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人間の女の子を見つけた件

俺は今、超絶ピンチだ。


「ベルゥー!!!今日も可愛いなぁあ!」


顔を俺になすりつけヒゲでジョリジョリしてきやがるコイツは俺の父親ザクスだ。今どき、高校生にヒゲジョリしてくる父親などあまりいないだろう。この世界じゃ5歳ですけど。

ところで何故俺がザクスもといヒゲに捕まっているのかというと家をこっそり抜け出そうとして執事に捕まえられてザクスの元へ運ばれてきたのだった。あのクソ執事覚えてやがれ。

俺はザクスが嫌いだ。どこがというとヒゲの部分が嫌いだ。フサフサならともかくジョリジョリなのだ。これを嫌がらない子供などいないはずだ。とにかく離れたい一心で俺は魔法を使ってこのヒゲから離れることにした。


「飛べ!火球!!」


俺の叫びとともに野球ボールより小さいくらいの火の玉がヒゲのヒゲ。ザクスのヒゲに当たる。ように見えた。いや、当たったのだが消えたのだ。火の玉が。


「おっ!火球か?もう魔法を習得したのか!?いつの間に…。でもまぁ父さんには効かないぞぉ??」


なんか腹立つなぁおい。効かないのは知ってるが消えるなんて知らないぞ。くそったれめ。


「父さま、なんで火球が消えたんですか?」

5歳の体のせいかほんの少しまだ舌ったらずなのは仕方がない。


「あぁ。この家に伝わる特殊魔法でな?簡単に説明すると自分より弱い敵の攻撃をバリアーするんだ。凄いだろ?父さん凄いだろ?」


ザクスのウザさは放置して、バリアだと?チートじゃないか。しかも自分より弱い敵って、コイツ魔王だから他の魔王以外に負けるやつなんていないだろ…つかこの家に伝わるってことは俺も取得できるのか?


「父さま、そのバリアは僕もできるんですか?」

「んー…ベルはどうだろうなぁ。なんせ…まあやってみるか?」


なんだよその反応。俺に魔法の才能がないのバレてるの?俺程度じゃ無理ってこと?泣くよ?ねぇ。なんせせってなんだよ…。ザクスの反応は期待していたものとは違ったが教えてくれることには変わりないので良しとしよう。


「この魔法陣に自分の血をつけてみろ。そーするとルシフェル家の血に反応してその血の持ち主はこの魔法が使えるようになる。」


俺は言われるがままに手を針で刺し少し血を出す。そして魔法陣に塗りつけた。


「…反応ないな?あー。やっぱりかぁ。」


え。もしかして俺、この家の実の子じゃないとか複雑な家庭なの?ザクスは本当の父親じゃないのか?なんて考えたがそんな訳がなかった。なぜなら髪の色や目が俺はザクスにそっくりだったからな。


「いやな、今まではルシフェル家の血筋同士で結婚してたんだが俺が母さんに惚れちまってな?だからベルは母さんの血も入ってるから反応しなかったのかもな…」


てことはこの魔法陣は純ルシフェル家の者じゃなきゃ無理ってことか。アメルはルシフェル家じゃないのか。


「母さまはルシフェル家じゃなかったのですね!」

「あぁ。母さんは女神だからな。」


何こいつ。息子の前でノロケてんじゃねえよ。ニタニタしやがって。この魔法陣使えないとなると俺はバリアは出来ないのか…。したかったな、バリア。


『魔法陣をコピーします。【絶壁】を取得しました。』


そんなこともできるんですか。なんでもありじゃないの。チートだな。でもこれで俺もバリアができるのか!


「父さま!絶壁覚えましたよ!」

「え?反応してたのか?…わからなかった。よかったじゃないかベル。」


いや、反応はしてなかったよ。うん。全くうんともすんとも言わなかったね。


「はい!試してみてもいいですか?」

「あぁ。やってみろ」


(絶壁!!)


俺は無詠唱で絶壁を使った。それにザクスは驚いていたが俺が出した【絶壁】にもっと驚いていた。


俺が出した【絶壁】は絶壁と言うのには程遠いほどボロボロだったのだ。名付けるなら【腐壁】だ。腐って老朽化したかのようなボロボロ度だった。


「い、いや。まぁ仕方ないさ。誰にだって向き不向きがある…。あ、あんまり落ち込むなよ?な?」


励ましてくるザクス。それが妙に辛い。あれ?目から汗が。くっそ、やっぱり魔法の才能ないのかよ…。もういいや。


俺は吹っ切れた。魔法など初級で十分だ。これからは剣の時代だ!と。ただの現実逃避なのだが羽崎仁時代から現実逃避は得意なのだ。異世界転生して魔法が使えないなんてそんな悲しい現実は認めたくない。慰めるザクスを背に、俺は気分転換のため庭に出ることにした。


「はあ…」


でかいため息をついて俺は芝生に横になる。ぼーっと雲を眺めていると外から子供の声が聞こえた。


「おい!お前人間だろ!」

「どうりで臭いと思ったぜ!」

「なんだよその目はっ!」


殴る蹴るの音も聞こえる。人が落ち込んでる時に不快な音を聞かせやがって。俺はイライラしながら外の様子を伺った。そこには赤い髪をした俺と同じくらいの年齢の人間の子が、それまた同じくらいの魔族の子にボコボコに殴られていた。


…ムカつくな。何がムカつくかって?人間の子がボコボコにされてるから?違う。ボコボコにしてる奴が魔法を使ってたからだ。たった今魔法の才能のなさに落ち込んでいた俺にとって最悪の見世物だった。


「ねえ。そこのジャガイモヘッド君。。人間だからって無抵抗の奴を殴るなよ。あと君。何魔法使ってるの?」


完全な八つ当たりだがそんなもの知ったこっちゃない。


「あ?誰がジャガイモヘッドだよ!お前誰だ!見ない顔だな!俺はな、この地区のリーダーなんだぞっ!」


ジャイ◯ンみたいな見た目をしているいかにもガキ大将っぽいやつが声を荒立て周りのスネ◯みたいなやつがそれに便乗する。


「ごちゃごちゃ言うならお前も殴るぞ!!」

「やってみなよ。」


ジャガイモヘッドのジャイ◯ンが魔法を発動しようとしてきた。殴るって言ったじゃん。魔法じゃん。嘘はダメだろ。俺は素早く腰にかけた木剣を手に取り〜…持ってなかった。俺は手ぶらだったのだ。でも魔法の才能がなかったとはいえギフトのおかげで初級魔法だけは使える。こんなジャイ◯ンには負けはしない。


ジャイ◯ンが魔法詠唱中に俺は無詠唱で【火球】を拡散させ【風流】で威力を増やした。拡散した先々でスネ◯は倒れ、ジャイ◯ンも倒れた。


一件落着。そう思っていたらジャイ◯ンの親らしき人が来た。怒られるかと思ったが


「おや、サーベルト様じゃないか。でかくなったねぇ。ウチの子がごめんねえ。仲良くしてやってくれよ。」


という態度に俺もジャイ◯ンもビックりしていた。


「母ちゃん、こいつのこと知ってるのか?」

「ばかっ!ザクス様の息子さんだよ!!あんたってやつは。飯抜きだね!」


思っ切り頭を殴られたジャイ◯ンは泣きそうになりながら俺を見て驚いていた。他のスネ◯達も親に殴られながら帰っていった。ふう。疲れた。多少ストレス解消にはなったかな。俺は家の中に戻ろうと引き返した。目の前に赤い髪の子が座り込んでいた。


完全に忘れていた。そうだ。この一連はこの人間の子が殴られてたから止めたんだった。


「あ、あの。あり、ありがとう…」

「いや、気にすることはないよ。ああ言うのが許せなかっただけだからね。」


小さくか細い声だがハッキリと礼を言ってきた。正義感があるようにカッコつけて言ったが単純に八つ当たりだっただけなんだけどね。


よく見るとその子はボロボロで着ている服も破れていた。顔に血が付いていたので拭こうとハンカチを持ち顔を上げた。赤い髪の中に隠れていた顔は何とも整った可愛らしい顔で、日本にいたならばモテモテ人生間違いなし。と言ったところか。こんなに可愛い女の子だとは知らなかったのでキョドりかけたが相手が小さい女の子なので高校生パワーでなんとか耐えた。そのまま家に連れ帰ったのだが玄関の前あたりで本当に連れ帰って大丈夫か心配になった。


なぜならここは言うならば魔王城なのだ。人間を連れて入ったらどうなるのだろうか。下手をすれば殺されるかもしれない。俺はそう考え引き返そうと思い、くるっと回った。目の前にはザクスがいたーー。


「…ベル。その子は人間か?」


普段からは想像できないくらい低く落ち着いた声でザクスは俺に尋ねた。ちょっとビビったけど目は怒ってなかったので漏らすのは我慢できた。


「は、はい。父さま、この子が困ってたので助けたいと思って…」


そう言いザクスの顔を伺う。怒られるか?どうなる…なるようなれ!


「…そっか!人間の気配がしたから敵かと思ったぞ!そーかそーか。偉いなぁベル!んん?その子は随分とボロボロじゃないか。風呂にでも入れてあげなさい。」


俺の思い通りだぜっ!…超怖かった。父親とはいえ魔王だもんな。半端ねぇぜ。俺はチビりそうになりながら隣にいた女の子を見た。こっちもビビってたのか。泣きそうになっていた。


「ほら、大丈夫だよ。さっ、行こうか!えっと、名前はー?」

「……レフィア。」

「レフィア、早く風呂に行こう。」


俺は早速呼び捨てにしてレフィアの手を引っ張った。それに抵抗する素振りも見せず風呂場についてきた。もちろん道案内だけだ。このくらいの年齢なら一緒に入っても問題ないのかもしれないが中身は高校生。少しまずいだろう。精神的に。


「ここがお風呂だよ。ゆっくり入っていいからね。あっ、着替えは僕のでいいかな?ここに置いとくね。お風呂から上がったら呼んでくれ。隣の部屋にいるから!」


俺は小さい子のお世話を焼くのが昔から好きだったのだ。ボランティアなどでよく保育園などに行ったものだ。慣れっ恐ろしいね。俺のテキパキ度にレフィアはビックりしていた。


「…私人間だよ?」


あぁ。なるほど。俺のテキパキ度にじゃなく魔族であろう俺が人間のレフィアに優しくしているだったのか。


「僕には人間も魔族も関係ないんだよ。人間も好きだし魔族もすきだからね。というか違いがイマイチわからないくらいだしね」


俺は元々人間だし、嫌いなはずがない。そしてこの数年で俺の周りの魔族は良くしてくれるし嫌いなんて思うこともない。俺にとってどっちも変わらないのだ。そんな俺の言葉にさらに驚いたようにレフィアは目を開けている。


「…ふふっ、変なの。」


初めて笑ったレフィアの顔はとても可愛かった。おじさん、キュンと来ちゃったよ!


「…名前、なに?」


レフィアの呟きで思い出した。俺はまだ名乗っていなかった。


「サーベルト!サーベルト・ルシフェル・アラディアだよ。」


急いで名乗った。すると少し警戒心を解いていたレフィアが警戒心を強めた。


「……ルシフェル?もしかして魔王の?」


緊張した感じで聞いてきた。その様子を見て思わず笑ってしまった。


「…ぷっ!はははは!」

「なんで笑うの!?」

「だって、名前で警戒してる割にはすでに魔王に会ってるよ?玄関であった人が僕の父親で魔王さ。はははっ」


笑いながら軽く言った言葉の内容にレフィアは腰を抜かしていた。名前を聞いただけで警戒するような人に実はすでにあってたんだから当然だろう。てか玄関のとこで気づいてなかったのかな。普通に一魔族だと思っていたのか?

っと。さすがに笑いすぎたかな。超睨んでる。


「ごめん、先に言えばよかったかな。」


俺は素直に謝った。レフィアは意外そうな顔で俺を見つめた。


「本当に魔王なの?さっきの人。そこまで怖くなかった。」


確かにそうだ。いや、怖かった。ものすごーく怖くてチビるかと思った。でも子供の俺たちでさえ耐えれたんだ。魔王にしたら怖くない方なんだろう。


「基本怒らないからね。さ、レフィアもお風呂に入りなよ!いつまでもドロドロだと可愛いのに台無しだよ」


俺は話を切り替えお風呂の話に戻した。するとレフィアの顔は見る見るうちにその髪のように赤くなった。

どこか気分でも悪いのかと思い顔を覗き込んだらキッっとまた睨まれた。今回は睨みは可愛かった。レフィアは無言で、着替えるから出て行って。と目で俺に訴え、風呂に入っていった。




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