表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/259

第57話 女神の失敗

「それにしても、やっぱりソフィアは美しいな……一目惚れして、俺が無意識に連れ去ったのもわかる……女神様にそんな事をするなんて、すごく罰当たりなことだとは思うが。俺は別に後悔なんてするつもりもないし、もう……ソフィアを手放したくはない。もしかしたら、他の神様を敵に回すことになるかもしれないが……俺が必ずソフィアを護ってみせる。あぁ……そうだ、外に出られたらデートをする約束だったよな。よし、今すぐに行こう! 場所が海じゃなくて、商人の街なのが正直残念だが……買い物を楽しむだけのデート、なんてのもアリだ。たった一日のデートだけで、済ますつもりなんかない。何回でもデートしてもいいし、毎日一緒に居るだけでも……それだけで幸せだ。君は彼女の生まれ変わりで、その前世の記憶を思い出せなくても……俺はそれもでいい。そうだ……俺は、たとえ何度生まれ変わろうとも……それが、たとえ悠遠であろうとも……ソフィアの事を想い続けているぞ! そして……君が側にいて俺が生き続ける限り、最後まで君を幸せにしてみせる……愛しているよソフィア……」


「あ、あの……どうか……お、落ち着いてください……クロード様……目が血走っておりますよ……」


「ハッ!?」


ソフィアに言われて、俺は我に返る――

なにか物凄い事をぐだぐだと言っていた気がする。



「す、すまない……何を言っているんだ俺は……」


「クロード様のお気持ちは、とても嬉しいのですが……まずは、クロード様の現状を整理しましょう」


「そ、そうだな……」


ソフィアに逢えたことに感動して、少し気持ちが先走りすぎたな、うん。

俺の状況か……体は特に異常はないから、何も問題はない。


あとは、魔導士と戦った時の……黒乃の感情か……それは抑えられているな……

トリアナが前世の記憶の封印とか言っていたが、黒乃の怒りを鎮めるためだったのかな?



「あ……そういえば、俺の中の黒斗の反応がないんだが……理由はわからないか?」


「黒斗様のことですか? トリアナ様が仰られていましたが、クロード様の中で眠りにつかれているそうです」


「眠ってる? 消えてしまったわけじゃないんだな?」


「はい。今でもクロード様の中に存在しているのは、私にも感じられますよ」


「そうか……それなら良かった。しかし、なぜ眠っているんだ?」


「大神王様の封印の修復をする時に。黒斗様が起きていらっしゃると、封印に巻き込まれる恐れがあるので。トリアナ様のお力で、一時的に休眠状態になされたそうです」


「トリアナの力で眠らされたのか……」


まぁ、消えたわけではないのなら良かった。

ルナのこともあるし、黒斗には絶対に消えてほしくはない。

だけど……すぐに目をさますことは出来るのだろうか?


「ソフィアもトリアナの力で、出てこれたのか?」


「私は……クロード様が意識失ってから、四日目の朝に、外に出られました」


「四日……それまでずっと、トリアナが一人で俺の面倒を見てくれたのか?」


「いえ。昨日までは、アリスさんたちも一緒に、クロード様のお世話をしていましたよ」


「え……昨日? アリスたちは昨日まで居たのか?」


「はい。昨日のお昼ごろに、この街を出発なされました」


何というすれ違い……

俺が起きたタイミングが悪すぎたな。

今から追いかけるべきか……それとも帰りを待ったほうがいいのか?

魔導都市まで、どれ位の距離なのかわからないんだよな。

それと……あの魔導士……そんなに日数が経っても腐らないのか……?



いろいろ考え事をしていると、俺のお腹がグゥっと盛大に音を鳴らした。



「腹減った……」


「宿屋の人に、何か食べ物を貰ってきます」


「あぁ。俺のお金を使ってくれ」


「はい、それでは行ってまいります。少しだけお待ちください」


ソフィアにお金が入っている袋を渡し、食事を貰って来てもらうことにした――


「う……んー……」


「お……大丈夫か? トリアナ」


ソフィアが部屋から出て行ってすぐに、トリアナが動き始めた。

今までずっと部屋の隅で、しゃがみ込んでいたんだ。



「あー……うん。ゴメン、ちょっと取り乱した……」


「ちょっとどころじゃなかったがな……あの脅え方は」


「いやー……昔の恐怖を思い出してさ……」


「昔の恐怖?」


「うん。キミの口から、あの名前が出るなんてね……」


大体の想像は付いていたが……



「昼間黒愛の事か?」


この名前を口にしながら怯えていたからな。


「そうだよ……キミの前世のひとりだね……」


「やっぱりそうなのか……」


あの女の夢を見た時、戦乙女を集めてハーレムを作っているとか……そんな内容を見たしな。

まさか、トリアナもその被害者だったのか? というか俺のハーレム志向って、この女が関係あるんじゃ……



「おかしいなー……ちゃんと封印したはずなのに、なんでキミは思い出しちゃったんだろ?」


「大神王の封印だったか? それは絶対にしなくちゃいけないことだったのか?」


「うん。大神王様に、お願いされちゃったからね」


「その大神王って……もしかして、アストレア様って名前か?」


「え……そこまで知ってるの?」


やっぱりアストレア様なのか……

俺の前世に、いろいろな時代で登場していたしな。


「俺の前世の夢で、何回か出て来たぞ?」


「ホントに? ボクたち神王を統括する偉大な御方だよ? 普通は中々お会いできないはずだけど」


偉大……

俺的には結構親しみやすい、人柄に感じたがなぁ……

あと、婚期を逃した女とか……可哀想な噂をされていたらしいな。

ついでに、中間管理職呼ばわりもされていた。



「俺の記憶を封印したのがアストレア様なら……何となく察しはつくな」


「わかるの?」


「まぁ。なんとなくだけどな」


「そっかー……」


黒乃のことだろうな……アイツの人生は凄まじかったからな……

アストレア様が、記憶を封印しようとしたのは納得できる。

現に俺が追いつめられて封印が緩んだ時……黒乃の怒りが俺の中から湧いてきたわけだし。



「だが、封印を修復したのになんで俺は覚えているんだ?」


「え……えーと……」


俺の言葉を聞いて、トリアナが視線を泳がせている。


「他の前世の記憶は思い出せるのに、俺の直前の前世の記憶だけが思い出せないんだが?」


「へ……? 直前のほうだけが思い出せないの……?」


「あぁ、そうだ」


「ま……まさか……」


「なんだ? 心あたりがあるのか?」


「そ……それは……ですね……」


トリアナの態度がどんどん怪しくなって、思いっきり挙動不審になっている。

俺は嫌な予感がして――



「おい……まさか……」


「まちがえちゃった……テヘ……」


トリアナは可愛く笑った後、片目を閉じて舌をぺろっと出していた。


「ちょ……おま……間違えた……だと……」


「いやね? 大神王様にお願いされて、キミが前世の記憶を思い出そうとしたら……抑えてくれって言われてたのだけどね?」


「だけど……?」


「ちゃんと……念入りに、思い出せないようにしたんだよ?」


「だが俺は思い出せるぞ?」


「えーと……たぶん……ついでにやったことが……不味かったのかもしれない……」


そう言って、トリアナは非常に申し訳無さそうな顔をしていた。


ついでにやったことって何だろうか。

嫌な予感が、猛烈に嫌な予感に昇華した――



「ついでに……何をしたんだ?」


「その……クロエのことを……絶対に思い出せないように……念入りに封印したのだけど……」


あの女のことをか。確かに、トラウマになっているようだったから……それは仕方ないが。


「キミが……直前の前世を思い出せないのに、クロエの方を思い出せるのは……」


そこまで聞いて、俺は察しがついた。


つまりあれだ……

俺の前世の記憶を封印するつもりが、蔵人の方の記憶だけを念入りに封印してしまったと……


「ないわー……ほんとないわー……」


「ご……ごめん……」


トリアナがそう言って謝ってきた。

正直言って、トリアナはこれでも女神様だから、俺の態度は不遜すぎると思うが――

なぜだろうな……俺は今の態度を変えようとは思わない。

見た目が小さい女の子で、言動も子供っぽいせいだからだろうか……


「あの……キミが思い出せる範囲でいいから、前世のこと……教えてくれる?」


「わかった」




神妙な顔をして俺にそう話しかけてきた女神に、黒斗と黒愛の事、そして黒乃の事を話すことにした。

一番最初に見た、名前がわからない男と青い髪の女の話は、何となく伏せていたほうがいい気がしたので話さなかった――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ