帝国最強部隊に助けられた件
何かの声がして俺は目を覚ました。数名の足音が聞こえる。
「っ!生きてるぞ!?おい。おいガキ!くそっ!!治癒魔法をかけろ!」
「くっ…怪我が深すぎる!」
そんな会話が聞こえてくる。俺はそこで本日二度目の気絶をした。
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帝国最強部隊と呼ばれる00部隊。それはミレファンダ大陸最南にある国、戦闘帝国レイドリアの戦闘部隊に存在する伝説の部隊。その名を聞いた悪人は怯え上がり、善人は笑顔を浮かべる。その部隊が動けばその問題はすぐさま解決され他王国との戦争であろうとすぐに蹴りがつく。
そんな生きる伝説の部隊にある任務が入った。
「魔界に行き、魔の森の迷宮へと入れ。そこの最下層にある魔石がとても高価なのだ。」
レイドリア帝国皇帝 ゼベール・オルズが命じたのだ。すぐに00部隊は魔界へと転移し迷宮へと向かった。
一層にいた敵はソコソコだった。二層、三層。どんどん下層に行くにつれ魔物も強くなっていった。
最下層付近までいくと00部隊ほどの実力がなければどんなに優秀な部隊やパーティーでも全滅レベルだろう。
残り最下層まで数階。といった所で00部隊でさえ、手こずる魔物が出てきた。だが今までに入った迷宮とは違い、数が少なかった。少し疑問だったが気にせず降りていった。
疑問はすぐに解けた。ある空間に入った時だ。その空間を埋めるかのごとく大量の魔人がいた。大群ではない。何故なら大半の魔人が既に死んでいたからだ。
空間の中心部には生きている魔人どもが重なり合って積み上がっていた。00部隊はその魔人どもを全て倒した。死んでいる魔人よりも少ない量だったが一体一体が化け物のように強かった。
数時間かけて殲滅が終わり、積み上がった死体を退かした時に部隊の一人が何かを発見した。人間の手だった。
「きっと強き者達がこの迷宮に挑んだが敗北し、魔人に食われていたのだろう…。」
完全に死んでいると思い、せめて亡骸だけでも…。と引っ張り出した。出てきたのはガタイのゴツい騎士でも、熟練の冒険者でもなかった。
出てきたのは銀髪の髪の小さく幼い少年だった。だが手足はかじられ欠損し所々、骨まで見えていた。
00部隊は困惑した。
何故子供がこんな所にいるのだろうか?
親に付いてきたが親は逃げ子供だけが取り残されたのだろうか?
それとも親はもう既に食われて亡骸さえ残っていないということなのだろうか?
部隊の誰もがその少年が魔獣一匹と来ているとは誰も思わなかった。それはそうだろう。誰がどう見てもその少年は剣すら握らなさそうなか弱い少年だったのだから。
「可哀想に…。これから未来があるこんな子供が…」
どんよりとした空気がその場を支配していた。その時、そこに横たわっている少年の手が動いたのだ。
「…今、手が動かなかったか?」
「そんな馬鹿な。この状況で生き残れるはずがないだろう…」
何を馬鹿なことを言っているんだ。そう言わんとする目が男に刺さる。
「…ぅ…」
少年が声を発した。生きていたのだ。
「っ!生きてるぞ!?おい。おいガキ!くそっ!!治癒魔法をかけろ!」
「くっ…怪我が深すぎる!」
治癒魔法をかけ出したがここまで深い怪我なら治癒しきれないだろう。と思っていたが見る見るうちに怪我が塞がり出す。
治癒能力が上がったのか!?というように治癒している女を見ると、フルフルと首を振る。
少年の力だというのか?そんなはずは…。この状況で生き残れたのがこの少年の力だとするならば相当な化け物となる。だからそんなはずはない。00部隊はそう思っていた。ある一人の男を除いて。
(この髪色…もしや…)
その男は00部隊隊長、ジス・ヴァールだった。
彼が頭の中に思い浮かべたのは銀髪が似合う綺麗な女神だった。
(いや、まさか…な。)
ヴァールは自分の考えを否定し、この少年が目を覚ますまでとりあえず、この空間で待機。そう命じ、隊員たちはその場に座り込み休憩をしだした。
それから二時間くらいたった頃にその少年はついに目覚めた。
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目を開けると知らないオッサンとお姉さんに囲まれていた。転生してきた時に似た光景だな…まぁ美女はいないけど。
「…えっと。どちら様ですか?」
目覚めて早々の一言目。周りのオッサン達は少し驚いた顔をしてから苦笑いをしていた。
「ずいぶんしっかりした子だね。それよりどうしてこんな所にいたんだい?」
「森に敵がいなくなったので迷宮に入ったらこうなりました。」
オッサン達は、は?という顔をしていた。
「えっと…お父さんかお母さんは?一緒に来たんだよね?」
何を言っているんだ。父親は多分家で寝てるだろ。母親は庭にでもいるんじゃないか?
「一人で来ましたけど…?あ、もしかして助けてくれたんですか?ありがとうございます。では、僕は帰りますね!」
「一人!?って、待て待て待て待て。帰るって本当に一人で帰るってのか?」
「え、そうですけど…」
何が言いたいの、この人。もしかして保護者がいないと入れない迷宮だった?
「一人でどうやってここまで来たんだ!?魔物が沢山いただろう!!」
あ、なるほど。俺がここまで来たことに驚いているようだった。そりゃ五歳児が一人で迷宮に来たら怪しいか…。
「僕の飼ってるペットが守ってくれました。」
「は…?ペット!?」
俺とオッサン達が喋っている後ろで無言で立っている強面のオッサンが俺をじっと見ていた。俺、そっちの趣味ないからね?
「よお少年…嘘はつかなくていい。どうやって一人で来た?」
無言で立っていたオッサンが口を開いた。嘘がばれていたことより一人で来たということを信じていたことに驚いた。
「…普通に剣で敵を切り倒してきましたけど。」
このオッサンに嘘は通じない。俺はそう思いちゃんと白状した。俺の言葉にそのオッサン以外の人達は「そんな馬鹿な。」という顔をしている。
「……少年。名は?」
オッサンは少し考えてから俺の名を聞いてきた。正直に答えたほうがいいのだろうか?それとも田中です。とか鈴木です。とありきたりな名前を言ったほうがいいだろうか?あ、この世界に田中とか鈴木はいないか…。
「…サーベルト・ルシフェル・アラディアです。」
俺は正直に言った。するとそのオッサンは納得がいったかのようにニヤリと笑った。
「そうか…。ルシフェル・アラディア、か。ふはは!俺の名はジス・ヴァールだ。俺は君の両親を知っている。」
ジスの言葉に驚いたが、俺よりも周りの00部隊の人達のほうが驚いている様子だった。
「た、隊長…、その少年と知り合いですか?」
「昔な…。この子の母親はアメル様だ。」
ヴァールは俺の髪を見て懐かしそうに目を細めた。
アメルという名を聞いた瞬間に00部隊の人達は目を見開けた。俺の母親をなぜ知っているんだろう。
「ところでサーベルト君。魔法はどれほど使えるんだ?」
「初級魔法しか使えませんけど。僕は魔法の才能がないんです。」
「…ん?いや、そんな事はないはずだが?」
このオッサンは何を知ってるんだよ。中級魔法使ってもショボいんだよ。
「俺は昔君を見た事がある。その時、君は膨大な魔力に包まれていた。それに君の両親共に魔法の才能があるのに君がないはずがないだろう。一度初級魔法と中級魔法を使ってみてくれないか?」
え?オッサン何言ってるの?魔力量と才能は関係ないだろ?俺は渋々初級魔法を使った。みんな大好き【火球】だ。
「なかなか凄い精度だな。」
初級魔法ではそう褒めてくれたヴァールだったが俺が中級魔法を使った時に、顔を歪めた。わかったか俺の魔法才能の無さを!
「…やはり才能がないわけじゃないな。」
……え?才能ないと思って諦めてたんだけど?
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《ステータス》
サーベルト・ルシフェル・アラディア
種族:魔族
称号:無し
スキル:火炎操作・水流操作・風力操作・雷光操作・暗闇操作・土塊操作・無詠唱・自在変化・戦意喪失・魔獣支配
魔法属性:火・水・風・光・闇・土
剣術レベル:6
魔法レベル:2
攻撃力上昇Lv.3
防御力上昇Lv.3
魔法量上昇Lv.3