気持ちいい。ゆらゆらと揺れて楽しいし風が心地良い。多少揺れてもお父様が漕いでくれるので安心できる。わたしはお父様とゆったりとした穏やかな時間を過ごしていた。


「お父様、湖の上は涼しくて気持ちいいですね」

「そうだね。レティシアが喜んでくれて嬉しいよ。でもそろそろ戻ろうか。体が冷えてはいけないからね」

「わたしは大丈夫ですよ?」

「でも、お母様が淋しいだろう?」

「たしかにわたしたちだけ楽しんでいては悪いですね。戻ります」

「よし、では戻るよ」


 あっという間にボートは着岸した。お父様は先に降りて、わたしに手を差し伸べてくれる。わたしもその手を取り、降りようとした。降りようとしたけれど、うっかり足を滑られせてしまった。

 あっ、やばい。落ちる。

 そして、足を滑らせたわたしは湖に落ちた……。

 バシャンッ。大きな水音がした。

 やってしまった。うぅ、冷たい。


「レティシア様!」

「レティシア!」


 リネットやお母様の悲鳴が聞こえる。湖に落ちたわたしはもちろんずぶ濡れだ。リネットはタオルを持って駆け寄ってくる。


「レティシア様、大丈夫ですか? 早く体を拭きましょう」


 リネットはわたしを一生懸命拭いてくれた。わたしたちは気が動転して忘れていたのだ。顔を濡らしてはいけないことを、こすってはいけないことを……。


「レティシア、その顔は……」

「顔が……」


 周囲の人が驚いた顔でわたしを見ている。どうかしたのかと思いリネットの方をみた。リネットの持っているタオルは汚れている。もしかして……。

 リネットも気がついたようだ。


 リネットがタオルで顔を拭いてくれたのでタオルにメイクが移ってしまった。ということは、元の顔がさらされてしまっている。そう。メイクが落ちてしまっていたのだ。

 今のわたしの顔は大変なことになっているはず。鏡を見るのが怖い。


「レティシア、顔が変わっているわ」

「レティシア、これは一体どういうことなんだい?」


 完全に失敗した。わたしたちは完全に油断していた。せっかくこれまで頑張ってきたのにこんなことでばれてしまったのだ。


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