この世界の、平和なんて……
「今……何と言った?」
竜のおじさんも、さすがに聞き間違えたのかと思っているらしい。
だって二度見してきたから。
「御託はいいから、とっととかかってこいって」
そう言いながら一歩前に出る俺に、みんな呆然。
でしょうね。
「おい、ちょっと待て! 貴様、此の期に及んで何たることを!
剣士として言って良いことと悪いことが……」
「聞こえなかった? だったらもう一度言おうか。
この世界の、平和なんて、どうでもいい!」
竜のおじさんまでポカーン。
あと、お供のドラゴンもポカーン。
説明してあげたいけど、したところで、
この世界の人にはわかってもらえない問題なんですよ。
今、元の世界では、今期アニメが絶賛放映中なんです!
人気ゲーム実況者の動画だって、今頃何本アップされてることか!
行きたいイベントだってあったのに……。
こんな世界に飛ばされて、全部パアなんですよ?
わかりますかね!? この苦しみ!?
「フフ、タケマル殿……あなたも世界平和を掲げるならば
まず己の肉体を鍛えよ、力なき正義は無力!
と、いうことですね?」
ドロッドがニヤリと笑みを浮かべる。
違うから。
どうすればそんな解釈になるの?
あと、空手の達人みたいな崇高なものなんて持ち合わせていません。
「む……そういうことか。私はてっきり……
まだまだ未熟。そんなことだから、貴様に勝てんのだな」
ハルームが変に納得する。
今更だけど、君もドロッドと大差ないね。
ちなみにハルームとは過去に一戦交えておりますが、
まあ……ねえ?
「一つ一つの発言に、凡人では理解できない意図が含まれているんですね!?
さすがタケマルさん!」
フミオラ、君は……もう何も言うまい。
「くく、随分と侮られたものだな。
いや……なるほど、それこそが貴様の狙いか」
竜のおじさんがしたり顔で頷く。
「はい? 何が?」
思わず素で訊き返す俺。




