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≪1≫
――茜家は京都の外れにある集落を統べる、地元ではそれは有名な由緒正しき血筋の家系だ。製薬会社を生業とし、その薬は万能で効き目が早いと大衆に重宝されてきた。
しかし、茜家は殊更表舞台に現れることはなく、それはそれはひっそりとまるで人目を憚るかの如く、静かに過ごしてきた。
『茜家には、何か秘密がある』
そう声高に言い放ち茜家を探っていた記者が、とある日忽然と姿を消したそうだ。
……人知れず、ひっそりと、居なくなったのだ。
誰かは、言う。
『茜家なんかに、関わるからよ』
その声は、どこか哀愁に満ちており、語り部はただひたすらに、虚ろな瞳を背けるのだった。