デカイ犬がペットになった件
魔の森にはLv.6並み強さを持つ主がいる。その主はバロウルフの親玉でその見た目から“白狼”などと呼ばれていた。
魔の森全域を縄張りとした白狼率いるバロウルフ達は圧倒的な存在で森近辺の魔族でさえ恐れていた。
この森近辺で白狼に逆らう者などいない。はずだったのだが、バロウルフの集団が全滅した。それも一人の小さい少年によって。白狼は自らその少年の元へ行くことにした。
バロウルフの集団を倒し、森の奥へ奥へと進んでいった。するとそこにまたバロウルフが現れた。だがこちらに向かってくる様子はなかったので無視をしていると奥から白く、でかいバロウルフが現れた。ハードモードだと思っていたのにイージーだったのでガッカリしていた俺はついついニヤけてしまった。
「何が面白い。たかが庶民の分際で我の部下を全滅とはな。」
この白いバロウルフは他のバロウルフとは違い言葉を喋った。
「たかが庶民でもバロウルフくらいなら倒せるさ。」
「…ふんっ。我をバロウルフと一緒にするとは。愚かな。後悔させてやろう…!」
俺の煽りが効いたらしい。俺でも流石にバロウルフじゃない事くらいはわかる。バロウルフよりもっと上位種だ。そんな奴が下位種と同等に扱われたら冷静さを失うだろう。そう言う計算だった。
俺は白狼が動くのと同時にバックステップをしながら剣を抜き白狼の攻撃を避けた。
「ほほぉ。我の攻撃を避けるとは…。少しはやるようだな。」
「いや、遅いくらいだよ。」
「そうか…幼き者と思い手を抜いたが本気でいってやろう。後悔するでないぞ。」
煽りに煽りにどんどん冷静さを失っていく白狼。俺の罠に気づいていない。実はバックステップをする前に土系統魔法ででかい縦穴を空けその上に薄く蓋をしている落とし穴を作っていたのだ。
白狼はフルスピードで俺めがけて飛んできた。ヒラリと躱すつもりだったが白狼の、突撃はフェイントで躱した先に突っ込んできた。
ほんの少しだけ焦った。が、剣で白狼の攻撃の軌道を変えその横腹を思いっきり蹴飛ばす。ただ5歳の弱々しい脚力なので全く聞いたいなかったが。
「…ふむ。考えを訂正しよう。貴様、ただの庶民じゃないな。だが攻撃力に欠けるようだ。」
冷静さを欠いたつもりだったが意外に分析とかされていた。だが落とし穴まであと少し。
「お前の攻撃は俺には当たらないよ。」
これが最後の煽りとなった。ムカッときたのか俺に飛びかかろうとして前に出た時、白狼の足元に穴ができ、足から吸い込まれていった。
「真剣勝負を愚弄するかっ!貴様!」
「罠も作戦のうちだろ?」
「ぐぬぬ…許さぬ。許さぬぞ!」
なかなか深い穴を作ったのに跳ねるように壁を蹴って上がってきた。あー…これは完璧にキレてるわぁ。
「貴様は殺す…!」
俺は白狼をジッと見つめ目を離さないようにしていた。だが目の前から白狼は消えた。ザッっという足音だけ残して。
ブシュッ
いきなり俺の腕に痛みが走った。見ると血がドクドク出てきた。白狼は目に見えない速さで移動し俺に攻撃をしているようだった。
ブシュッ
今度は胸ポケット辺りを切られた。傷はどんなものか。と見ると一枚の魔法陣が破れていた。家行きの転移魔法陣。帰りの分だ…。
破れた…。嘘だろ、これって帰れなくね?やりやがったな、この犬っころ…。許すまじ。
白狼はトドメだ。と言わんばかりの正面から攻撃をしようとしていた。ドスッという鈍い音が響いた。
俺は突っ込んできた白狼の頭を掴み止めていた。
『アップデートします。
・攻撃力上昇Lv.3
・防御力上昇Lv.3
・魔法量上昇Lv.3
スキル【戦意喪失】スキル【魔獣支配】を取得しました。】
魔法陣破りやがって…。ギロッっと白狼を睨んだ。まだ抵抗するなら俺はお前を殺す。そう気持ちを込めて。
白狼はビクッと体を揺らし、キュウゥンという先ほどまでは想像できない鳴き声をあげてお座りをした。
「参った!!!」
「…は?」
「貴さ…貴公はその辺の凡人ではないな?我を怯ませるとは。我は貴公の下に付く。負けたら勝ったものの下に付く。それがバロウルフ流なのだ。」
そんなものはどうでもいいんだよ…魔法陣破りやがって。帰れねぇじゃねーか。……ん?いや待て。下に付くってことは俺がコキ使っていいってこと?
「俺の部下になるってことか?」
「あぁ。我はお主の足になろう。」
…足?そーかそーか。こいつには俺を乗せて家まで帰ってもらおうか。俺はニヤリと顔を歪ませた。
「じゃあ早速だけど魔王ザクスの家に行ってくれ。」
「い、いや!それは無理だ!貴公…いや、主様とは言えど魔王には勝てぬ!いくら序列最下位でも魔王は別格だ!」
こいつは一体何を言っているのだろうか。俺は帰りたいだけなんですけど…。
「いや、戦わないから。」
「では何故魔王の家に行こうとするのだ?」
「…俺の家だからだ。」
白狼は一瞬、こいつ何言ってるの?見たいな顔をしたがハッとなったのかひれ伏し出した。
「まさか主様が魔王の血筋のものとは…。通りでその貫禄。納得だ。わかった。送り届けよう。」
白狼の上にまたがり家を目指した。白狼はとても早く何度も落ちそうになったが毛を引っ張りなんとか耐えた。1時間もかからず家に着いた。
外にザクスが立っていた。俺を見て安堵の表情を見せ俺が乗っている白狼を見て驚いていた。
「ベル、その狼は白狼か?レベルはベルより高いはずだが。」
「そーなのですか?僕の下に付くと言ってましたけど。」
「…そうか。魔獣を支配するとは流石俺の息子だ!で、名前は何にしたんだ?」
え、名前なんているの?白狼でいいじゃんか。めんどくさい。
「名前いるんですか?」
「あぁ。喚ぶ時に名前がないと呼べないんだ。…白狼はダメだぞ。種族名だから。」
俺の考えが読まれたのか念を押された。んー…なるほど名前か。めんどくさいし白狼のハク。これでいいや。
「ハクに決めました。」
「ハク。いい名だ。貰い受けよう。」
…ごめんね、適当で。
「うん。もう帰っていいよ?」
俺はハクにそう告げるとパッと消えた。また目に見えぬ速度で移動したのかと思ったがあしおとすらしなかった。
「父さま、ハクが消えましたけど。」
「ん?自分が支配する魔獣は消えろと命じると自分の中に消える。来いと命じると現れる。まぁ説明はこんなとこかな。」
ふむ。便利だな。これを使えば色々なところに行けるじゃないか。明日から散歩がてら探検しよ…。
ベルはペットを手に入れた。
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《ステータス》
サーベルト・ルシフェル・アラディア
種族:魔族
称号:無し
スキル:火炎操作・水流操作・風力操作・雷光操作・暗闇操作・土塊操作・無詠唱・自在変化・戦意喪失・魔獣支配
魔法属性:火・水・風・光・闇・土
剣術レベル:5
魔法レベル:2
攻撃力上昇Lv.3
防御力上昇Lv.3
魔法量上昇Lv.3
次回から迷宮に入ります!