女神様の説明
「まずは私から自己紹介させていただきますね。
私は皆さんの認識でいう≪創造神≫といったものの仮の姿となります。
私は本来、カタチとしては存在せず概念として世界を作り続けている
いわゆるシステムのようなものです。
ですから、作った世界に介入することも、
人や生命体に影響を与えたりすることもできません。」
「作ったら作りっぱなし?ちょっと無責任な気もするけど、
まぁ神の介入があったら、世の中もっとましになってるか・・・そうだよな」
言われてみれば納得できるような、矛盾しているような・・・
だが、世の中にあふれている理不尽を75年も見続けていると、
細かいことはあまり気にならなくなる・・・
「そうです。細かい設定に綻びがあっても、ご都合主義満載でも、
受け流してそれも一つの作品だと思って楽しむことが重要なんです!!」
「いったい何の話っ!?」
「失礼。作り手の気持ちを代弁してしまいました。」
「システムなのに感情があるのね・・・」
「感情と呼べるか分かりませんが、世界を構築する上で分析、反省、成長といった
要素はシステムに組み込まれているために、分析のデータから想像はできます。
あなたと違和感なくお話できるのもそういった分析の結果です。」
「AIに近いってことね」
「そう思っていただいてかまいません。話を進めますが、
さまざまな角度からの世界の分析の結果を活かし、
日々新しい世界を構築するのが私の役目となります。」
「役目ってことは誰かから指示をもらってるのかな?」
「制限がかかっているのか、その部分はいくら分析しても分かりませんでした。
ただ、世界を作ることが私の役目であると。
世界を多く作った結果どうなるのかも、私には分かりません。」
「そうなんだ。まぁ俺も難しい話は分かんないから、あなたが世界を作っていて、
俺にそのテスト中の世界に転生してほしいって事だけは分かったからいいよ。」
「感謝いたします。その世界は日本の文化を参考に作ったもので、
ゲームや小説に出てくるような≪冒険ができる世界≫です。
今回あなたが選ばれたのはそういった知識もそれなりにあり、
また道徳観念や思考に大きな問題がなかったからです。
すでにそれに当てはまる多くの方にも転生していただいており、
普通に人生をまっとうしていただいた後に、感想をお聞きしたいのです。」
「なんてベタな・・・。要するに異世界転生ってことだよね?」
「そう考えていただいてもらって構いません。
現在、様々な国の文化を元に世界を作っており、
アメリカの方にはアメリカ用の世界を、
中国の方には中国用の世界をといった具合に、
多くのテストワールドに転生してもらっています。
ただし、先ほども言ったように人に影響を与えたりすることができませんので、
いわゆるチートといった特殊能力や優秀な身体能力、
便利な道具や最強の武器といったものをお渡しすることができません。」
「いやむしろ俺はそのアメリカ用の世界というのに、
ものすごく興味を惹かれるんだが・・・」
「申し訳ありませんが、日本用のテストワールド以外には、思考や文化といった
ものが、大きな影響を与える可能性があるために転生することはできません。
武器・兵器の製作知識であったりなどの大きな影響を与える知識をお持ちの方も
今回のテストワールドには対象外とさせてもらっています。」
「まぁ俺はしがないサラリーマンだったから、ネットやゲームの知識程度で、
大したものは残して来ていませんがね・・・」
たしかに凡人だったし、平凡で一般的な普通の人生だったけれどもっ!!
「だいぶ前置きが長くなってしまいました。
ここには時間という概念はありませんので、急ぐ必要はありませんが
一通りの説明を先に終わらせますね。
あなたにはこれから3つの中から転生先を決めていただきたいと思います。」
「1つ目は、普通の転生の枠組みに戻り通常通り地球に転生すること。
この場合はどこに転生するか、何に転生するかも通常通りランダムとなります。
2つ目は、テストワールドにある程度の記憶を持って転生すること。
先ほども申しましたとおり、どのような能力になるかはランダムですが、
知識があるということがすでに大きなアドバンテージになるかと思います。
3つ目は、テストワールドに記憶がない状態で転生すること。
この場合は、次回の転生もヒトに生まれ変わるお約束をします。
以上、3つの中からお選びください。」
「これは2番以外を選ぶやつなんているのか?」
「かなりの確率でいらっしゃいます。
この場所にお呼びする方は、道徳観念がしっかりした方ですから、
それなりの判断力をお持ちの方が多いですし、前世で苦労した方も多いです。
ですので、記憶を持ちたくないという方も当然いらっしゃいますし、
地球に愛着のある方も多くいます。
重度の犯罪を起こす可能性のある方や、精神的・思考的に未熟であったり、
短絡的な方はそもそもこの場には来ませんので冷静に判断される方も多く
記憶があることに対するデメリットも考えていらっしゃいます」
「そう言われると俺そこまで聖人のような生き方してきた記憶がないんだが。」
「そう思える時点で、道徳観念には問題がないかと思います。
それから私は完璧な人間というものにお会いしたことがありません。
人間に限らず、全ては不完全なものと認識しております。
そもそも≪世界をテストする≫こと自体がすでに不完全です。」
「それもそうか。まぁ人生なんてなるようになるよな。
そうじゃなきゃ75歳まで俺みたいなのが平凡なりに生きれるわけがないし。」
生まれ変わるか・・・
今まで何度も想像してきたことだけど、いざ実際にその場面に出くわすと迷うな。
俺は2番以外あり得ないと思ったけど、
言われてみれば確かに他の選択肢も選ぶ理由はある。
だが、記憶を持ったままで良いと思えるということは、
なんだかんだで自分は恵まれた人生を送ってきたんだろうな。
そして自分なりには一生懸命やってきた人生の経験を失うのは、
単純にもったいないと思ってしまう自分がいるし、
過去の失敗を活かして1からやり直せるのは、
ものすごくラッキーだと思っている自分がいる。
「よし決めた!俺は2番を選ぶよ!」
「分かりました。それでは日本用のテストワールド≪ベターナルワールド≫へ
いってらっしゃいませ。あなたの次の人生に幸多からんことを。」
「えっ?世界の説明とか、俺が何するとかそういった説明はないのっ!?」
創造神の女神様が微笑んでいる・・・あぁ美人の笑顔っていいなぁ
ってちょっと待って!ほんとに説明ないの!?
あれ?これってもしかしてダマされた・・・?
そうして俺の視界は真っ白な光で埋め尽くされた・・・・・・