第42話 旅立ち
「ルナ、リア……何だその服?」
「ん……ねこみみ」
「ローブ……です」
出発の準備が終わった頃、ルナとリアがローブを着て出て来た。
ルナが黒いローブでリアが白いローブを着ている。
そのローブのフードに猫耳が付いていた。
猫耳ローブ……
やばい……どっちもかわいい。
《かわいいよ、ルナ……》
お前は本当に、ルナにしか目がいかないな。
「小さい子に、人気がある外套よ」
「私も、もう少し若かったら着たかったのですけど……」
ルナたちを見ていたら、アリスとエレンさんも家から出て来た。
アリスは巫女服の上に、黒い外套を着ていて。
エレンさんは白い法衣に緑色のローブを着ていた。
うん、二人共綺麗だ……
エレンさんは可愛いモノ好きなのかな。
十分若くて綺麗ですよエレンさん、アリスも凄い綺麗だ。
また声が出なかったので、心の中でそう言った。
「そうか。まぁ、そろそろ出るか」
「そうね、いきましょう」
「ん……」
「はい」
俺たちは馬車に乗り、この街を出発することにした。
皆が馬車に乗り込んでいる時、何故かリアが亜竜と見つめ合っている。
なんだろうか、これは……
まるで……金融会社とかのCMみたいに、お父さんと子犬が見つめ合ってるような……
どうする?……俺!
「リ、リア……どうした?」
「えと……おもそうで、かわいそうです」
あー……確かに馬より小さい体格で、これはなぁ……
八人は乗れる馬車を引いているから、リアにはコレが可哀想に見えるのか。
「大丈夫だぞ、こう見えてもコイツはとっても力持ちなんだ」
「でも……目がうるうるしてます」
確かに亜竜を見たら、生まれたての子犬のような目をしていた。
おい、なんでそんな目をしている……
「グルルァ……」
「ぐるるぅ……」
そんな事を思っていると、亜竜とリアが鳴いた。
「ぐる?」
「グルァ!」
え……
会話成立してんの? これ。
「リア、こいつが何を言ってるのかわかるのか?
「はい、わかります」
「マジで? なんて言ってるんだ」
「えと……そんなに見つめられると、てれるぜおじょうちゃん……です」
『可愛い目をしているのに、変な言葉遣いですね』
《やたら男らしいね》
微妙に失礼な気がするが、ソフィアの言うとおりだ。
なんでそんなウルウルした目でその言動なんだよ。
照れるとそんな目になるのか……?
「グルル……グル……グルァ」
「えと……ばしゃを引くのはオレの生きがいだ。だから気にするなおじょうちゃん……オレの背にのってもいいぞ……です」
「そ、そうか……だが背に乗せるのは却下だ」
そんな危ない所に、リアを乗せたくない。
「チッ……」
「おい! 今コイツ舌打ちしたぞ!?」
『しましたね……』
《たしかに、したよね》
俺の言葉に、顔を逸らしながら亜竜が舌打ちをしていた。
「クロさま」
「なんだ?」
「この子のなまえは、何ですか?」
名前……聞いてないな。
ヘレンさんも言ってなかったしな。
「グルァ」
「ぐる?」
「名前を名乗ったのか?」
「えと……オレにはなまえが無い、おじょうちゃんがつけてくれ……です」
今の一鳴きでそんな長いことを言ったのか……
鳴き声の違いがよくわからん。
「なら、折角だから付けてやったらどうだ?」
本人がそう言っているなら、そうさせてやるべきだろ。
「亜竜種のグランドラグーンって種族だが、亜竜だと芸がないしな」
「ぐらんどらぐーん……じゃぁ……どらちゃんで」
「ダメだリア、その名前だけはいけない」
『その名前は駄目ですね』
《うん、だめだね》
「だめですか……じゃぁ……ぐらさんで」
グラさん……
これも微妙な気がするが……まぁいいか。
「グルルァ」
「えと……いいなまえをありがとな、おじょうちゃん……です」
「もう訳さなくていいぞ、リア」
「はい」
「グルァ」
「はい、よろしくおねがいします……ぐらさん」
お互い挨拶をしたっぽいリアを馬車に乗せ。
俺は御者の座る場所に乗って、街を後にした。
=============西の街道・道中=============
「ゆっくり景色を観ながら……いい旅だな……」
『そうですね……クロード様の横で、一緒に観たかったです』
「俺もだソフィア……お前と並んで座りながら観たかった」
《いきなり二人の世界に突入だね……》
《何か文句でもあるのか?》
《いや、そうじゃないけど……ちょっとね……》
気になるな……
ルナと一緒じゃないから、気にしてるのか?
俺は一人で座って、他の仲間は馬車の中でそれぞれ過ごしている。
グラさんとは会話できないし、俺は必然とソフィアと会話になるだけだ。
「ソフィアは外に出れたら、何がしたい?」
『そうですね……私はクロード様と、一日中デートがしたいです』
「いいなぁそれ、凄い楽しそうだ」
《…………》
『海にも行きたいですね……神界にはありませんでしたから』
「海かぁ……水着とか売ってるのかな、ソフィアの水着姿が見たい」
『もし売ってたら買ってくださいね、クロード様に……お見せします』
「あぁ。もちろんだ、楽しみにしている」
俺とソフィアは、二人の世界を作りながらずっと会話をしていた。
=============街道・夕方=============
「クロード、そろそろ野営の準備をしましょう」
日が沈みかけてきた頃、アリスがそう話しかけてきた。
「もうか? まだ明るいと思うが」
「テントの設置とかは、すぐには終わるけど……暗い中で、ごはんを食べることもないでしょ」
「確かにそうだな、わかった適当な場所で停める」
少し街道から外れた場所に、馬車を停めることにした――
「ひゃっはー……!」
「……っはー……!」
馬車が停まってすぐにルナとリアが飛び降りて、テントを設置していた。
馬車の中でも寝られるんだが……まぁいいか。
ルナもリアも、楽しそうにしているしな。
というか……何だ? 今の雄叫びは……
「クロード、火をおこしてくれる? スープを作るから」
「俺は別に、缶詰だけでもいいんだが……」
「女の子に、冷たい物ばかり食べさせちゃダメでしょ」
「す、すまん…そうだな」
確かにアリスの言うとおりだったので、俺は火をおこすことにした。
しばらくして……
食事の準備が整い、俺はさっそく缶詰を食っていたわけだが。
『美味しいですか? クロード様』
「う……その……な……」
《美味しくないの?》
「不味くはないが……旨くもない……」
《また、微妙な感想だね》
うん、微妙なんだ。
密かに楽しみにしていたわけだが、これは……
味は濃いが食べるとボソボソする肉と、味はうまいが臭いがキツイ魚の缶詰。
そして、当たり前だが全て冷めている。
「食べ慣れると旨いと思うんだが、今の俺には微妙過ぎる……」
そんな事を言っているとエレンさんとアリスが……
「私は、美味しいと思いますけど」
「大量に買ったのだから、ちゃんと食べなさいよ」
「わ、わかってる」
俺は微妙な顔をしたまま、食べ続けていた。
アリスが作ってくれた旨いスープが唯一の救いだった。
「ん……モグ……モグ……」
「ぐらさん、おいしいですか?」
「グルァ」
ルナは黙々と食べていて、リアはグラさんに肉の缶詰を与えていた。
肉だけじゃなく、俺的には魚も食ってほしいな。
食事が終わり、俺たちは早めに就寝することにした。
「それじゃ、最初はクロードで……次は私とルナね」
「むぅ……わかった」
「その次は、エレンとリアでお願い」
「はい、わかりました」
「はい……がんばります」
三交代制で見張りをするために、寝る順番を決めた。
話し合いで、ルナが俺と見張りをしたいと言っていたが。
最終的には渋々納得してもらった。
女性陣がそれぞれ、寝る前の挨拶をして。
俺は一人、見張りをすることにした――




