帰って早々戦争が始まった件
俺は無事屋敷に帰ってきた。家に帰るだけで無事とは大げさだって?
イヤイヤそんなことはない。だって俺はノーマネーで店で一番高いランチを食べ出てきたのだから。悪気があったわけではなく、問題が発生したので金を払う間がなかったのだ。つまり俺は悪くない。はい。俺が悪いです。ごめんなさい。
とりあえずその問題は置いておいてザクスに先に話さなければならないことがあるのでザクスの自室に向かう。先程の店で聞いた話は中々重大な事だからな。
「父さま。今いいですか?」
「おー。いいぞ。どーかしたか?」
俺は重々しく口を開いた。
「あの。父さま、街を徘徊してたって聞いたんですけど本当ですか?」
俺にとってはフォルネウスとかいう奴よりも重要な話だった。あまりに有名になると少し面倒なことが起きるだろう?
「あぁ。俺の息子の可愛さを皆にも知って欲しくてなぁ!」
「今後はやめてください。」
俺は魔王の息子という事はあまり知られたくないのだ。もう言ってしまったものは仕方ないので今後はやめてほしい。
「い、いやでも」
「やめてください。」
「いやっ、」
「やめろ。」
このヒゲ。まるで子供じゃないか…。ついついイラってきちゃったよ。仕方ないよね。うん。
ザクスは俺の口調がちょっと変わったことには気づかないくらいあたふたしていた。
これで本当に魔王なのだろうか…。そう言えばフォルネウスの事はまだ言ってなかったな。
「あの、街の人から言ってたんですけど、フォルネウスって人が動き出したって。」
俺が何でもないかのようにサラッと言った言葉にザクスは目の色を変えた。
「フォルネウスが?あいつ…前からあいつの動きには気をつけていたつもりだったんだがな…。」
ザクスは静かに呟いた。ほんの少しだけ魔王っぽかったというのは言わないでおこう。調子にのるからね。
「父様、フォルネウスは八天魔列上位なんですよね?だったら八天魔列下位の父様はキツイのでは?」
俺は率直に思った事を口に出してみた。するとザクスの隣で待機していた執事が口を開いた。
「サーベルト様。もともとザクス様。いえ、ルシフェル家は八天魔列最上位だったのです。つまり力で言えばルシフェル家。つまりザクス様の方が上でございます。」
なんと。ここにきて衝撃の事実。我が家が元八天魔列上位どころか最上位だったなんて。じゃあなぜ最下位に落ちたんだ?最上位から最下位に一気に転落なんて普通に考えてあり得ないだろ。
執事の説明はこうだった。
当時序列最上位でザクスに当主が変わり魔王となったが、ザクスは天界の女神と結ばれた。という魔王としてあるまじき行為をし、最上位から最下位へと転落させられた。とのことだった。
アメルが女神だということは知っていたがこうやってしっかり聞かされるとしんじがたいものがある。
確かに女神っぽい仕草はしないこともないけど、俺に勉学を教えている時の顔はまさに悪魔だぞ。ザクスよりよっぽど魔王っぽい。
「まあ一対一なら父さんは負けないが団体戦ともなると大分不利だな。なんせ、最上位とはいえ元だから。今は最下位だ。数が違う。」
なるほど。そう言われれば確かにそうだな。元名門と現名門じゃそりゃ戦力は違うわな。
「じゃあどうするんですか?」
「戦争になることは間違いないだろうな。」
俺は無意識にか唾を飲み込んだ。戦争という単語は日本にいた時ならほぼほぼ無縁だったからだ。平和だったからな。
そんな元平和民族の俺がいきなり戦争が始まると言われてもピンと来ないだろう。
「ベル。お前はどうする?参加するか?」
参加しない選択肢があることに少々驚いた。だが俺の脳内にあるのは一つだった。
ーこれ、王級魔法使うチャンスじゃね?
王級魔法は軍一つを滅ぼす力を持つ魔法。それは戦争ではだいぶ有効なはずだ。ふむ。試すにはもってこいかな。
「やります。試したい魔法があるので先陣に行かせてください。」
「先陣!?それはなりません!」
俺の先陣宣言に慌てて止める執事。だがそれを無視してザクスの目を見る。
「…初陣で先陣か…。まあいいだろう。その代わり怪我すらするなよ?」
死ぬなよ?的な言葉が来るかと思えばまさかの怪我すらしてはいけないとは。
俺はニヤリと笑い頷いた。
なぜか俺はこの時、負ける気がしなかったのだ。どこからその自身が湧いていたのかどんな敵でも倒せる気でいた。
それは天界王級魔法を覚えたからなのか、相手への知識がなかったからなのか。自分の力を過剰意識していたからというのは間違いなかっただろう。
その後ザクスは偵察部隊を出し、フォルネウスの動きを監視させていた。戦争の準備をしながら偵察部隊の帰りを待ち、一週間が経った。ついにフォルネウスが進軍を始めたとのことだった。
ついに戦争が始まったのだ。
先陣はたった五千。相手の総力は約五万。圧倒的不利だが軍の士気は高かった。魔王の息子がいると言うのもあるだろうが俺の態度が余裕をこきすぎて負けるイメージが湧かないらしい。
俺は先陣の後方に行き、出発した。
フォルネウスの軍に奇襲をかけて、敵の数を減らし撤退するという作戦だった。
あたりが闇に包まれ、火無しでは何も見えなくなった頃。作戦を開始した。
ー唸る雷鳴!!
俺は覚えたての王級魔法をぶっ放した。黒い空がさらに濃くなりゴロゴロと音がする。そして数秒。ほんの数秒だけ無音になった。次の瞬間、鼓膜が破れるかと思うくらいの音がし、黒い雲から数百もの稲妻が走り敵陣に落ちていった。
いや、これヤバイわ。想像してたのよりヤバイわ。辺り一面焦げ焦げじゃん…。
敵味方両軍とも、俺の魔法に度肝を抜き俺をガン見してきた。見つめちゃいやよ。
「うおおぉ!サーベルト様に続けええぇ!!!」
味方の軍の声をキッカケに両軍共気を取り直して武器を握り直す。
ちなみに今の攻撃で敵の軍は1/10は減っただろう。その事実が余計俺を調子に乗らせたのだった。
ふふふ、俺超強いぞ…負け無しじゃないか…!誰が来てもコレなら負けないぞ!
うっひゃっひゃっひゃ!と笑いながら王級魔法を発動し続ける。ちょっと疲れた、休憩休憩。と岩にもたれ座って戦争の様子を眺めていた。
すると俺の目の前で味方軍が吹っ飛んだ。巨大な爆発によって。
はっ!?今の王級クラスの魔法じゃないか!!敵にもいるのかよチート系が!聞いてないよ?そんなの。
俺も負けじと王級魔法をぶっ放す。
休憩なんてしてる暇ないね!
戦場は混沌状態。俺と敵の王級魔法クラスのぶつけ合い。まるで運動会のようだ。
王級魔法じゃラチがあかないぞ…。
と、そこで俺が考えたことを試すことにした。王級魔法混ぜてみるか。
業火絢爛と唸る雷鳴を混ぜ混ぜして、爆ぜし雷鳴と命名しよう…!
ーー喰らいやがれ!爆ぜし雷鳴ッ!!
『聖級魔法【爆ぜし雷鳴】を取得しました。』
王級から聖級に上がった…。よ、予想通りだぜっ!
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《ステータス》
サーベルト・ルシフェル・アラディア
種族:魔族
称号:無し
使用可能魔法:天界聖級魔法
スキル:火炎操作・水流操作・風力操作・雷光操作・暗闇操作・土塊操作・無詠唱・自在変化・戦意喪失・魔獣支配
魔法属性:火・水・風・光・闇・土
剣術レベル:6
魔法レベル:6
攻撃力上昇Lv.3
防御力上昇Lv.3
魔法量上昇Lv.4
誤字などがありましたら教えていただけるとありがたいですm(。_。)m