第46話 それぞれの愛
「アリスたちはまだ戻ってこないのか」
《女の子の買い物は長いものだよ》
俺たちは宿屋へ戻って来て、部屋でくつろいでいた。
エレンさんは隣の部屋にいる、人数が多いので二部屋で泊まる事にしたからだ。
暇な俺は、ベッドに座って黒斗やソフィアと喋りながら魔法を創造していた。
『クロード様は、何をしているのですか?』
「あぁ、銃を創れないかなと……」
《結局、創ることにしたんだ?》
「弓がアレだったしなぁ……」
この街に来る途中の草原で、ステッペンウルフとか呼ばれている。
やたらかっこいい名前の狼に、俺たちは襲われたわけだが。
この狼の動きが早すぎて、うまく魔法を当てることが出来なかった。
アリスは狼が飛びかかってきた所を、反撃して斬っていたけどな。
俺とルナは魔法が当たらなくて、ほとんど見ているだけだった。
「エレンさんみたいに、使えればよかったんだが」
『すごかったですよね……』
《あれは、狩人だったよね……》
「狩りの時間です、とか言って目が輝いてたしな……」
そう。エレンさんは弓を使い、次々と狼を退治していた。
正確無比と言えるような動きで、弓を射る様はまさに狩人だった。
『走ってくる狼の眉間に、矢を射る事ができるなんて……』
「もはやすげーって言葉しか出なかったな、あの時は」
《そのあと蔵人も、弓を出して使っていたけど……》
「言うな……」
エレンさんの真似をして、自作した弓で狼を攻撃したが、かすりもしなかった。
弓を外しまくってヘコんでいた俺を、リアが慰めてくれてた。
《こうなったら銃を創ってやる、とか言ってそのままだったけど》
「あぁ、イメージはできているんだが……」
『難しいのですか?』
「微妙に……違う気がするんだ」
《試してみればいいじゃない》
「それもそうだな」
俺は頭の中のイメージを具現化させる。
「ハンドガン・クリエイト」
魔法を唱えると、ハンドサイズの大きさの銃が俺の手に現れた。
《出来たね……》
「確かに出来たが……」
俺は弾倉の中身を確かめた後、壁に向かって徐ろに引き金を引く……
パスンと小気味よい音がして、銃からプラスチックで出来た弾が飛び出た。
『これは……』
《完全にオモチャだね》
「ぐぅ……」
創造できたのがモデルガンだとは、期待していただけにショックが大きい。
《魔力が足りないとか?》
「イメージが偏っただけじゃないのか」
弾や火薬のイメージが上手く出来なかった。
《それもあるかもしれないけど、君は今どれ位の強さなのかな?》
「少しは強くなっているとは思うが……」
《魔力量も気になるし、ちょっとステータスを見せてよ》
「俺のステータス?」
《うん。僕は見たことがないからね》
「うーん……」
《見せたくない?》
「そんなわけじゃないが……」
俺も最近、あまり見ないようにしてたんだよな。
初めの頃は、強さの確認をするために結構見ていたが。
称号の部分がごちゃごちゃしているのを見て、直ぐに閉じたんだ。
それから何となく見るのをやめた。
「まぁいいか、称号がおかしな事になっていると思うが……」
『クロード様のステータスですか?』
「あぁ、そうだ」
『クロード様がすぐに閉じられたので、あまり見られませんでしたが』
「称号欄から嫌な予感がしたしな……」
《僕は気にしないよ》
「わかった。じゃ、覚悟しろよ」
《ドキドキ……》
口で言うのかよ……
「ステータス・クリエイト」
俺は久々にステータスの魔法を唱えた。
そして目の前に現れたステータスは――
名前:クロード・ディスケイト
年齢:17歳
JOB:クリエイトマスター
LV:52
HP:4600
MP:5800
物理攻撃力:1300
魔法攻撃力:5700
物理防御力:3700(装備補正)
魔法防御力:3200(装備補正)
装備:真紅のロングコート ハンドガン(玩具)
魔法:クリエイト
スキル:創造【覚醒】
称号:転生者 創造能力者 魔王の寵愛を受けし者 神王をその身に封印せし者
ディスケイトの名を継ぐ者 ロリコン 巫女好き 覗き魔 お姉さん好き
怖がり者 女神の鍾愛を受けし者【真祖の使徒】ハーレム志向
勇者の情愛を受けし者 ラッキースケベ 努力家【女神を偏愛する者】
混ざり合いし者 巫女の恩愛を受けし者 獣人に認められし者 奴隷の主人
女神を束縛する者【忘却者】エルフの慈愛を受けし者 幸せを探求する者
【宿命に翻弄されし者】【運命に誘われし者】【 】【 】
やっぱり称号がひどかった……
『凄いことになっていますね……』
《うわぁ……なにこれ》
「だから言っただろ……」
《まず……どこからツッコめばいいかな》
称号の最後が妙なことになってるし、カッコの意味がわからないが……
真祖ってルナのことだよな? 使徒ってなんだよ。
「俺はいつからルナの部下になったんだ……」
《確かに、寵愛ってなってるね》
え……
そっち?
「使徒の方じゃなくて、寵愛なのか?」
《使徒の方もだけど……寵愛って、上の者が下の者を愛するって意味じゃなかったっけ》
そうなのか……
俺は生まれた時からルナの部下だったのか……
「ってなんでやねん!」
俺は誰も居ない方向に、腕を振った。
《僕の愛が重いとか言ってたけど……君の称号も中々……》
「愛が重いというか、愛が多いな……」
《これって、称号を獲得した順番に並んでるのかな?》
「獲得した順番か……最後以外はそうだと思うが」
『あの……クロード様』
「なんだ?」
黒斗と話していると、ソフィアが疑問をぶつけてきた。
『いつの間に……勇者に会ったのですか?』
「え……?」
《ホントだ……しかも何か愛されてるね》
ソフィアに言われてよく見てみると、確かに称号に勇者と書かれていた。
俺はこの世界にきて、まだ勇者に会ったこと無いが……
これはどういう事だ、知らず知らずのうちに会っていたのか?
しかし、それで愛されるのはおかしいよな……
「考えてみても、勇者になんて会ったことがないぞ」
『私もそう思いますが……』
《愛……ちょっとまって、仲間の女性陣の数と愛の数が同じだね》
「言われてみれば……偏愛を除いたら5つだな……」
『クロード様、5つとは何がですか?』
「あぁ。愛と書いてる数が、仲間の女性陣の数と一致しているんだ」
『寵愛、鍾愛、情愛、恩愛、慈愛……確かにそうですね』
「ルナ、ソフィア、アリス、リア、エレンさん……」
「女神はソフィアで間違いないし、獲得した順番的に情愛は……」
「アリスか!?」
『アリスさんが勇者?』
《アリスさんかな?》
俺たちは三人同時に声を上げた。
『私が先ですね……うふふ……』
《先……?》
まさかアリスが勇者だとは思わなかった。
そんな風には見えなかったし……
あ……
俺は前に行った神殿で、アリスが亡霊に襲われてた時の事を思い出した。
「ソフィア」
『何でしょうか?』
なにか喜んでいたソフィアだったが、俺は構わず声をかける。
「神殿で、アリスが亡霊に襲われてた時……」
『あ……』
ソフィアも思い出したようだ。
アリスに向かって、恨み言のように勇者って言ってたんだよな。
《蔵人、説明をお願い》
俺は黒斗に、前に行った神殿での出来事を教えた。
《その勇者の残した言葉ってのも気になるけど……たぶん、アリスさんは勇者だと思うよ》
「本人は否定していたぞ」
《自覚が、なかっただけじゃないかな》
それは自覚するものなんだろうか……
《僕や君みたいに、ステータス魔法で気づくことが出来なかったら。あとは、他人から勇者と呼ばれる事くらいしか無いと思うし》
「そりゃ、勇者らしい行動していなかったら呼ばれるわけないか」
《僕も自分が勇者だって気付いたのは、ステータスを見たからだしね》
そういえば、黒斗も勇者だったな……
俺はなんで勇者じゃないんだ……
いや、別に悔しくなんて無いぞ……
「まぁ。別にいいか、アリスはアリスだ。例え勇者だとしても、好きだという感情は変わらないからな」
『それで良いかと思います』
《そうだね、僕もそう思う》
あとはそうだな……
巫女は……最初はアリスの事だと思っていたが、位置的にリアの事か?
こっちもサッパリわからないな……
リアの故郷でわかるといいが……
「この、最後の方の称号とカッコはなんだろうな……」
『スキルのところにも、見慣れない言葉と一緒にありますね』
《意味はわかるけど、何だろうねこれは》
「覚醒……そんなスキルを使った覚えはないぞ」
《使ってみたら?》
どうやって使うんだよ……
願いの魔法みたいに、願えばいいのか?
俺は覚醒という言葉を、頭の中に思い浮かべ願ってみる。
【ロックされています】
「は……?」
《どうなったの?》
「なにか……ロックされていますって、言われたんだが……しかもソフィアの声で……」
『え……? 私は何も言っていませんが……』
《君が創った魔法だから……システムメッセージ的な声を、女神さまの声で代用したんじゃないかな?》
俺はどんだけソフィアが好きなんだよ……
まぁ……愛しているから、大好きなのは間違いないが。
「カッコはロックしてるって意味か……結局なにもわからないじゃん!」
《新しい人生に翻弄されているね……》
最後の称号はそういう意味なのか!?
《混ざり合いし者ってのは、僕のことかな》
「それっぽいな」
《あとは、君の身体ステータスの方だけど……》
黒斗が言い淀んでいる、魔力が少なすぎるのか。
これでも結構レベル上がったほうなんだけどな……
「ぶっちゃけどうなんだ?」
《ぶっちゃけると、全て弱いね》
「ぐふっ……」
《最低でも、レベル100は超えてもらわないと》
レベル100か、遠いな……それでも最低なのか。
「お前は生前どれ位あったんだ?」
《僕は、500は越えてたと思う》
無理ゲー臭が半端ないな!
冥王強すぎだろ……レベル500あっても勝てないのかよ……
「レベルを上げろと言われても、気が遠くなりそうだ……」
《ステータスを参考にするのもいいけど、情報を鵜呑みにしない方がいいと思うよ》
「どういう事だ?」
《このステータスは、君が理解しやすいように見えてるだけだと思うんだ。実際は違うけど、君の力はこれくらいだって数値化されてるんだと思う》
なるほど。戦闘なんてその時の感情や条件でいくらでも強さは変わるしな。
相手のステータスが俺より弱いからといって、必ず勝てるという訳でもない。
自分以外のステータスはまだ見えないけどな……
「それじゃ、称号も……」
《称号は正確だと思うよ》
「そ、そうか……」
《数値の方はHPやMPが0になったからといって、すぐ死ぬわけじゃないしね》
「そうなのか」
《もちろん0になれば倒れたり、気絶したりはするだろうけど……》
あぁ。魔力枯渇で倒れたことがあるしな、実際。
「しかしそれでもレベル500とか遠すぎるぞ……」
『500……クロード様の10倍ですか』
先が遠すぎて、どれだけ敵を倒せばいいのかわからない。
《強さも個人個人で違うし、あくまでも仮の目標だからね。僕よりレベル上をげなくても、僕を超える強さを持てるかもしれない》
そう考えれば、少しは気が楽になる……のか?
「まぁ、頑張るしかないか」
『応援しています、クロード様』
《うん、がんばってね》
気楽に言ってくれるな……
俺の中にいるから、応援しかできないのは仕方ないか……
解らないこともいっぱいあるが、一つ一つ解決していくしか無いな――




