2-8.
リネットは変わらずわたしに良くしてくれている。というかむしろより積極的にわたしの世話をしてくれている。このままじゃ駄目人間になりそう……。
パッチテストも何事もなく無事に終わった。濡らさないように、なるべく触らないようにするのは結構大変だったけど……。それでも、スムーズに終わったのはリネットのおかげだ。
特に問題になりそうなものはなさそうで一安心。
パッチテストと平行してわたしたちはぶさいくになるための条件をメイクで実現しようとしていた。パッチテストが終わって安全が確認されたものから使っていく。
「レティシア様、ここにこの色はいかがですか?」
「もうちょっと薄い方が自然じゃない?」
「でしたらここを……」
リネットもノリノリで提案してくれる。結構楽しい。
……わたしたちはだんだんと深みにはまってしまったようだ。感覚が麻痺していくのだろう。冷静にって鏡を見てみると、そこにはゾンビのような化け物がいた。
「ねぇ、これってやりすぎじゃないかしら?」
「……そうですね」
「これじゃあぶさいくと言うより化け物よね」
「えぇ。これはさすがにこれは許容できません。レティシア様の評判に大きな問題が生じます。悪魔か化け物に取り憑かれたのかと言われてしまいそうです。これでは旦那様も奥様も悲しみます。なにより、わたしが耐えられません……」
「いったん仕切り直しましょう」
「……そうですね」
ノリノリでやっていたのに、我に返ると許せない仕上がりだったらしい。うん。わたしもおかしくなっていたと思う。止める人間がいないと駄目ね。
そうやってメイクの研究をしながら毎日を過ごしていった。毎日がかなり充実している。いろいろと失敗したけれど、少しずつ完成に近づいていった。
「ねぇ、これ良い感じじゃない?」
「そうですね。きちんとレティシア様を残しつつ、美人とは言えない感じに仕上がっています! これなら殿下もレティシア様に興味を示さないと思います」
「じゃあ、これがゴールね。どれくらいの時間をかければ自然かしら?」
「時間をかける?」
「いくらわたしらしさが残っているとはいえ、急にこの顔になっては不自然でしょう? 少しずつ成長に合わせてぶさいくになってしまった……という風にしたいの」
「……あっ、確かにそうですね。ゆっくりと顔を変えていきましょう」
「では、この顔になるための計画を作らないと。リネットもその方がやりやすいでしょう?」
「その方が助かります。少しずつ顔を変えていくとなると日によって前の状態に戻ってしまうかもしれませんし」
「じゃあ、決まりね!」
わたしたちは出来上がった顔をどのくらいの時間をかけて、どのように変えていくかを考え始めた。計画はバッチリだ。これ通りに進めていけばきっと自然に顔を変えられるだろう。
「では、この計画に沿って顔を作っていきますね」
「大変だと思うけどよろしくね」
「お任せください! 旦那様や奥様をだますことになるのは心苦しいですが、レティシア様の幸せのためです。頑張りますね」
これで、明日から徐々に顔を変えていく準備が整った。まずは計画の第一段階が完了よ。
少しずつ顔を変えて、ロベルト殿下に気に入られないようにする。お父様とお母様は殿下の婚約者になって欲しいのかもしれない。
でも、婚約者になってしまったら婚約破棄するのも大変だもの。婚約したらこちらから婚約破棄しなくても、向こうから破棄されてしまうけど……。そうなったら傷物令嬢だ。家にも迷惑をかけてしまう。
そもそも余計なことに時間を取られたくない。アイドルになるのも難しくなる。
来年のお茶会まで気を抜けないわ。




