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第78話 ルナティアとソフィーティア

リアの特訓を開始してから、約二時間ほど経過して。

俺は、相変わらず大暴投を繰り返しているリアの相手をしていた。

勿論あの痛みをまた味わいたくはないので。盾の大きさを変えて足元までカバーしている。


鉄球は魔力の操作で、ある程度軌道修正が出来るのだが。

その修正が追いつかない方向にまで飛んでしまっては、魔力操作の意味が無くなっている。


「リア。疲れていないか?」


「はい……だいじょうぶです」


もう、30球近くは投げているはずだが……

確かに疲れている様には見えないが、投げた後にふらつくのはどういう事だろうか。


「ねぇ。思ったんだけどさ」


「うん?」


考え事をしていると、近くで見ていたトリアナが話しかけてきた。

他の女性陣は、エリスさんとティータイムをするためにバラ園の方へと行っている。

ルナはリアの側に居たかったみたいだが、アリスが無理やり連れて行った。


「リアちゃんは、尻尾はどうしたの?」


「尻尾?」


「しっぽは……まほうで消してます」


「それってさ。見えなくなるだけじゃないよね」


「はい、さわることも……できなくしています」


「だよね。私と寝ていたときも、尻尾が邪魔してる感じがしなかったし」


「いったい何なんだ?」


いまいちトリアナの質問の意図がつかめなかった。


「リアちゃんのことをずっと見ていたら、バランスがわるい感じがしたんだ」


それは俺もずっと思っていたな。鉄球はそれほど重くないし、疲れているわけでもない。

でも実際には、リアは鉄球を投げた後必ずふらついていた。


「体を支える尻尾がないから……投げるときに、バランスが崩れているんじゃないの?」


「あ……」


「あぁ……」


その言葉を聞いて。リアと俺が、トリアナの伝えたかったことを理解した。

普段から体のバランスを支えている尻尾が、今はないから。

物を投げたりすると、ふらふらしているわけだ。


「けど……リアは尻尾を消したまま、走ったりとかしてたよな?」


この屋敷に来た日の晩餐の夜に、全力疾走をして俺を振りきっていたし……


「歩いたり走ったりするのはともかく。その鉄球をなげる動きをやり始めたのは、昨日からだから……」


「慣れていないせいで、バランスを崩していたわけか」


「そうかもしれません……この前も走ったとき、コケました……」


走って転んだリアにすら、俺は追いつけなかったのか……

どんだけ足が速いんだよ……


リアはトリアナの話を聞いてから少し考えた後。

鉄球を地面においてから尻尾を出して、投げる動きを練習していた。


しかし……尻尾を消す魔法って、単純に見えなくなるだけじゃなかったのか……

攻撃魔法は使えないと言っていたが、尻尾を消す魔法のほうが難しいんじゃないのか。


その後、またお願いしますとリアが言ってきて特訓を再開した。

尻尾を出したリアはバランスを崩すこと無く、俺の盾に鉄球をガンガン当ててきていた。



=============



「それじゃ、この辺りで休憩しようか」


「はい。ありがとうございました」


何球かのリアの投擲を受けた後、頃合いを見てそう提案する。

そしてリアとトリアナを他所にして、俺は自分の魔法の練習をすることにした。


ルナの魔法や、人が使っていた武器以外で成功させた物といえばアレしか無い。

俺は頭の中でイメージをし、そして再び銃を創造する。

創りあげることは出来たのだが。俺の手の中に出てきた二丁の銃は、やはり本物ではなく玩具だった。


「ぬーん……なぜ成功しないんだ……」


「どしたの?」


俺が唸りながら悩んでいると、トリアナが声をかけてきた。

銃の形をした物はすぐ作れるが、弾がなぜか想像できずに玩具になっていたことを説明した。


「うーん……よくわかんないんだけど。その銃ってさ、火薬で弾を飛ばさないとダメなの?」


「それ以外にどうやって飛ばすんだよ」


「魔法の弾とかは?」


「む……魔法の弾?」


「弾はイメージが出来ないけど、魔法はイメージできるんだよね? なら、魔法の弾を飛ばせる銃を作るとか……」


なるほど……

その発想はなかったわ……


「でも、それは手で魔法を放つのと変わりはないよね」


「いや、そうでもない」


「そぉう?」


俺の魔法は、強めの魔法だと詠唱が必要だが。

それが必要のない魔法でも、一々手をかざして狙いを定める必要があるし。

何よりも、最近は威力を抑えないと悲惨なことになる。


だからできるだけ、近接武器をだして応戦をしていわけたが。

遠距離武器で魔法の代わりができるのなら利点もある。

それに……魔法銃ってかっこいいじゃん。


手に持っていた銃を消し、再び俺はイメージを作り上げる。

できるだけ手の延長のような感じで願い。

自分の魔力を消費し、魔法の弾を飛ばせる銃を創造した。


「できた……」


「みせてみせて」


二丁の銃のうち一つをトリアナに渡して。俺はもう一つの銃を空に向かって撃ち放つ。

どうやらうまく出来たようで。二発、三発と次々撃ってみた。

リアが、空に打ち上がる魔法の弾を見ながら感嘆の声を上げていた――


うるさい音でも鳴るかと思ったが、意外と音は小さいな。


パスンパスンと小気味よい音を聞きながらそんな事を思っていたら。

十発ほど撃ち上げた辺りで、砲身が爆発した――


「うおっあぶね……」


「ひゃぁぁ……」


破裂したというよりも、銃の先が空中に吹き飛んでいった。


「リア、怪我はしなかったか?」


「はい。だいじょうぶです」


「強度がダメだったっぽいね」


トリアナが手に持っている銃を、コツンコツンと叩きながらそう言う。

俺はため息を吐きながら、その言葉に肯定する。


創ることは出来たが、問題は強度か……

鉄っぽいのはイメージしたが、硬さはそんなに考えていなかったな。

今度はそっちの方を重視して想像してみるか。


そんなこと思いながら魔法を使い、三度目に創りあげた銃を手にする。

俺の手には金色と銀色に輝く、派手な色をした二丁の銃が出来上がっていた。


「うわー……これはまた、ハデだね」


「そうだな……しかもやたらデカイし……」


「クロさま……カッコいいです」


「そ、そうか」


頑丈さをイメージして完成した銃は、先程創り上げた物よりも。

二倍ほどの大きさで、そしてキラキラと光り輝いていて派手だった。

試し撃ちもしてみたが。壊れもしないし、反動も少ない。


だけどさっきよりも威力が上がって、音も少し大きくなっていた。

目を輝かせながら見つめてくるリアに若干照れながら。

俺は銃の威力と音を下げるように調整していた――


「その銃の名前は、何て言うの?」


すべての調整を終えて満足していた俺に、トリアナがそんな事を聞いてきた。


「名前? 考えていなかったな。必要か?」


「名前があると、愛着がわかない?」


「確かにそうだな」


名前……名前か……

金色と銀色だし、ゴールドとシルバー……却下だな。

となると……


ふと自分の脳裏に、二人の女性が思い浮かぶ。


「金色がソフィーティアで……銀色がルナティア……で、どうだ?」


「すばらしいです」


「アイタタタタタ……」


俺の言葉にリアが賞賛していたが。トリアナは、自分の額を抑えながらそんな事を言っていた――


「武器に恋人の名前をつけるとか……クロちゃん。イタイ人みたいだね」


「う……いいじゃないか別に。それとも他に何か案があるのか?」


「クロちゃんがそれでいいなら、いいんじゃない?」


こうして俺の銃の名前は、ルナティアとソフィーティアに決定した。


「クロさま……いつか私の名前のぶきも、つくってください」


トリアナが別に文句はないと言って、リアは自分の名前の武器も創って欲しいと言ってきた。


「あ、ボクの名前もつけて」


名前を痛がっていたくせに付けて欲しいのかよ……

まぁ、別にいいが……


「リアとトリアナの名前の武器か」


「りあとーなで、おねがいします」


そういえばそんな本名だったな。


「ボクはトリアーナ」


「は……?」


「え……?」


トリアナの言葉に、俺とリアが揃って疑問の声を出した。


「トリアーナ?」


「そうだよ。ボクの名前」


トリアーナにリアトーナ……

前々から似ている名前だと思っていたが……偶然か?


「リアの本名とソックリだな」


「リアちゃんのお母さんが、ボクの名前に似せて名付けたんじゃない?」


あぁ、なるほど……アナグラムか。


「リアはトリアナの本名を知らなかったのか?」


「はい……しりませんでした」


「ボクって、そんなに知名度が低いのかな……」


自分の世界の神の名を知らないのに……巫女?


トリアナがリアの言葉を聞いて落ち込んでいたが。

俺はソッチのほうが気になっていた。


まぁ、女神の名前から取って、娘に名付けたのなら。

リアの母親は信仰深かったのかもしれないが。




新しい武器を作り、三人で雑談をしながら盛り上がっていたが。

数日後に、この銃をすぐに使うことになるとは……

この時俺は、夢にも思っていなかった――

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