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第41話 護るべき奴隷


ヘレンさんとギルさんの案内のもと。

俺たちは、街の門の付近にある厩舎に来ていた。


「これがアタシの所有している馬車だ」


ヘレンさんに言われた馬車を見てみると。

幌付きの、商人が使うような結構大きな馬車だった。


『立派な馬車ですね』


《すごいね》


「随分と大きいですね……」


「あぁ、国に居た時から使っていたから古いが……詰めれば八人は余裕で乗れる」


これ、テントいらなかったんじゃないか……


俺たち五人が全員で乗っていても。

寝るスペースまで確保できそうな大きさだった。



「昔の獣人仲間と、金を出し合って買ったが……獣人の中には体のデカイ奴もいるからな。大きめのを買った」


「なるほど。でも……いいんですか? ヘレンさんとギルさんも、獣王国に行くのに必要なんじゃ?」


「俺たちは飛空船で行くぞ、俺も一応貴族だからな」


言われてみればそうだった。

飛空船に乗ることが出来るなんて、ちょっと羨ましい。



《蔵人……馬じゃないみたいなんだけど》


《え……?》


黒斗に言われて、よく見てみると。

馬車に繋がれていたのは、大きいトカゲみたいな生き物だった。

大きさは、馬より少し小さい。


見たことがない生き物だったので、ヘレンさんに質問をしてみる。



「あの。馬車を引いてる生き物は何ですか?」


「亜竜種のグランドラグーンだ、見たこと無いのか?」


「はい、初めて見ました」


亜竜……

竜人族とはまた別の存在なのか?


「竜って名前がつているが、竜人族とは関係ないな」


そんな疑問を思っていると、ギルさんが教えてくれた。


「馬よりは小さいが、力があって長距離移動できる体力もある。飯は一日、夜に一回与えるだけでいい。あまり食わないしな……水はそうでもないから、坊主たちが休憩する時にでも飲ませてやってくれ」


「わかりました」


ほとんど水だけでいいとは、随分と旅では助かるな……

馬より値段が高そうだ。



「オマエに貸してやるが、一つだけ条件がある」


「条件ですか?」


ギルさんと話していると、ヘレンさんが条件を提示してきた。



「条件は。オマエが好きな女を、何が起ころうと守り通すことだ」


「それは……はい、必ず護ります」


「ただ守るだけでは駄目だ」


「え……?」


真剣な顔をしたヘレンさんが言葉を続ける……



「いいかボウズ、よく聞け……好きな女を守ることも大事だ。だが、命にかえても守るなんてことは言うな……自分の命の意味を軽く見て、女を不幸にする奴はアタシが許さない」


自分の命にかえても護る……

確かにその先は、お互い不幸にしかならない。



「わかりました、俺の命も好きな女も必ず護ります」


「あぁ、それでいい」



《あはは……耳が痛いね……》


《黒斗……》


《君は……僕みたいになっちゃダメだよ》


《あぁ、わかってる。それに、俺はお前の生き様を否定する気はない》



《ありがとう……》


黒斗があの選択をしなければ、ルナは生き残れなかった。

自分の生命を賭してまで、ルナを異世界へ飛ばした事……

俺に、それを非難する資格など無い。



その後もギルさんやヘレンさんと色々話した後、俺は家へと戻った。



=============バーンシュタイン邸・庭=============



「ど、どうしたんだ? 何かあったのか?」


家に戻った俺は、開口一番にそう言って慌てて駆け寄る。

庭で見た光景が異様だったからだ。

庭の真ん中に、何故かリアが座り込んでいて。

そして、他の三人がそのリアを囲んでいた。


「クロ……おかえり」


「おかえりなさい、クロードさん」


「おかえり……ってアナタこそ、どうしたのそれ……」


ルナとエレンさんが挨拶をしてくれて。

アリスは挨拶の途中で、俺が乗ってきた馬車が気になったようだ。



「あぁ。ギルさんの友人が、俺たちの旅用に貸してくれたんだ」


「そうなの? 兄さんに、そんないい友人が居たのね……」


ギルさんはヘレンさんの事を、まだアリスに紹介していなかった。

ヘレンさんが自分は獣人だから、心の準備が出来るまで待ってくれと言ったそうだ。

野性的な見た目で、何気に繊細な心を持った人だった。



「それより、リアはどうしたんだ?」


「それが……」


「クロさま……おかえりなさいです」


「あぁ、ただいま」


アリスに訪ねていると、リアも挨拶をしてくれたがその顔が落ち込んでいる。

そして俺は、リアが手に持っている物に気がついた。

俺がリアから外して、部屋の机の上に置いていた隷属の首輪だ。


「なんでそんな物、持ってるんだ?」


「……」


『何があったのでしょうか』


《どうしたんだろうね》



「エレン、ルナと一緒に荷物を馬車に積み込んでくれる?」


「わかりました、ルナさん行きましょう」


「ん……わかった」


返事をしないリアを見ていると。

アリスが人払いするかの様に、二人を遠ざけた。


「リア。どうしてもと言うなら、ちゃんとクロードにお願いしなさい」


「……」


お願い?

何なんだ一体……



「あの……クロさま」


「何だ?」


「この首輪を……わたしにつけてください」


「は……?」


「アナタの奴隷になりたいそうよ」


意味がわからなかった俺に、アリスがそう言ってきた。



「どういう事だ?」


「アナタから、離れたくないからだって」


「離れたくないって……」


リアを親元に帰すために西に行くことにしたのに。

そんなことを言われるとは思わなかった。



「わたしは……人間のせかいがこわいです……でも……クロさまのそばなら……こわくありません」


「それが、奴隷になる事と関係あるのか?」


「はい……」


俺の奴隷になると安心できるのだろうか?

そんな事を考えているとアリスが……



「隷属の首輪をつけた奴隷は、その主人の完全な所有物だから……他人が手を出すことは、固く禁止されているの。リアは尻尾を消しているから、人間に襲われることはない思うけど……やっぱり竜人だから……本人は怖いのかもね」


なるほど、そういう事か……


「だがそれをつけると、魔法で尻尾を消せないんじゃなかったか?」


「首輪をつける時に設定で、その辺りは調整できるらしいわ」


「そうか……」


リアを俺の奴隷にする事には抵抗があるが……

それでリアが安心できるならそうしてやるべきなのか。



「リアはそれでいいのか?」


「はい……クロさまのどれいがいいです」


『クロード様……お辛いかもしれませんが』


《蔵人……抵抗があるかもしれないけど……》


あぁ、そうだな……



「ふぅ……わかった。リアがそれで安心するならそうしよう」


「ありがとうございます……クロさま」


リアは俺の奴隷になるが、俺は所有物扱いはしない。

他人から護るべきために、そんな風に見せるかもしれないが。

そう……ただの奴隷じゃない、護るべき奴隷だ。




俺はリアから首輪を受け取り、それをリアの首輪につけた。

不思議な魔力の流れを感じた後、いろいろな設定が頭の中に浮かんだ。

主人に危害を加える事ができないとか、命令を拒否すれば罰を与える等があったが。

俺はそれを全て無視して、奴隷の居場所がわかるという設定だけをチェックした――

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