純粋にして高潔
でも、名前を揶揄されたことはあったけど、
そんな風に言ってもらったことはなかったなあ……。
「それで、何で俺の名前を?」
フミオノーレが再度、説明しろ、と言ってヴルデュイユを無理矢理起こす。
ヴルデュイユ、あ、今度はバッチリ言えた。
「先程も言いました通り~フミオノーレさんが出された条件に、タケマルさんがピッタリだったんです~
それで、しばらくの間、観察させてもたってたんですよ~」
瞬く間に回復したヴルデュイユ。
ちょっと待て、やっぱり人間じゃないのか?
「観察?」
フミオノーレが、黙れ、とばかりにヴルデュイユの頭へグシャッ! と一撃叩き込み、
一歩こちらへ歩み寄る。
殴る必要ないのでは……。
「この世界、ローク・モナイには、遥か昔から語り継がれる伝説があるのです。
全ての大陸が闇に染まりしとき、それらを掻き消さんと、かの地から救い主が現れる。
その者、純粋にして高潔、
その者、謙虚にして博識、
その者、柔和にして豪胆、
そして、定めの流れに愛されし者、
その者、祈る民に応え、あらゆるものを超越し、姿を現す。
この世界は今、闇より来る魔王ソブトサールによって支配されつつあります。
なぜこの世界にそのような存在が現れたのか……まだわかっていません。
恐らくは伝説に関係があるのでしょうが、解明はまだ先になってしまうかと……。
ですがこのままだと、世界は確実に……闇に閉ざされてしまうでしょう。
それを阻止できるのは、伝説にある救世主様しかいません。
そう、タケマル様! あなたです!」
何言ってるのかね……この子は。
そんなRPGみたいなこと言われても、はいそうですか、なんて言わないよ?
大体、さっきまで聞いてた話だと、選んだのはそこの腐女子でしょ?
伝説関係なくない?
しかも転生の術って言ってたし。
「人違いじゃないの? 俺、そんな人間じゃないよ?」
「いえ、間違いありません~ずっと観察させてもらっていて、確信を得ましたから~」
回復したヴルデュイユが立ち上がる。
「確信て、どんなさ?」
「まず高潔ですが、タケマルさんはタケマルさんの世界にいたとき、
ずっと一人の主に仕え、忠義を尽くしてました~
しかも主である女性が敵国の策略に陥ったときも、
疑うことも裏切ることもなく、その女性との愛を貫いたのです~」
何か、それには覚えがあるな。
どっかで聞いたことのある内容だし。
もしそうならば、俺の中で当てはまるのは一つしかない。
「ちなみに、その主の名前って知ってる?」
「ティターニアさんです~」
間違いない、それゲームですね。
今、ハマってるスマホゲームですよ。
愛を貫く? ティターニアは俺の嫁だから当然じゃないですか!
「たった一人、愛する人のために……騎士道を体現するその高潔さ、さすがです。
そうですか、ティターニアさんですか……嫉妬すら覚えてしまいます……」
おっと、フミオノーレさん、
最後の方、声が凄く低くなってましたが、何かご不満でも?
杖で殴るのは止めてくださいね?
ちなみにヴルデュイユが俺の名を言う度に、
フミオノーレが彼女の後頭部へ一撃叩き込んでます。




