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第60話 俺の前世が神と魔皇と勇者だった件


女神たちに頼み事をした後、俺は前世の自分の事を整理していた


一人目は、名前は知らないが、やたら偉そうな奴で……

二人目は、朝宮黒斗って名前で、魔王にベタ惚れしてた勇者だろ。

三人目は、昼間黒愛という名の神様で……しかも性別は女だった。

四人目は、夕城黒乃で、女神と結婚したり、色々あって魔皇を名乗ってたし。

五人目は、夜神蔵人……こっちはトリアナが間違えて念入りに封印したから、どんな奴だったのか知らない。


波乱万丈ってレベルじゃないよな俺の前世……

なんか……全員無念の内に死んだような感じがするし……

黒愛の方はよくわからんが、これで最後の蔵人がとんでもない人生送ってたらどうなるんだ……



「それで、これからどうするのかな?」


考え事をしていると、トリアナがそう聞いてきた。


「結構長い時間話をしていたし。何か行動するにしても明日からかな」


自分の持っていた懐中時計を見ながら、二人にそう言った。


「そうだね。それじゃ、ボクお腹すいたからご飯を奢ってよ」


「え……おれが?」


「当然じゃない。ボクは無一文だからね」


「占いの時に、やった金はどうした?」


「あのお金? その日のうちに豪華な食事になったよ」


「そ……そうか……」


2~3日分は飯が食えそうなくらいの金額を渡したんだが……

まぁ。あれから一週間は経ったみたいだし、トリアナには世話になったからな。



俺たちは宿で晩飯を食べて風呂に入った後、今日は早めに寝ることにした。

宿の公衆浴場でトリアナがはしゃぎ回って、大変だったとソフィアが寝る前にそう言っていた。


子供なのは見た目だけじゃなかったのかよ……


ちなみに俺たち三人は一緒に寝たが、ソフィアとは何もなかった。トリアナが居たしな……

というか、ソフィアはまだわかる……が、なぜトリアナまで俺のベッドで寝たんだろうか……


俺は女神様二人に添い寝をされるという感じで……

ありがたいのか罰当たりなのかよくわからないイベントを起こしながら就寝についていた――



=============翌日・昼=============



現在、俺とソフィアは街中を観光しながらウロウロとしていた。

アリスたちが帰ってくるまで、移動することもできないし。

この街に来た時に聞いた、冥王と勇者の噂話の事も気になっていたからだ。



本当は三人で観光をしようと思っていたが。

宿から出る時に突然トリアナが「あ……シアちゃんから交信がきた!」とか……

まるで電波でも受信したような感じで宿に残り、俺とソフィアだけで外出した――



「事情を知らないやつから見たら、ただのイタい幼女だよな……」


「クロード様?」


「あぁ、なんでもない」


「そうですか。それにしても、活気が凄いですね~」


「そうだなぁ……」


商人が発展させた街だから、店や露店が数えきれないほどあるし。

いろんな国から買い付けに来ているのか、人もあふれるほどいっぱい居る。



「ソフィア、人混みに酔ったりしてないか?」


「私は大丈夫ですよ。流石に人が多いので、クロード様と逸れないようにするのが精一杯ですが……」


「よし、手をつなごう」


「あ、はい……」


その言葉を聞いた俺は、彼女の手を優しく握った。ソフィアは少し照れていたが、俺の手を握り返してくれた。

二人で手を繋いだまま露店を回る――


うん。まるで、デートみたいで気分は悪く無い。



「しかし……冥王の話は全く入って来ないなぁ……」


「異世界の勇者の事は、噂にはなっていましたね」


ソフィアの言うとおり、この世界に召喚された勇者の噂話はちょくちょく入ってくるが。

冥王のことは、全く噂になってはいなかった。


「別に勇者のことなんて、どうでもいいんだがな」


会いに行こうとは思わないし。もし会ったりしたら、俺の中の黒乃の感情が爆発しないとも限らない。


「勇者の噂話はよく聞くが、この世界の魔王の話って、まったく聞いたことがないよな……」


「言われてみれば……そうですね」


「やっぱり……城の玉座とかで、偉そうに踏ん反り返ってたりするのだろうか……」


「何のお話ですか?」


「いや、別に…………ん? あれは……」


ソフィアと歩きながら、色々な露店を見て回っていたら。

きらびやかなアクセサリー類をたくさん売っている、アクセサリー商の露店を見つけた。


「いらっしゃい」


俺たちがその露店に近づいて行くと店の主人が挨拶をしてきた――


「これはまた……とんでもない美しい人をお連れで……」


店の主人が、ソフィアを見て息を呑んでいる。


「アクセサリーですか。綺麗ですね~」


「あぁ、そうだな」


「お客さんも綺麗ですから、お安くしておきますよ」


「ありがとうございます」


商人がソフィアにお世辞を言っているなか、俺は色々な宝石類に目を奪われていた――


ソフィアに何かプレゼントをしたいが……

ここまで来るのに、結構散財しちまったんだよなぁ……


バルトディアに居た時は、三ヶ月間ギルドでかなり稼いではいたが。

旅に出てからは、仕事をしていないし……出費だけがかさんでいた。


「あ! いたいた!」


そんな事を考えていると、トリアナが俺たちを見つけて駆け寄ってきた。


「電波の受信は終わったのか?」


「はい……?」


出会い頭の俺の言葉に、トリアナは首を傾げていた――



「アクセサリーを見てたの? きれいだね~」


「あぁ」


「おやおや……こちらもまた……小さいですが……美人さんで……」


商人がトリアナを見て、こっちにもお世辞を言っていた。


「む……小さいはよけいだよ!」


「も、申し訳ない……お詫びとして、サービスいたしますよ」


「え? ホント? どれにしようかな~……」


曲がりなりにも二人は女神だからな。美しいのは当たり前だ。

てか、ちょっとまて……なぜ、トリアナの分まで俺が買うことになっているんだ……


トリアナとソフィアは、並べられているアクセサリーを、それぞれ興味深そうに見ていた――


意外にも……ブレスレットやネックレスよりも、指輪のほうが安いんだな。

俺としてはソフィアに指輪を贈りたいから、これは助かるが。


「ボクはこれがいい!」


トリアナはそう言って、エメラルドみたいな宝石が付いた指輪を手にしていた。


まぁそんなに高くないからいいが……


「ソフィアはどれがいい?」


「私ですか? そうですね……クロード様が選んでいただけませんか?」


「俺が……か……」


ソフィアにそう言われて、様々な宝石が付いた指輪を選ぶ――


うーむ……女性の機微なんてわからないからな……

どれを選べばいいのか……む……これは……

もしかして……ダイアか?


しかし高い……コレを買うと計画に支障が出るが……

けど、ソフィアに贈るならこれしか無いよな……

まぁいい、なるようになるさ。


「これをくれ」


「おぉ! お客様は中々お目が高い。毎度ありがとうございます」


俺は、ダイアモンドとエメラルドの宝石が付いた指輪を買って、ソフィアとトリアナにそれをプレゼントした。


「ありがとー!」


「ありがとうございますクロード様。大切にいたしますね」


二人は俺の背後で指輪を手につけて、それぞれウットリしている。

ダイアモンドの方は値段が高かったが、ソフィアには値段を見えないように買ったので、何も言ってこなかった。


そして……俺は二人には聞こえないように、アクセサリー商に小声で話しかける――



「あと……こっちも買うから……できるだけ安くしてくれ……」


「え……こんなにですか……」


「しっ……静かに……」


「あ、はい。これほどお買い上げいただけるなら……お安くしておきます」


「助かる」




かなりの出費になったが、まぁいいか。

二人も喜んでいるしな……というか……

ソフィアが右手の薬指に指輪をはめているのに……


トリアナ……お前は何故左手の薬指にはめているんだ……

普通逆だろ……


二人の女神を眺めながら俺はそんなことを思っていた――

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