新魔王が誕生した件
書き直しました。
俺は爆ぜし雷鳴を発動した。これで敵は大方倒せるだろう。
そう思っていたのだが俺の予想を裏切り俺の魔法が消えた。中級魔法の時のような”できない“ではなく”消された“のだ。
ー俺のミックス魔法が消された…?
少しだけパニックになっていた。俺が持つ最も強い魔法を使い敵を圧倒したはずが、その魔法が消されたのだ。何らかの方法で。
聖級魔法だぞ!?一体どうやって消したんだよ!こんなの魔王クラスじゃなきゃ出来ないだ…ろ…。え。魔王クラス?いや、これってもしかしなくても魔王じゃない?
俺はもう既に周りのことは見えていなかった。戦争中。それも戦場のど真ん中を走り敵陣へと。魔王フォルネウスの元へ向かった。
俺はこの目で見たかったのだ。今の自分を、天狗になっている自分を圧倒する存在を。他の雑魚はどうでもいい。俺は無我夢中でフォルネウスの元へ走った。
勿論敵兵達は俺を止めるべく向かってきた。ソレを王級魔法でことごとく潰す。途中で幹部らしき魔人も出てきたが俺は足を止めることなく瞬殺した。文字通りの意味で、だ。
若干五歳で戦場に出、返り血を浴びながら敵陣に突っ込む様を見て敵どころか味方も怯えたらしい。
何十人何百人と魔法でぶっ飛ばし真っ直ぐ敵本陣へ進んだ。
ー今度こそ!!爆ぜし雷鳴ッ!!
敵陣手前で寸分足りとも狂わさず発動した。だが今度もかき消された。
「ほお?この魔法を使ったのは貴様か?ガキの分際でやるじゃねえか。」
魔法がかき消された直後に俺の頭上から声がした。その声は低く、ガサガサしていた。
「そのガキの魔法を容赦なく消さないでください。」
タメ口でもいいかと思ったが一応敬語で喋る。いいか?ビビってるわけじゃないからな?
「ほお、俺が消したと分かっていてここに来たのか?貴様の魔法は俺には通じないぜえ?グヒャヘヘヘ」
随分気持ち悪い笑い方をする奴だな。俺は顔を少し歪めた。
「爆ぜし雷鳴。」
「おっと。危ねえな。貴様ぁ、その魔法は個人魔法か?」
「個人魔法かどうかは知りませんけど考え付いたのは僕です。」
発想は簡単だし誰でも思いつくだろう。恐らく、この魔法は存在しているだろう。
「見たことねえな。貴様。その魔法俺に教えろ。」
「断る。」
俺の必殺ミックス魔法をタダで教える訳にはいかない。この魔法は俺が苦労して覚えたんだ!考えてから実行まで数秒しか経ってないけど!!
「断るだと?…この俺の頼みをか?グヒャヘヘ…」
「僕の魔法を消した方法を教えてくれるなら教えてあげますけど?」
俺の考えた聖級魔法よりも聖級魔法を簡単に消せる方法の方が情報の価値は高い。
「グヒャへへ。ふざけるなよ。まあいい。殺してお前の記憶を漁ればわかるだろぉ?」
ゾワッとフォルネウスから殺気が流れる。鳥肌がたった。殺気にじゃない。フォルネウスの笑い方にだ。
「一撃で楽にしてやらぁ!!!」
どこかで聞いたことがあるような台詞を吐き俺に突っ込んできた。真正面から。
それを軽くかわして魔法をぶち込もうとしたのだが何故か後ろから衝撃が走った。
「ーッ!?」
後ろを向けば右横から。さらに左横から。フォルネウスがいる方からは攻撃が何故かこない。
「グヒャヘヘヘ…見えているものを信じすぎだぜぇ?」
フォルネウスの拳が俺の腹に入った。ミシッっという聞こえてはならない音が聞こえた。
あ〜…これ肋骨折れたな。ここでカッコいい奴は無言で戦い続けるんだろう?…でもね。ちょっと俺には無理そうです。
「ーっ痛ってえええええ!!!!!」
俺の突然の叫びに驚くフォルネウス。何驚いてんだよ。折ったのお前だぞ。
「この程度で騒ぐな。」
いや、無理だろ。肋骨なんて折ったことなかったんだぞ。元一般的な日本人舐めんな。
「ーっふぅーっ。ーっふっー。痛えぇ…。縮小型癒しの雨…!」
王級魔法癒しの雨は巨大範囲なので敵も回復してしまう。そこで考えたのが俺単体だけに雨を降らせるというものだ。
戦場で一人濡れる俺。雨も滴るいい男…冗談です。
癒しの雨で肋骨が回復した。痛みから解放されて色々と考慮する余裕ができた。
どうしよう。俺の魔法こいつに効かないんだよなぁ。
『魔法解除を解析しました。取得します。』
はい。出ました。困った時のチート機能。
俺の脳内にテッテレーと言う青い狸でお馴染みの効果音が聞こえた気がした。
では一度試してみましょう。
ー唸る雷鳴。
俺の魔法発動と共にフォルネウスの右手がピクリと動いた。その動きを確認した瞬間俺は今手に入れたばかりの魔法を使う。
魔法解除!
俺は魔法解除でフォルネウスの魔法解除を解除した。ややこしいよね。
轟音を立て唸る雷鳴が問題なく発動する。フォルネウスは予定外のことが起こり反応が遅れた。その遅れが致命的なのだ。
ドサッ…
音がした方を見ると肉塊が落ちていた。チラリとフォルネウスを見ると右肩から先が無かった。
直撃コースだったのにあの一瞬でここまで避けるとは化け物だ。
だが攻撃は当たる。今はそれがわかっただけでも十分だ。俺はもう一度魔法を発動しようとした。
だがその時、俺の前に家の執事が現れた。
「ザクス様が倒れました。今すぐお戻りください。」
その執事の声を聞きフォルネウスがニヤリと笑った。
「ゲヒャヘヘヘ…やっと毒がきいたのかよ…化け物が!だがこれで貴様らは終わりだなぁ?」
それはあまりにも認めたくない現実だった。
ールシフェル家敗北ー
俺は急いで家に戻った。部屋の一室のベッドにザクスは横になっていた。
「ベル。俺は魔王の座を降りる。」
いきなりの宣言に驚いた。だが次の言葉にもっと驚いた。
「次の魔王はお前だ…俺はベルの後ろで隠居生活させてもらう。」
え?なにいってんの。寝ぼけてるの?
「今回の敗北は中々でかい。責任は俺が取るしかないんだ。だから俺は魔王の座を降りる。」
この戦争のことは魔王生誕戦と呼ばれ歴史に残ることになる。
この日、史上最年少の魔王サーベルト・ルシフェル・アラディアが誕生した。
ぶっちゃけ言うと魔王とか言われても実感がない。と言うよりも今回の戦争で生まれた不安要素の方が気になった。それは
ーどれだけ殺しても何も感じないー
この戦争で俺は何人もの魔人を殺したはずだ。ソレに対する不快感が一切ないのだ。
その感覚は小さい頃、蟻の集団を踏み潰した時に似ていた。
もしかして転生したことによってその感情が無くなったのか?
魔王になったことよりもその事と敗北に対する悔しさだけが残っていた。
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《ステータス》
サーベルト・ルシフェル・アラディア
種族:魔族
称号:魔王
使用可能魔法:天界聖級魔法
スキル:火炎操作・水流操作・風力操作・雷光操作・暗闇操作・土塊操作・無詠唱・自在変化・戦意喪失・魔獣支配
魔法属性:火・水・風・光・闇・土・無
剣術レベル:6
魔法レベル:6
攻撃力上昇Lv.3
防御力上昇Lv.3
魔法量上昇Lv.4
メインの話に早く入りたくて書き直しちゃいました。話の順番を変えただけなので後々そうなるはずだったのですが混乱してしまったらごめんなさい。あんまり変わらないのでお気になさらず!m(。_。)m