えがく物語を彩る素材
「ふん、面白い。口だけならば何とやらだ。
それだけのことを言うに足る実力者か否か、確かめさせてもらおう!」
竜のおっさんが立ち上がって、近くにあった溶岩石の塊を素手で貫く。ワオ。
そしてその中から、岩でできた鉈のお化けのような武器を引っこ抜いた。
像も真っ二つにできそうなくらいのものだ。
いや、スゲーけど、そんなとこに隠しておかなくても。
と思ったら、周囲の岩石も砕けて、中から小さいドラゴンが出て来る。
ですよねー、ボス戦に敵のお供は当然ですよねー。
小さいと言っても、竜のおっさんと比べたらって話で、
実際は3メートルくらいありそう。
このドラゴンも皮膚がゴツいから、ミニおっさんみたいな感じだ。
「さあ、ボーメランデアを圧倒したその力で、私を楽しませろ!」
ポメラニアン? あ、違いましたね。
おっさんが悪役お決まりのセリフを吐くと、
ミニおっさんたちが一斉に飛びかかって来た。
「私の兵すら倒せないようならば、世界を取り戻すなど夢のまた夢だぞ?」
今度はおじさんが挑発してくる。
「私はこの剣に、民を救うと誓ったのだ。この身が肉の一片に成り果てるまで、
貴様らを切り伏せるのみ!」
早速挑発に乗るハルーム。
「この拳、あの敵を砕けるか……フフフ……」
挑発より脳筋優先のドロッド。
「私は見つかると色々と面倒なので、端っこで見守ってますね~」
すっかりと回復したヴルデュイユ。
挑発以前に敵前逃亡。
魔法で姿まで消すという徹底ぶり。
まあ、邪神だし、魔王軍相手だと裏切り行為になるのかな?
「あなたも魔王も、タケマルさんの描く物語を彩る素材でしかないということを、
その身をもって知るべきです! そして私は、
タケマルさんの描いた世界で、
タケマルさんがもたらした平和の中で、
タケマルさんにかしずき、ひれ伏し、崇め、全てを捧げ……
ハア……ハア……」
挑発をいとも簡単に欲望へすり替えるフミオノーレ。
怖いっす……。
「まあ、そんなの、どうでもいいし」
挑発に乗らない俺、タケマル。
再び、みんなポカーン。