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自分でやるときっともっと良くなると思う。
「自分でやってみてもいいかな?」
「ご自分でですか? こういったことはわたしどもにお任せいただくものですが……。お気に召しませんでしたか? レティシア様はとてもかわいらしいですよ?」
確かに鏡の中のわたしは可愛く仕上がっている。けれど、まだ向上の余地があるのだ。わたしもアイテムがそろっていないこの状況でどれだけできるのか試してみたい。
「気に入らなかったわけじゃないわ。やってみたいの。駄目?」
わたしはリネットにおねだりする。もちろん、なるべくおねだりをきいてもらえそうにだ。リネットをじっと見つめる。リネットは少し困った様子だ。
あっ、陥落したぽい。
「……奥様たちには内緒ですからね?」
「もちろん! ありがとう、リネット。大好きよ!」
「では、一度お化粧を落としましょう」
そう言ってリネットは丁寧にわたしのメイクを落としてくれた。とりあえず普通に可愛く見えるようにメイクしてみよう。あっ、でもマスカラがない。
「ねぇ、マスカラってある?」
「マスカラとはなんでしょうか?」
「まつげを多く見せたり、長く見せたりするものよ」
「申し訳ありません。そういったものには心当たりがありません……」
「そっかぁ」
マスカラはないのかぁ。……待って。聞いたことあるわ。マスカラって元々はワセリンに木炭粉を混ぜたものが始まりって。だったら自分で作ってみれば良いんじゃない?
「ねぇ、ワセリンか軟膏と木炭の粉って用意できる? 少しでいいのだけど」
「えぇ、用意できると思いますが……。何に使うのですか?」
「もちろんお化粧によ。用意できるなら持ってきてもらえる? それとも今すぐは難しい?」
「難しくはありませんが……。わかりました。少々お待ちください」
しばらくするとリネットは要望通り、ワセリン?と木炭の粉を持ってきてくれた。準備が良いことに混ぜるためのへらまで持ってきてくれている。
この世界にもワセリンってあるんだね。
「ありがとう。へらまで持ってきてくれるなんてさすがね、リネット」
リネットは少し得意げに「レティシア様のお望みはわたしが叶えますから」と言ってくれた。リネット、本当に可愛いんだけど!
「それで、これをどうなさるのですか? へらを持ってきて正解だったみたいですが……」
「二つを混ぜるのよ」
わたしは容器からほんの少しだけワセリンを取り出した。どのくらい混ぜれば良いのかはわからない。少しずつ試していくしかないよね。そう思って木炭の粉を手に取ろうとすると……。
「お待ちください。手が汚れてしまいます。わたしがやりますからどうすればいいか仰ってください」
リネットに強く止められてしまった……。当然といえば当然か。
「じゃあ、お願いします。このワセリンに少しずつ木炭の粉を混ぜて欲しいの。真っ黒になるまで」
「かしこまりました。やってみますので良さそうな塩梅になりましたら教えてくださいね」
そう言ってリネットはどこからか取り出した手袋をはめて作業を始めた。手袋をはめるならわたしがやってもよかったんじゃないかと一瞬思ったけどそういう問題ではなさそうだ。絶対に怒られると思ったのでわたしはおとなしく待つことする。
少しずつ粉を入れるとワセリンがどんどん真っ黒に近くなっていった。
「そろそろいかがでしょうか?」
「そうね。そろそろ良いかもしれないわ。ありがとう」
「もしかして、これをまつげに?」
「そのつもりよ。小さくて目の細かい櫛があるといいのだけど……」
「それでしたらこちらはどうでしょうか?」
さっと出てきた。すごいよ、リネット……。
「では、お化粧をしてみます。リネットは見ててね」
わたしは前世での感覚を思い出しながら自分にメイクを始めた。まだ七歳だから派手にならない方が良いだろう。良いところを伸ばして、ちょっとマイナスなところは隠せるように……。顔色は良くなるように……。この辺は影をつけた方がいいわね。あぁ、久しぶりの感覚。楽しい。やっぱり可愛くなるって最高だわ。
……うん。なかなか良い感じじゃないかしら。
「ねぇ、リネット。どうかしら?」
「…………」
リネットは黙ってしまって反応が無い。黙られると不安になる。メイクには自信があったのに……。わたしのメイク、この世界では浮いちゃうの?




