母子登校生徒の兄弟姉妹
「もう学校行かない…。」
消沈した面持ちで帰宅した次女が涙と共にこぼした言葉。
(あぁ、落選してしまったのね。)
その日は学校で合唱のピアノ伴奏のオーディションがあった日だった。過去に一度ピアノオーディションで落選してしまったときも、それはそれは大変落ち込んだ次女。私の胸の中でたくさん泣いて、先生から励ましのお言葉をいただいて、ちゃっかりパパに「頑張ったご褒美にゲーム買って!!」とおねだりして、ようやく立ち直った昨年よりも、ニ度目の落選となってしまった今回の方が落ち込みかたがひどい。
「いいよ、休みな。疲れちゃったんだよね。」
休んではいけないという罪悪感と、行きたくないという素直な気持ちに結論が出ず悩んでいた次女に、休んでいいよと伝えたらいくらかほっとしたようで、しっかり宿題はやりつつゲームで気晴らしを始めた。
相変わらず母子登校中の長女も次女の気持ちを慮ったようで、笑いを取ったり一人でピアノ教室に行ったり長女なりの気遣いを見せた。大変珍しい。(ピアノ教室には、いつもは長女と次女二人で行っている。)
「さーが連絡帳届けてあげるね」
お休みの連絡は連絡帳に書いて先生に届けることになっている。三女さーも次女を心配して声をかけている。
ここで1つ問題が発生。
「ちー、明日は一人で中学校に行ける?」
「無理!」
「だってあーが家で一人になっちゃう。」
「でも無理!」
「じゃあちーも休む?」
「やだ行く!」
長女ちーのわがままが炸裂!次女あーも不安が強い子で、長時間の『一人でお留守番』がまだできない。ただ、次女あーは向上心もある子なので、少しの時間なら『一人でお留守番』をしてみたいようだった。
そこでなんとかパパに外出する時間を遅らせてもらい、長女には「三時間目までなら学校に行ってあげる」と伝え、パパと私がいない時間が1時間だけになるようにして、1時間だけ次女が『一人でお留守番』することになった。
次女が学校を休んだ日、
「宅配便が来てびっくりした!」
「クモが出たから隣の部屋に避難した!」
初めての『一人でお留守番』がなかなか面白かったようで、次女の表情が明るくてほっとした。でもまだ次の日は登校するのか休むのか決めかねている様子だった。
「明日も休んでも遅刻してもいいよ。」
「うーん…」
今日もここで問題が発生。
「さーだけ一人でがんばらなきゃいけないの…?」
三女さーも「あーちゃんは仕方ないけど、ちーばっかりママといてズルい。」と泣き出した。ママも泣きたい。
「さーちゃんも明日は休む?」と聞くと「休みたいんじゃない」と言われて途方にくれる。
すると次女あーが「5、6時間目の図工だけ行く。」と少し前向きになった。
次の日、半泣きで朝から普通に登校したさー、いつものように母子登校で3時間目まで出席のちー、パパが家で仕事なため、午前中はパパとお留守番して午後から登校のあー。みんな何とか自分なりに頑張ってくれた。
その次の日からは次女あーも普通に登校できるようになり、日常が戻ってきた。
今までもたびたび「ちーばっかり休んだりママがいてズルい!!」問題は経験してきた。
そりゃ妹達からすれば、「ちーは休んでいいけど、あなた達は学校に行かなきゃダメだよ」なんて納得できるわけがない。
まして妹達も傷付きやすいHSC 。長女のことがなくても、妹達もいつ不登校になってもおかしくない繊細な子達だ。
だから妹達が精神的に傷付いて学校を休みたくなったら、私は休ませてしまう。先生には心配をおかけして申し訳ないが、これも未熟な子ども達の心を守る1つの方法だと思う。絶対的な正解とは思っていないが。
不登校の子どもにようやく大人の目が向いた昨今、その兄弟姉妹の心まではまだあまりクローズアップされていない。彼らの心にも助けが届いて欲しい。