迷宮で油断しちゃった件
デカイ犬がペットになってから一週間。街に白狼が現れた!などと小さい騒ぎがあったようだがそんなことは知らない。
今日も俺は魔物を倒そうと森にきたのだが、俺が白狼を従えたのを知っているのか姿すら見せなかった。いや、姿を見たものはいるが俺が見た瞬間に尻尾を丸めて逃げていった。
この森はもう使えなさそうだ。だって敵がいないんだもの。
「主様よ。この森の奥に迷宮があるのだが。そこに行ってみてはどうだろうか?」
迷宮だと。なんだその心騒つく単語は…。いいじゃないか。これはもう行くしかないだろ。
「迷宮はこの森なんかとは比べ物にはならぬ強さだぞ。甘く見ていては痛い目にあう。」
俺がニヤニヤしていたのを見ていたのかハクが忠告をしてきた。そんなものは知らん。俺の今の剣術レベルがあれば恐らくその迷宮とやらも余裕で攻略できるだろう。
そう。俺はバロウルフを余裕で倒し恐れられていた白狼まで従えたのだから、天狗にならない方がおかしいのである。
俺は意気揚々と森を抜け迷宮へと向かった。しばらく歩くと洞窟のような場所に着いた。
ハク曰くここが迷宮らしい。待ってろよ、魔物共!駆逐してやる。一匹残ら…よし。行こう。これ以上喋ると駄目な気がする。
迷宮に入ってすぐに2メートルくらいの蜘蛛のような魔物が襲ってきた。飛んできたので躱しながら漆黒の剣で首と胴の間を刺した。
ギェァアァァ!
気持ちの悪い声を上げながら絶命した。ドロッとした液体が流れてきたので見ると緑色の血だった…。夢に出てきそうだな、これ。
「…ハク。弱くないか?」
ハクが俺に忠告してきたから注意してたのに思ったより…というより普通に弱かった。ふっ、このくらいなら屁でもないな。
蜘蛛の次に出てきたのは兎と熊のミックスした魔物が襲ってきた。なんと言うかスピードも力も強かったがハクの方が強いだろう。
「期待外れだな…。さっさと最下層行って帰るか。」
「う、うむ。ここまで弱いとは。」
俺たちは階層を降りていき途中であることに気がついた。
「…なぁ、魔物が少なくないか?」
「うむ。それも階層が下がるごとに減っているぞ。」
「まぁいいか。」
俺は完璧に油断していた。デカイ空間に着いた。真ん中くらいまで進んだ時、出入り口が完全に封鎖された。
とっさに魔法を打ち込んだが初球魔法程度ではビクともすんともしなかった。ハクの突撃にも微動だにしなかった。
「っ…クソッ!」
完全にやられた。俺の油断のおかげで密室空間の完成さ!時空の裂け目のようなものが辺り一面にできた。
人型の魔物…いや魔人が俺達がいる真ん中を残し空間を埋め尽くした。
「ハク!!行くぞ…!」
ハクはウオオオォンという遠吠えで俺の言葉に返事をし、魔人達に突っ込んでいった。その直後、俺の横を何かが吹っ飛んで行った。見るとハクが倒れていた。ピクピクしているので死んではいないようで安心した。
「…嘘だろ?ハクが一撃…。この状況はヤバイなぁ…」
次々と向かってくる魔人を切り倒す。一撃一撃が重く、耐えるのがやっとだった。ボコボコと俺の顔面やお腹に攻撃が入る。これ、レベル7くらいあるぞ…?無理ゲーだよ。いきなりハードモードはキツイって…。
魔人の中にはちょくちょくデカイ図体をした魔人もいる。攻撃力高そうだな。やだな、あたったら痛いんだろうな…。
一体斬っている間に次の魔人が一気に来る。それを回避し一体、また一体と倒していく。それを繰り返し続けた。
何分経っただろうか?もしかしたら何時間かもしれない。斬っても斬っても敵の数は減っている感じはしない。
俺の疲労は限界に来ていた。てか俺この世界で5歳だよ?むしろよく頑張ったと褒められるべきだよ…。ドスッと言う鈍い音がした。もう無理。デカイ図体の魔物の攻撃が直に顔面に入った。痛い。マジで泣きそうなんですけど。
「火槍!!」
効果は今ひとつのようだ…。いじめられっ子の気分を味わう俺。転生までしていじめられっ子気分とは最悪だ。
「クッソォオォォォオオォ!!!」
その叫びと共に俺は魔物の大群に飲まれていった。
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《ステータス》
サーベルト・ルシフェル・アラディア
種族:魔族
称号:無し
スキル:火炎操作・水流操作・風力操作・雷光操作・暗闇操作・土塊操作・無詠唱・自在変化・戦意喪失・魔獣支配
魔法属性:火・水・風・光・闇・土
剣術レベル:5
魔法レベル:2
攻撃力上昇Lv.3
防御力上昇Lv.3
魔法量上昇Lv.3