2-7.
リネットが今のわたしを普通に何でも受け入れてくれるから、ついやりすぎちゃったかもしれない。どうしよう……。
あまり嘘はつきたくない。わたしにはレティシアの記憶はあるけど、別の記憶があると言ったらリネットはわたしのことを嫌いになってしまうだろうか。しかも、今は別人の記憶や感情の方が強い。レティシアだけど別人だ。
本当のことを言う? ごまかす?
ううん。ごまかし続けるのは難しい。
「あのね、リネット。驚かないで聞いて欲しいんだけど……」
「はい、なんでしょうか」
リネットにはわたしを否定する感じはない。優しくわたしの話を聞こうとしてくれている。
「わたし、一ヶ月ほど眠っていたじゃない? そのときに長い夢をみたの」
「夢ですか?」
「うん。とても長い夢で、不思議な夢なの。こことは全く別の世界で別のわたしで……。そこの世界でも頭を強く打って眠ってしまったみたいで、気がついたらベッドの上で目を覚ましたわ。わたしは別の人間として生活していて夢の中でいろんな知識と経験をもらったの。だから、マスカラとか変わったもののことを知っているの。ちょっと気味が悪いよね……」
「夢の中で新しい知識や経験をもらったのなら良かったではないですか。一ヶ月眠っていたのが無駄にならなかったんですよ」
「そ、そう?」
「そうですよ。それにレティシア様、心配しないでください。確かに、眠る前と比べると変わったところがあるかもしれませんが、ちゃんとレティシア様はレティシア様です。わたしはもちろん、旦那様や奥様もレティシア様が目覚めてくれただけで本当に嬉しかったんです。多少の違和感はあったとしても何も問題ありません」
そんなものだろうか。我ながらWeb小説によくあるような言い訳になっていて納得できないような気がするのだけど……。でも、レティシアらしからぬ言動をしていたはずなのにこれまでと変わらない対応をしてくれている。マスカラやパッチテストも普通に受け入れてくれた。
「やっぱり、わたし、変わっちゃった?」
「人間、生きていれば変わるものですよ。でなければ成長できません。レティシア様の場合、夢で知識や経験を得たのであれば変わって当然です。成長なさったのですよ」
「そう言ってくれるなら嬉しいのだけど……」
「旦那様も奥様もレティシア様の変化には気づいていらっしゃいますよ。でも何も仰らないでしょう? 本当に眠っている間に成長してしまった、という感じなんです。レティシア様はなにか遠慮なさって少し距離をお取りになっていましたよね。旦那様も奥様も気を遣われて様子を見ていらっしゃるんですよ」
あぁ……だから、わたしがやりたいことを言ってくれて嬉しいって言ってくれたんだ……。
「ばれてたんだ……。やっぱり前の自分とはちょっと違うから……」
「わたしたちはレティシア様が産まれたときからずっとみているんですよ。拒絶なんかしません。せっかく新しい知識や経験を得たんですもの。それを生かして商品の企画や開発をすれば良いんですよ。わたしも微力ながらお手伝いしますから」
「リネット……。ありがとう」
一ヶ月ぶりに目が覚めたと思ったら以前には言わなかったようなことを言ったり、変なことを始める。普通なら気味が悪いと思うだろう。けれど、わたしの変化を成長だと言ってくれる。わたしにはそれがとても嬉しかった。




