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えがきたくもない物語  作者: 万彩雨虹
第壱章
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純粋にして高潔

 でも、名前を揶揄されたことはあったけど、

 そんな風に言ってもらったことはなかったなあ……。

「それで、何で俺の名前を?」

 フミオノーレが再度、説明しろ、と言ってヴルデュイユを無理矢理起こす。

 ヴルデュイユ、あ、今度はバッチリ言えた。

「先程も言いました通り~フミオノーレさんが出された条件に、タケマルさんがピッタリだったんです~

 それで、しばらくの間、観察させてもたってたんですよ~」

 瞬く間に回復したヴルデュイユ。

 ちょっと待て、やっぱり人間じゃないのか?

「観察?」

 フミオノーレが、黙れ、とばかりにヴルデュイユの頭へグシャッ! と一撃叩き込み、

 一歩こちらへ歩み寄る。

 殴る必要ないのでは……。

「この世界、ローク・モナイには、遥か昔から語り継がれる伝説があるのです。


  全ての大陸が闇に染まりしとき、それらを掻き消さんと、かの地から救い主が現れる。

   その者、純粋にして高潔、

   その者、謙虚にして博識、

   その者、柔和にして豪胆、

   そして、定めの流れに愛されし者、

   その者、祈る民に応え、あらゆるものを超越し、姿を現す。


 この世界は今、闇より来る魔王ソブトサールによって支配されつつあります。

 なぜこの世界にそのような存在が現れたのか……まだわかっていません。

 恐らくは伝説に関係があるのでしょうが、解明はまだ先になってしまうかと……。

 ですがこのままだと、世界は確実に……闇に閉ざされてしまうでしょう。

 それを阻止できるのは、伝説にある救世主様しかいません。

 そう、タケマル様! あなたです!」

 何言ってるのかね……この子は。

 そんなRPGみたいなこと言われても、はいそうですか、なんて言わないよ?

 大体、さっきまで聞いてた話だと、選んだのはそこの腐女子でしょ?

 伝説関係なくない?

 しかも転生の術って言ってたし。

「人違いじゃないの? 俺、そんな人間じゃないよ?」

「いえ、間違いありません~ずっと観察させてもらっていて、確信を得ましたから~」

 回復したヴルデュイユが立ち上がる。

「確信て、どんなさ?」

「まず高潔ですが、タケマルさんはタケマルさんの世界にいたとき、

 ずっと一人の主に仕え、忠義を尽くしてました~

 しかも主である女性が敵国の策略に陥ったときも、

 疑うことも裏切ることもなく、その女性との愛を貫いたのです~」

 何か、それには覚えがあるな。

 どっかで聞いたことのある内容だし。

 もしそうならば、俺の中で当てはまるのは一つしかない。

「ちなみに、その主の名前って知ってる?」

「ティターニアさんです~」

 間違いない、それゲームですね。

 今、ハマってるスマホゲームですよ。

 愛を貫く? ティターニアは俺の嫁だから当然じゃないですか!

「たった一人、愛する人のために……騎士道を体現するその高潔さ、さすがです。

 そうですか、ティターニアさんですか……嫉妬すら覚えてしまいます……」

 おっと、フミオノーレさん、

 最後の方、声が凄く低くなってましたが、何かご不満でも?

 杖で殴るのは止めてくださいね?

 ちなみにヴルデュイユが俺の名を言う度に、

 フミオノーレが彼女の後頭部へ一撃叩き込んでます。

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