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第39話 旅の準備


「結構、種類があるんだな」


現在俺は、商店街で保存食や飲料水などを売っている店に来ていた。

予定とは違い。人数が増えてしまったので、買い揃えるのも一苦労だ。

ルナとリアは俺について来ていて、アリスとエレンさんは旅用の外套等を買いに行っている。


はたから見たら、一人でブツブツいっている変な奴に見えるかもしれないが。

俺は自分の中にいる、二人と会話をしていた。



「缶詰まであるとは予想外だったが……」


《これは助かるよね》


『いっぱいありますね』


「勇者の影響かもしれないな」


《勇者の?》


「あぁ。この世界の歴史の本で読んだんだが。かなりの頻度で、異世界の勇者を召喚しているらしい」


《随分と異世界人からしたら、迷惑な話だね》


「勝手に召喚されるのは迷惑すぎるよな」


『確かに、自分勝手だとは思いますね』



「だよな。今の時代にも、四人も召喚されているらしいし」


《へー……どんな人達なんだろうね》


「会ったこと無いから知らんな」


《四人も召喚する必要があるの?》


「四人とも、それぞれ別の国に召喚されたらしいぞ」


『自国の象徴として、召喚されたのかもしれません』


《なるほど、その可能性もあるね》


「すげー嫌だなそれ」


しかし……

俺を挟んでの会話とはいえ、黒斗の声が聴こえないのに、ソフィアはよく話についてこれるな。


黒斗とソフィアと会話をしながら、片っぱしから保存食を買っていった。

お金は、アリスとエレンさんも出してくれている。

最初は俺の金だけで賄おうとしたが。

まだ結婚しているわけじゃないのだから、自分たちも出すと言ってくれた。



「なんで俺、こんなにモテているんだろうな……」


《え? 今さら疑問に思うの?》


『それは……クロード様が魅力的だからです』


「ソフィアの話は置いといて、出会って数日で惚れられているのがおかしいよな」


『うぅ……』


ルナとアリスはまだわかるが。

リアなんて、たった数時間で惚れられたからな。

ルナの洗脳教育のせいなのかもしれないが……

エレンさんは……一目惚れされた、でいいのか?



《君の体から、変なフェロモンでも出ているんじゃない?》


「変なフェロモンって何だよ……あとソフィア好きだぞ」


『クロード様……嬉しいです』


《慰め方が雑すぎるよ……》


ちょろインなんて言うなよ。



「むぅ……」


「ぐふっ……」


ルナとリアが俺から離れていたので、普通に会話をしていたが。

ソフィアを口説いた辺りで戻って来て、ルナが俺の背中に頭突きをしてきた。


「痛いじゃないか……」


「クロが……わるい」


「クロさま……」


理不尽なルナと違って、リアは俺の背中を優しくさすってくれた。

よしよし、いい子だ……


「ん~~……」


「むぅ……むぅ……」


リアが俺に頭を撫でられて喜んでいると、ルナがむぅむぅ言いながら俺に抱きついてきた。

リアも一緒に抱きついてきている。


会計をする時の、店員のおばちゃんの視線が痛かった。

はたから見たら俺はもうヤバイやつだよな……

兄妹だと思ってくれていればいいんだが。



《やっぱりモテモテだね》


《なぜだろうな……》


《ダメ男フェロモンで、母性本能でも刺激してるんじゃないかな》


俺はそんなにダメなのか……

自分でも、優柔不断なのは自覚しているが。


《オジサンにも、モテるような気がするけどね》


《それだけは断固として断る》


オッサンハーレムなど嬉しくもない。

俺は頭の中に思い浮かんだ、熱苦しいオッサンABCDの顔を振り払った――



=============バーンシュタイン邸・昼=============



「また……たくさん買って来たわね」


「あぁ、つい目移りしてな」


「旅の途中には町や村があるんだから、そんなに必要ないわよ」


「う……すまん」


家に戻った俺達は、それぞれ買って来たものを見せ合っていた。

さすがに買いすぎたので、アリスに小言を言われた。



「魔法のテントって、すごいよな……」


話を変えるために、家の中から庭を見ながらそうつぶやく。

庭に、透明なドーム状のテントが設置されている。


背負カバンみたいな形で、圧縮されたいた物が。

ボタン一つでボフンという音を立てて、立派なテントに変形した。

ルナとリアが、子供らしくキャッキャとはしゃいでいた。


「人数が増えたから、結構大きめなものを買ったけど……設置する場所は注意しないとね」


「確かに、あんなもの街道に設置できないよな」


「街道の外れに設置するものよ。魔物の襲撃に備えるために、寝る時は交代制ね」


交代制か……


《俺の時は、黒斗がんばれ》


《え? なんで僕?》


《お前は寝なくても大丈夫だろ》


《僕も、ちゃんと寝るよ》


コイツは本当に消える存在なのか?

実は俺の二重人格とかじゃないだろうな……


二重人格なら、俺が意識をはっきりしていると出てこれないか。



「クロードさん。これは、クロードさんの外套です。外套ですが……普通に上着としても人気があるものです」



エレンさんがそう言って、俺に深紅色のロングコートみたいな外套を渡してくれた。


「ありがとうございます」


「私からはこっちね」


「服かこれ?」


「そうよ」


アリスに渡されたのは、漆黒のインナーウェアだった。

折角なので俺は着てみることにしたのだが……



《なんだか、一気に厨二みたいな格好になったね》


ぐ……

確かに、元から穿いていたズボンは黒かったし。

厨二臭い格好になったが……

人から言われると物凄く恥ずかしい。


《銃とか剣とか……似合いそうな格好だよね》


《黒斗君、それ以上言ってはいけません》


《ご、ごめん……》


銃って創造できるのだろうか……




《厨二と言ったら、冥王だろ。白い髪に黒いロングコートで、痛い言動とかまんま中二病じゃないか》


《確かにそんな感じだったけど……》


まぁ、せっかくのプレゼントだから着させてもらおう。

見た目は熱苦しいが、動きやすいし結構快適だ。

この世界の季節関係はわからないけど、昼はそうでもないが、夜は肌寒い。



「うん、似合うわね」


「はい、カッコイイです」


『素敵です、クロード様』


「あ、ありがとう」


黒斗と厨二談義をしていたら、女性陣から賞賛された。

物凄く照れくさい……



《そういえば蔵人、そろそろギルバートさんと会う時間じゃない?》


《む、そうか……》


俺はズボンのポケットから、懐中時計を取り出して時間を確認する。

確かに、ギルさんと待ち合わせを約束した時間帯だ。


《本当にこの世界って、どうなっているんだろうね……僕達の世界にあったものが、ありふれているよ》


そうだよな……

この懐中時計も、帰り道にあった道具屋で、普通に売ってたから驚いた。


「どうしたの? 時計をじっと見て」


「いや……俺の世界にあったものが……この世界には、いっぱいあるなと思ってな」


「アナタの世界にも、あったものなのね」


「あぁ」



「時代の節々に現れた、偉大な科学者の発明品らしいですよ」


アリスとそんな会話をしていたら、エレンさんがそう説明をしてくれた。


偉大な科学者ねぇ……


《もしかしたら……僕達のような記憶を持った、転生者だったのかもね》



俺達のような記憶を持った転生者か。

可能性はあるな……

飛行船も、そんな奴らが開発したのかな。



おっと、考え事をしている場合じゃないな。


「アリス。ちょっと買い忘れたものがあるから、また出かけてくる」


「まだ買うの?」


「あぁ。大事なものなんだ」


「わかったわ。こっちは準備しておくから、早く帰って来なさいよ」


「すまない、ルナとリアを頼む」


「はいはい」




ギルさんが一人で来てくれと言っていたので。

俺は一人で出かけることにした――

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