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第53話 追憶 其の二

「ボクはキミを愛している……サティナ……」


「私も……貴方を愛しています……クロノ様……」



人が居ない廃れた小さな教会で、二人の男女が結婚式を挙げていた――

二人はそれぞれ指輪を交換して、誓のキスをしている。


二人だけの結婚式とか……ロマンチックだなぁ……

俺もソフィアとこんな結婚式を挙げたいな。


結婚式を挙げた後、男女は家に帰り二人で愛を語り合っていた。

裕福とはいえない様な貧相な見た目の家だが、二人はとても幸せそうだった。


しかしこれ……何の意味があるんだ……

今までの流からして、あの男は俺の前世だとは思うが……

正直こんなものを見せられても、ジェラシーしか感じないぞ。



そんな事を考えていたら、二人がベッドの上で服を脱ぎだした――


おいおいおい……マジか……

やめて……

この先は見たくない……


体が動かないので、部屋から出て行く事も出来ない……

俺は目を瞑って両手で耳をふさいだ。


しかしそれは意味がなく、目を閉じても何故か視えるうえに。

耳をふさいでいても、二人の声が聴こえてきた……




回想シーン? それはあなた方の心の中にありますよ……

そう。目を瞑り想造するのです……

さすれば、あなた方もきっと想造能力者として目覚めることが出来るでしょう……



俺は意味の分からない現実逃避をすることにした。


そして翌朝――



俺はある意味、拷問といえるような時間を過ごし……

悶々とした気分で、朝を迎えることになった――



ひどい……ひどいよ神様……

俺と同じ顔をした男と、ソフィアと同じ顔をした女の……

あんなものを見せつけるなんて……ちょとsYレならんしょこれは……?


男と女は朝になっても、ベッドで横になりながらキスを繰り返していた――


このままでは俺の寿命がストレスでマッハなんだが……

ぬううう……はやく場面を変えてくれぇぇぇ……

む……? あ……あれは……



ふと部屋の扉に視線を向けると……

見たことがある少女が、扉の隙間から二人を見ていた。

銀色の髪をしていて、ゴシックドレスを着た少女……つまりルナである。


魔王女は見た!



「サティナ……愛している」


「クロノ様……愛しています」


おい、やめろ馬鹿……

ルナの教育上よろしくないものを見せつけるな……!


何時まで経ってもイチャイチャを続けている二人を睨んでいると。

ルナが勢い良く扉を開けて――


「ゆうべはおたのしみでしたね……」


その可愛い頬を膨らませながら、どこかで聞いたことのある様な言葉を口にしていた。

そして場面が暗転した――



ルナとこの二人の関係は何なんだよ、気になる所でスキップするなよ……

場面を飛ばすなら、最初から……アレがはじまる前に飛ばしてくれよ……



複雑な気持ちになっている俺の前に、幸せそうな夫婦が視えていた――

女が椅子に座っていて、そのお腹が膨らんでいた。

男は物凄く幸せそうな笑顔で、女のお腹を触っている。


随分と時間が経過したようだが、ルナが居ないな……

二人の邪魔をしないように出て行ったのか?

ルナの気持ちを考えると……心が……物凄く痛くなる……


居なくなったルナの事を考えていると、家の扉が開いて女性が入ってきた――



「どなたですか……?」


男が、突然家に入ってきた女性にそう尋ねる。


「そこに居る……彼女の上司ですよ」


「だ……大神王様……」


女が脅えたような顔をして、闖入者の名前を呼んだ。

というか、アストレア様だった。



……俺の前世に……アストレア様の登場回数多くね……?

こう言っては神様に失礼だが、妙な親近感が湧いてきたな……



「身構えなくてもいいです、彼女の現状を確認しに来ただけですから」


男が女の前に出たのを見て、アストレア様がそう言った――


「いきなり女神の仕事を放棄して、居なくなったと思ったら……これはまた凄い事になっていますね……」


「も……申し訳ありません……」


「そのお腹の子は、そこの人間との間にできた子供ですか?」


「はい……」


「はぁ……」


女神の返事を聞き、アストレア様は大きなため息を吐いた。


「人間と駆け落ちした挙句、子供を作った女神なんて……私の経験上……初めてですよ」


「申し開きもございません」


二人のやり取りを聞いて、男がアストレア様を睨んで――



「サティナを連れ戻すつもりですか?」


「現状を確認しに来ただけだと言ったでしょう、私に()を向けるのはやめてください」


人間と女神の駆け落ちか……

なぜそんな事になったのかわからないが……

随分と無茶なことをしているよな、俺も人のことは言えない気がするけど……


たっぷりと数時間の話し合いをした後、アストレア様は納得して帰ることにしたようだ。



「最後にもう一度聞きます。サティナ……貴女は後悔しませんね?」


「はい。私は今とても幸せです、後悔なんてする必要はありません」


「そう……ですか……少し……貴女が羨ましいです……」


「大神王様……?」


「私は……想いが叶うことが出来ませんでしたから……神界で……婚期を逃した女……なんて噂されていますよ……笑っちゃいますよね……」


うぅ……

泣けてきた……

何故こんなに美しくて優しい神様が、こんな目にあわなくちゃいけないんだ……


「貴女は幸せになってくださいね……いえ、もう十分幸せでしたね……心から祝福します」


「あ……有難う御座います、大神王様」


ウワァァァン……

誰か! アストレア様を幸せにしてあげて!

むしろ……俺が幸せにしてあげたい……!




俺が危ないフラグを建築していたら、場面が変わった――

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